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神話戦記  作者: 心
第1章 堕ちた勇者
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第1話 始まり


どこまでも堕ちてゆく闇の中、微かに聞こえる声、懐かしく優しい声だ。俺はこの声が大好きだった様な気がする。声がどこからするのか辺りを見回していると、ロウソクの火が灯るように一つ、ゆらゆらと暗闇の中に火が灯った。その火は瞬く間に広がりあっとゆうまに火の海と化す。そして火の中からふっともう1人の自分が現れる。もう1人の自分はゆっくり火の中を歩き向かってくる。その目は空洞で何も写してはいない。そいつに恐怖を感じ必至に逃げるがゆっくり歩いているはずのもう1人の自分はすぐそこまで近づいている。

必至に逃げている中、先程まで聞こえていた優しい声がどんどん強い口調へと変わる。


「、、、ト!、、、ルト!、、、ハルト!!」


布団から勢いよく起き上がり、辺りを見回して我に帰る。夢、また同じ夢。


「ちょっとビックリさせないでよ!はやく顔洗って支度して!ほんとハルトは自分で起きれないのね!」


ベットからゆっくり顔を横にするとそこには白い肌と金髪の髪が目立つ女が立っている。

幼馴染のラフィタ・プリンツだ。

彼女は既にc級冒険者用の防具を身につけ、腕を組んで俺の起きるのをずっと待っている。


「あーごめん。起きた起きた。すぐ準備するから下で待ってて。」


眠い目を擦りながら答える俺に絶対二度寝しないでよ!と言い残してラフィタは階段を下っていく。部屋から出たのを確認するとベットに横になり枕を顔に押し付ける。あー寒い寒い眠むい眠い、全然寝た気がしないよ。枕を顔に押し付けて数秒、深く深呼吸をして一気に布団から飛び出る。


うわ〜寒いな、窓についた水滴が凍ってるよ。

凍った窓がその気温を物がっている。

その窓から見える景色は外の真っ白な建物達、真っ白なのは雪のせいでは無く、ここ東の王都ミュンヘルンの作りだ。建物とゆう建物は全て白い色で出来ている。そしてかなり遠くに見える光の壁。その高さは雲の遥か上まで続いている。壁の向こうに行こうと永遠壁に沿って歩いても向こう側へは行けない。光の壁が眩しくて向こう側を見ることもできない。向こう側は人が住める環境ではなく、悪魔が支配する世界。そのため一般人は見ることも行くことも出来ないためにどんな世界が広がっているのかを知らない。俺もそのうちの1人だ。今日まではだけど。


Dランク冒険者からc級冒険者になった今日、初めて向こう側へ行く。人ならざる者が住む世界。正直少し怖い。学校ではどんな場所なのかも教えてくれないからだ。そのくらい教えてくれてもいいのにって思ったが、初めて外の世界を見て、感じ、冒険者をやめて商人や、武器屋など色々な職に変える人もいるという。一度自分の目で見ないと人間とゆうものは納得しないからだと言っていた。10人の勇者が命と引き換えに創り上げた光の壁、そのおかげで壁の内側に悪魔が出たりすることはなくなった、けどまだ戦争は続いている。現在神域の勇者は3人。そのうち2人はここ、ミュンヘルンにいる。勇者の力は絶大で寿命で死ぬ事はないとゆう。細胞が細胞分裂をする回数は決められている。しかし勇者はその限度がない。簡単に言えば死んでゆく細胞より新たに誕生する細胞の方が多いからだ。これを呪いともいう人がいるのは仕方ない。死ぬためには戦わないと行けないからだ。そんな事を考えていると下からラフィタの声が聞こえてくる。

急いで準備しないと!


c級冒険者用の防具は真っ白で左肩から一直線に腰まで黒いラインが入っているだけのシンプルなものだ。

防具を身につけ右手にだけ革手袋はめる。

これは神に祈りを捧げ、力を授かる時に右手の甲に出来た黒印。家の地下室にある石盤に刻まれたものと、同じものだ。これがどんな意味なのかは知らない。なにせ自分がどの神に祈りを捧げたのかわかっていないからだ。その家ごとに遥か昔より信仰する神が決まっているため、生まれた時から両親が居ない俺はそれを教えてくれる人がいなかった。父親は行方不明、母親は俺を産んですぐに死んでしまった。16歳の成人する日まで俺はラフィタの家でお世話になっていた。感謝しても仕切れない。

