「K/W :神様のつぶやき」
~~~神様~~~
お風呂で寝落ちしそうになって。
ご飯を食べながら寝そうになって。
母親に叱られながらもなんとか自室に辿り着いて。
ベッドに倒れ込んだ恋ちゃんは、うっとりとため息を漏らしている。
「ああー……っ、今日はホントに濃いぃ日だったなあーっ……」
仰向けになって天井を眺めて……おそらくは今日一日を振り返っているのだろう。
「会長さん……じゃなかった。プロデューサーさんと部活動をしてーっ、一緒に帰ってーっ、背負ってもらってーっ」
よっぽど嬉しかったのだろう、目を閉じて、頭を左右に揺すって反芻している。
「心残りは名字でも下の名前でも呼べなかったことだけっ」
(……)
「でもそれは今すぐでなくても、徐々にでいいもんねっ? ねえ、神様っ? これからいくらでも、その機会はあるもんねっ?」
(……え? ああー……そう……だね?)
恋ちゃんの高揚とは裏腹に、わたしの気持ちはひどく沈んでいた。
「ええーっ? ちょっとぉー、そんなに軽い感じなのーっ?」
望んでいた反応が得られなかったことに口を尖らせる恋ちゃん。
(ああ、ごめんね? わたしもちょっと眠くて……)
「えー、神様でも寝たりするんだ?」
さも意外という調子。
(それはそうよ。わたしだって……)
女の子なんだから、と言いかけてやめた。
アイドルがそうでないように、神様もまた、女の子ではない。
(わたしだってたまには……ね)
だからそんな風に、ごまかした。
「たまには……? ふうーん……?」
半信半疑といったようにうなずいた恋ちゃんは、やがてぐるぐると目を回し出した。
「そう……なん……Zzz……」
そうなんだあ、と言う途中で力尽きたのだろう。
恋ちゃんは微かな寝息をたて始めた。
中一の女の子らしい、どこまでもあどけない寝顔で。
(……)
ああ、幸せなんだろうなと、わたしは思った。
このコは幸せなんだろうと。
大好きな人と付き合えて、背負ってもらえて。
これからの人生には、きっと希望しかないのだろうと。
それ自体は悪いことではない。
むしろ喜ばしいことだ。
だけど──
だけどわたしにとっては──
(……恋ちゃん、寝ちゃった?)
恋ちゃんが寝ているのを確認すると、わたしは口を開いた。
(ごめんね? 眠いっていうのはウソなの。ホントはね……?)
ぽそり誰にも聞こえないような小さな声で、恨み言をつぶやいた。
(恋ちゃんがうらやましいなって、思ってたの)
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