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「サマー!! バケイショーン!!」

 ~~~高城恋たかぎれん~~~




 黒田くろださんの協力によって音楽環境が整いました。

 赤根あかねちゃんのおかげでアイドル活動がきちんとした部活動になり、可愛い衣装も作ってもらえることになりました。

 しのぶちゃんは相変わらずのバイタリティで、空手道部とアイドル活動を完璧に両立させてくれてます。


 イエス、順風満帆(じゅんぷうまんぱん)幸先良(さいさきよ)し。

 しかし、ひとつだけ問題があります。


 さて──


 夏休みと聞いて、あなたは何を頭に思い浮かべますか?

 スイカに花火、海にプール、夏祭り?

 うんうんそうでしょうそうでしょう。

 楽しみに満ちたキラキラした日々、それが夏休みってもんですよね(握り拳)。


 しかもわたし、中一ですよ? 

 ランドセルを脱いで中学の制服に袖を通して初めての夏休み。

 そりゃあもう希望に胸を膨らませながら突入したわけですよ。

 なのにまさか……。


「まさかホントに、毎日練習することになるなんて……」


 練習後、シャワー室でぬるめのお湯を浴びて火照った体を冷ましながら、わたしはしみじみとつぶやいた。


「そりゃあ練習に来ればプロデューサーさんにも会えるし? 練習自体だって嫌いなわけじゃないんだけど……」 


(それだけじゃあ物足りないよね)


「わかるっ?」


(とーぜんよっ) 


 わたしと神様の意見がぴったり合った。


「やっぱり刺激が欲しいよね。普段は行かないようなところへ遊びに行って、色んなものを見て食べて……」


(スイカに花火、海にプール、夏祭り……)


「そうそうそれそれ、そういうのっ」


 あたしは鼻息を荒くしたが、すぐにそのうちふたつは取り除いた。


「えっと……海とプールは除いてね……」


(なんでっ?)


 がぁん、と神様が頭を抱えたような気がした。


(だって、そしたらプロデューサーさんの海パン姿も見れるのよっ? 普段は見られない鎖骨の綺麗さとか、意外とついてる筋肉のラインとかをこの目で確認できるのよっ? あまつさえ、オイルを塗ると称してべたべた触ることが出来たりするかもしれないのよっ?)


「神様って、時々変にアダルティだよね……」


 わたしは顔を真っ赤にしながら首を横に振った。


「ともかくダメ。興味が無いとは言わないけど……さすがに早いというか……」


 もやもやと浮かんでくる妄想を手で払いながら、わたしは続けた。


「あと根本的な問題として、プロデューサーさんの前で水着になる自信がありません。なんというか……中一女子の平均サイズをじゃっかん下回るぐらいの貧相な肉体を晒すのはほとんど蛮行というか……。がっかりさせるかもしれないし……」


(世の中にはそういうのが好きな人もいるよ?)


「それフォローしてるつもりなのっ!?」


 思わず声を荒げると──


「おおいレン、何ひとりで騒いでんだあー?」


 更衣室に繋がるドアを開けて、しのぶちゃんが声をかけてきた。


「ちょうえええええい!? ななななななんでもないよ忍ちゃん! ちょっと発声練習してただけ! 今日わたし、あんまり声出てなかったから!」


「ちょうえい……? まあいいけど……あまり根を詰めすぎないようにな」


 適当な理由をでっち上げると、忍ちゃんは半信半疑ながらも納得してくれたようだ。


「あたしはこのまま道場に行くから、あんたはプロデューサーと一緒に帰りな」


 いつものように気をきかしてくれて、わたしとプロデューサーさんをふたりきりにしてくれた。

 そしてさらに……。


「そういや今日、隣町で夏祭りがあるんだってよ。神社の境内にたくさん夜店が並んで、盆踊りなんかもやるそうだぜ? とまあ、こいつはあたしのひとりごとだけど」


 にやり笑うような気配を残すと、忍ちゃんはドアを閉めて立ち去った。


 シャワー室に残されたわたしと神様は……。


「それだ!」

(それだ!)


 と歓声をハモらせたのだった。

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