おっとこれ以上は本当にラフィタを怒らせてしまうな。急いで顔を洗い、歯を磨き下へと急ぐ。


案の定ラフィタは玄関の前で腕を組んで顔を赤くしていた。

「はやくしてよ!本当に遅れちゃうから!」


「ごめんて、朝はどうも苦手で。」


「今に始まったことじゃないでしょ?!せっかく今日は久々に朝食一緒に食べらると思ったのに。」

最後の方はゴニョゴニョしていて聞き取れなかった。

「え?なに?」


「なんでもないわよ!!」

強烈はパンチが俺の腹部を抉るように放たれた。



外にでたラフィタと俺は全力で駆けていた。

王都の中心部、ミューラ城に今日c級になった者が全員集まり聖騎士長の話を聞かないといけないからだ。そして空中高速列車、空車の出発時間までもう残り時間は少ない。

改札を通って歩く人をスレスレで交わしてホームに出ると閉まり行く扉にダイブをする。

「危ないので飛び込み乗車はおやめください!」


何とか間に合ったがかなりの注目を浴びている。それもそうだろう、足の速いラフィタはギリギリ間に合ったが俺はほとんどこじ開けたと言っほうが正しいからだ。成人してまで恥ずかしい。


周りの人にラフィタはペコペコ頭を下げて謝っている。すいませんって一度ぺこりとするとラフィタにめちゃくちゃ睨まれる。


「後で昼食奢ってよね。」

まぁしかたない。


空車を降りて自動歩行レールの付いた道を駆ける。あぁ本当にすいません!もう2度と寝坊はしませんと通り過ぎる人達に心で謝り駆ける。


ミューラ城の大噴水広場に着くと既にそれぞれのパーティが列になって綺麗に配列していた。


「おい!ハルト!こっちこっち!」

列の端の方から手を振っている男。


「あーごめん、遅れた。」


「また寝坊だろ?しっかりしてくれよ。一応俺達のリーダーだろうが。」

冗談混じりで軽く怒ってきたこの男がライナー・シュバルツ。大柄で赤い短髪、背には大剣。力技がよく似合うやつだ。

役職・剣士

現保有スキル

・爆裂斬・熱波・見切り。

信仰

・プロメテウス


「それしかないでしょうね。ラフィタの顔を見ればすぐわかるわよ。」

腕を組んで横目で俺を見てくるこの女はカーミラ・テンゼン。長い紫色のウェーブした髪、背が高くモデル体型ってやつだ。

役職・銃士

現保有スキル

・神弾〔しんだん〕・龍追弾・多弾

信仰

・ストレイラル


「僕も朝は苦手の方だから、気持ちはわかるよ。僕も昨日の夜緊張してあまり寝られなかったから。」

いつも何かと肩を持ってくれて、優しいさで溢れているのが、ローン・パイル。緑色の髪、髪の色とよく似た眼鏡、優しさを具現化したような顔つき。

役職・ヒーラー。

現保有スキル

・ヒール・魔復弾・索敵

信仰

・エイル


「ハルトは昔からいつもそう!何もない日は意味なく早起きするくせに、こうゆう大事な日は決まって起きないのよ。」

頬を膨らませて怒っているのはラフィタ・プリンツ。学生の時からやたらと異性にモテる。整った顔に程よい大きさの胸が原因だろうと俺なりの分析だ。少し怒りっぽいが。

役職・魔術士

現保有スキル

・ライトニングボルト・氷壁・魔弾。

信仰

・イーリス


「だから悪かったって。もう夜更かしは二度としません。今後自分でちゃんと起きます。」

ハルト・ポートガス。

役職・司令塔

現保有スキル

・支配・魔刀。

信仰

・不明


パーティは基本5人で組む。その配列はパーティ毎に異なるが俺らのパーティはライナー、カーミラ、ローン、ラフィタ、俺とゆう配列を縦一列に組む。これが俺らの一番動きやすく連携の取れる配列だからだ。


静かにしろとゆう注意を受け、俺ら以外誰も喋ったりふざけたりしているパーティがいないのに気づきすぐにお喋りをやめて姿勢を正す。

するとすぐに舞台に上がった聖騎士長の話が始まる。


「私はクライム・ハーティ。この王都の聖騎士長を務めるものだ。C級冒険者の諸君、今日から初めて君達は壁の向こうへと出る。一歩外に踏み出せばその瞬間から命の危険が常に伴う様な世界だ。内側とは違い一瞬の気の緩みがパーティの、もしくは自分への死へと簡単に繋がってしまう。どんな状況下にあっても心を強く持て、悪魔に付け入る隙を与えてはならない!悪魔を滅ぼし、この長きに渡る争いに終止符を打たなくてはならない!そのためには君達一人一人の力が必要だ!今日!!君達は大いなる一歩を踏み出すことになるだろう!!それでは健闘を祈る!あとはここにいるベック聖騎士長補佐より、説明がある。」


クライム聖騎士長は長々と話す様な人物ではなかったようだ。まぁこの寒さの中長時間立ってるのは正直ごめんだ。話が終わり、今回の壁外調査の説明を受けた。今回は壁より5キロ圏内の探索、第一〜第二位階の悪魔の討伐がメインだ。壁の周辺は既に高ランクの冒険者や聖騎士によってほぼ殲滅されている為にたまに壁近くまで迷い込んだ低位階の悪魔しかここ数年目撃されていないらしい。だからC級になりたての俺らに外の世界を馴染ませるには打ってつけらしい。


