剥離、絶望
この小説を手に取っていただき、有難うございます。
作者の清野ハルトでございます。
もうすぐ本格的な物語がスタートしていきます。
また次号を投稿するのは長くなりますが良かったら広いお心でお待ちいただけると幸いです。
「今日はもう直ぐ雨が降る予報でしょう〜」などとテレビが言っている、一年とほんの少しだろうか、此処に来て、すっかりあの女とも馴染んでしまった、毎回のようにアイツが来るのが悪いんだ。
と言っても、もう関わることは無いし、関係ない、どうやら退院ってやつらしい、俺は荷物をまとめながら考える。
そもそも俺はここの人間じゃない、旧市街へと戻るべきだ、その前に竜崎の事も助けなきゃならん。
なんて事を考えながら俺は外へと出た、一年で変わったことといえば超覚症の患者が増えたこと、政府がとある兵器の開発に勤しんでること、というかその前に竜崎を助ける方法と旧市街へ戻る方法、もう1つは…なんて考えていれば、近くで何かの生物が鳴く音と爆発音が都市に鳴りひびいた、なんという轟音だろうか、耳に触る、この爆発音と鳴き声には聞き覚えがある、竜崎の超覚とそっくりだ、そっくりな音だ。
逃げ惑い叫ぶ人々を掻い潜りながら、俺はほんの少しの期待を胸に寄せながら、一刻も早くその現場へと向かう、「竜崎!!」と俺は叫んだ、そしてその目に映ったのは燃える巨大なビル、一般人を殺害しその顔面を容赦なく踏みつける、竜崎とその旧市街の仲間たち、ほっと安堵したものの謎の焦りと共に、その光景を目にした俺は聞く「ぶ、無事だったんだな、今まで何して…そ…それに何してんだよ、お前…」俺は動揺を隠せなかった、俺達は此方の平和な世界に嫌気がさして不満を持っていながらも此方に危害をくわえることは一切と言ってしてこなかったのだから、そんな事をしているお前を目にして動揺するのは当然だ、そして、そんな俺をまるで哀れみながらもまるで軽蔑と何かしら軽蔑のような目で竜崎は言った「…何してたって簡単なことだろ、お前のせいだろうが、お前が助けに来なかった、俺は待ってたさ、なのに助けに来なかったろ、アンタは」と怒りが感じ取れる口調だ、他の面子も似たような目線で俺を見てくる、それにまるで言い訳を繰り返す子供のように俺は叫んだ「違う!!俺は一刻も早く助けに行こうとした!!待ってくれ!!竜崎!!」仲間たちが急行してくる政府のAI人形を乗せた緊急車両の臭いを察して旧市街の壁の向こうへと撤退していく、そんな中、竜崎が最後に俺に言った一言は、俺の冷たかった硝子の心を一瞬で叩き割るような言葉だった。
「…アンタは、もう何でもないコッチにアンタの居場所はない」
その言葉は俺の入院という名の肩書きを利用した平和のぬるま湯を一気に冷たい水風呂に浸けたような言葉だった。
その言葉に俺は唖然となり、ただひたすらに逃げた、辛くて心が痛い、こんなのは俺じゃない、俺じゃないとひたすらに心の中で唱えては途中降ってきた雨に濡れながら市街地を駆け抜けた、あの頃の竜崎は俺の一生や努力はなんだったのか、嗚呼、辛い、心が痛い、と転んだ、大雨の降る小さな市街地、誰一人とて俺を心配するものはいない、俺がやってきたのはただの偽善的行為でしかなく、傲慢だったのかと、ただただ雨の降る暗い世の中で泣き叫ぶことくらいしか出来なかった。
とその時上から、ゆっくりと黒い傘を差し出してきた奴がいた。
「運豪さん、お久しぶりです。」と白衣姿の再輪生奈が俺の上に、にこやかに立っていた。
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