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「K/W:神様のデルタ」

 ~~~神様~~~




「ふうーっ、危なかったあーっ」


 プロデューサーさんと別れた後、雑踏の中ひとりになったレンちゃんが冷や冷やしたような声を出した。


「もうちょっとで神様の存在がバレちゃうところだったねえーっ?」


(うん、そうだね……)


「まあーでも、あれはしかたなかったからねーっ。七海ななみちゃんがあんなになっちゃって……。ああーっ、どうしてわたし、途中で気づけなかったかなー……」


(ごめんね? わたしがもっとちゃんと説明しておけば……)

 

「ええっ? 神様は全然悪くないよー。そもそも七海ちゃんが無事だったのは神様のおかげなんだからー」


 落ち込んでいるわたしに気づいたのだろう、恋ちゃんは努めて明るい調子で言った。


「かっこよかったよー? 厳しい声でこう、ビシビシッと指示出してくれてさ。わたしもなんだかその気になっちゃって、一瞬看護師さんにでもなったみたいな……えっへへへー」

 

 照れ笑いを浮かべると、改めてというように夜店を見渡した。


「……さぁて、プロデューサーさんにああは言ったものの、正直まだまだ体が燃えてるというか、遊び足りないわたしです。時間もまだ早いし、このまま帰ったら『何してんのよ、なし崩しにお宅訪問するぐらいしなさいよ』ってお姉ちゃんにどやされるだろうし。だからね、神様、もう少し遊んで行こっ?」


(うん、そうだね……)


 わたしをはげまそうとしてのことだろう、その後も恋ちゃんは帰ろうとせず、夜店を陽気に渡り歩いた。

 さっきは出来なかった射的をして、金魚すくいをして、リンゴ飴を食べて、夏祭りを一緒に満喫した。


「……あ、冷静に考えてみると、わたしってひとりごとつぶやきながら祭りを堪能してる危ない人みたいに見えてる?」


(うん、間違いないね)


「ええーっ? わかってたなら言ってよーっ」


 恋ちゃんはぷうと頬を膨らますと、頭の上あたりを手でかき回すようなしぐさをした。

 わたしに対する抗議のつもりなのだろうが……。


(ざーんねん、わたしはそんなとこにはいませーん)


「ああー、ずるいっ、ずるいよーっ。もうっ、どうしたらいいのーっ?」


 目をバッテンにして怒る恋ちゃんをからかって遊びながら、その無邪気さを愛でながら、わたしはまた、いいなあって思ってた。

 

 だって……ねえ?

 

 ──ただの恋に見えますか?


 あの時の恋ちゃんに対して向けられたプロデューサーさんの目。

 晴れがましさと驚きと恐れがない混ぜになったような瞳の色。

 あれはわたしが、見たことのないものだったから。


 だからわたしは、思ってしまったのだ。

 もしあの時プロデューサーさんがわたしの存在に気づいたらどうなっていただろうって。

 どんな風に声をかけてくれて、どんな関係を築こうとしてくれただろうって。


 思っちゃいけないのに。

 そんなの、絶対ダメなのに。


 でも、思っちゃったんだ。

 思っちゃったんだよ。


 恋ちゃんではなくわたしを。

 恋ちゃんではなくわたしと。

 そんな風に。


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