集会が終わり準備のできたパーティからどんどんと光の壁の方に進んでいる。

そんな中俺らは昼食をとりに行きつけの呑み屋・ミミちゃん屋にきていた。

「あら〜あなた達よく似合ってるじゃない。ハルきゅん緊張してるの?か、わ、いい〜!」

どうも俺はここの店主ミミちゃんが苦手だ。

30近くの年齢で身長が高く、モデル体型でピンク色の短髪のオネェだ。


「あぁ、ありがとうございます。」

完全に引きつった顔で礼を言う。

なんでこんとこに行きつけなのかは俺達を本当に可愛がってくれているからだ。Dランクの時から金がないと何かとご飯をくれたり、色々と知っている知識を無償で教えてくれたりと、本当にいい人だ。ライナーとカーミラはミミちゃんと休日には出かけたりまでしているらしい。


「今日が初の壁外だからな!気合いを入れるためにここの飯を喰らわないとだからな!」

ライナーは店につくなり席に座り既にナイフとフォークを持っている。肉をくれってことだろう。


「今日は大サービスよ!壁外から戻ってきたらうちへいらっしゃい。初外壁調査祝いとしてどーんと祝ってあげるわ!」


みんなテンションガチ上がりだ。ここの酒と飯は本当にうまい。知る人ぞ知る隠れた名店だ。有名なのは酒や飯よりもミミちゃん本人のほうが上だろうけど。


サービスでもらったステーキを喰らって礼を言い、光の壁へと歩き出す。


「あー食った食った!ミミちゃんに会ったらなんか少し緊張もほぐれたな。」


歯に詰まった肉を取ろうとしているライナーに突っ込むのはカーミラだ。この二人はいつも突き合っている。


「え?なにライナー、あなたもしかして。」


「ビビってねーよ!俺は全力で壁外調査を楽しむつもりだよ!」


「まだ何も言ってないじゃない。でかい図体してほんとは怖がりなのね。」


「はー?お前こそ手震えてますけどー?そんな震えた手じゃ弾がお前の前にいる俺に当たっちまうよなー?勘弁してくれよなー。」


「うちのは武者震いなんですけど?あなたと同じにしないでください!あなたとは立ってるステージが違うのよ。」


「まぁまぁもう着くしそろそろやめなよー。」

ヒートアップする前にいつも止めに入るのはローンの役目だ。


歩きながら悪魔と遭遇した時の連携、壁の向こう側がどんな世界なのか、他愛のない話、ライナーとカーミラのお決まりの小突き合い、そんなこんなしてるうちに壁の下まで到着してしまう。王都から壁を出るにはここ東口と南口しかない。壁のすぐ脇に建てられた検問所、そこで守衛の者に魔石を1人一つ受け取り魔力を魔石に込める。これは調査から帰還した際に万が一悪魔に体を乗っ取られていた場合、絶対中に入れるわけにはいかないからだ。帰還し、中に入る前に魔石にもう一度魔力を込める。出発前に込めた魔力と同一なら青色に、ほんの少しでも異なる場合は赤色に魔石が光る。

赤色だった場合その場でその者を悪魔と判断し、首を刎ねられるだろう。



全員が魔石に魔力を込め、検問所脇に置いてあるボードに126期生、パーティ名・絆と書いたのを確認すると守衛の1人が検問所の中にある大きな魔石に魔力込める。すると壁は音を立てて人が通れる程に広がる

「君達C級冒険者は壁外での調査が6時間と決められている。それまでに帰還しない場合は罰則が与えられる。まぁ最初はすぐに帰って来たくなるさ。それじゃ気をつけて。」



壁の中はまるで光の洞窟だ。入り口から出口までは50mといったところか。光のせいで眩しく、ここからでは向こう側を伺うことはできない。会話もなく静まり返った中口を開いたのはラフィタだ。


「なんか怖くなって来た。」


「僕もだよ。自分が知らない未知の領域に足を踏み入れるんだ、怖くて当たり前さ。」


「悪魔が出たら前衛の俺が叩き斬ってやるよ。」


「そうね、もしライナーが殺り損なったら私がちゃんと留めをさすわ。」


「さぁ、もう出口だ。陣形を整えよう。何が起きてもみんながいれば大丈夫さ!さぁ行こう!」


みんなの声が一つに重なり士気が高まる。

壁を抜けた瞬間、そんな気持ちは一瞬でかき消される。

目の前に広がっていたのは辺り一面、どこまでも続く砂漠。そしてその砂漠の砂は白く、見たことのない紅く輝く月に照らされていた。何より驚いたのはそこが夜だということ。壁内では昼食を取ったばかりで太陽も力強く日を指していた。しかしここは夜。紅く照す月が不気味に俺らを嘲笑っているような気さえする。

こんなにも、こんなにも違うなんて。


踏み出したこの一歩が全てを変える始まりだった。俺たちはまだなにも知らなかったんだ。この世界がどれほど残酷かを。ポートガスの名に隠された真実を。

全てはここから、希望へと、、、いや、絶望へと続く物語が始まったことを。


ご愛読ありがとうございます!今後とも皆様に楽しんでもらえる様頑張りますのでよろしくお願いします。

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