2話
医立白百合病棟学園。
複数の医療機関が設立した精神疾患患者の学生を受け入れ、勉学と治療をする全寮制の学園。
創立当初こそ評判は良かったものの、今では批判が多い。
それもそのはず、精神疾患患者のイメージは社会では犯罪者予備軍として認識されている上、『患者を選り好みし積極的な受け入れをしない』『ここ10年経過しても誰1人として卒業していない』『どのような生活と治療をしているのか公表もしない』などの不満や不安の意見から早くも取り壊すべきと槍玉に挙げられる始末。
アタシは朝陽から説明された時に相当な不安を感じた、けれども両親の知ってる病棟は務所とほとんど変わらない予備軍ではなく本物の犯罪者が入れられるような場所らしい。
だかこそ、アタシと朝陽は白百合に編入したいと頼み込んだ。
消去法だが、務所よりは教室の方多分マシだろうと判断するのは当然だろう。
……が、その判断は間違えだったのかもしれないと後悔し始めている。
「アンタ正気か?」
こいつは朝陽のことを知っている、ならば朝陽にカウンセリングをやらせると言うことを理解しているはずだ。
「正気も正気の本気の現実、嘘じゃないわ、それにさっきも言ったけどあなたのカウンセリングの評判は知ってるし大丈夫だと思うけど?」
「カウンセリング……ねぇ。」
学園長が言う通り、『陽光スマイルハートクリニック』と言う名の朝陽の実家で、アイツは手帳が認定されないくらいの軽度な患者や複雑な年頃の予備群患者や悩みを持つ同級生の相手はよくしていた
朝陽に向けられた視線は思い出せる、アタシには気に入らないものだったが、あいつは『まあこんなものでしょ』と笑っていた。
しかし、カウンセリングなら朝陽より適任な人がいるはず
「正式なカウンセラーはいないはずないよな?それなのに朝陽にやらせるってなるにはどんな問題があったんだ?」
「あーうん、そこはスルーで。」
あ、何か微妙な顔しやがったこいつ
「ふざけんな、大方退職したのは想像がつく。生徒に追い詰められたか?その夢想ってのて怪我をしたのか?それとももっと別の事情があるのか?言え、今すぐ。」
『場合によっては』と言いかけたところで学園長はため息を吐いて本音を話した。
「…………クビにした。」
「あ゛?」
こいつ、今なんつった?
「切った、と?」
聞き間違いの冗談だよな?
「ええそうよ、クビにしたのよ!でも理由はあるの!仕方ない理由、言えないけど!」
「こいつ……」
頭痛を覚えるほどの身勝手さに怒りを通り越してため息が出る。
ストレスを紛らわそうとクセと言うかいつももの流れで普段嗜む銘柄を取り出してしまった。
「あなた、タバコ吸うのね。」
「あ、あーそうだな。朝陽は吸わないがアタシは。」
初めはただ、吸う人の考えを理解するためだけに購入したタバコ、いつからか会話の話題に使える道具に変わり、気づけばアタシの身体にはなくてはならないものになった。
ヒートスティックを本体に差し込みLEDの点滅を待つ。
「ってこらこら、学園長の前で何やってるの。」
「うるさいな……アンタがメチャクチャなこと言うからこうでもしなきゃやってらんないんだよ。」
LEDが点滅し頃合いを知らせるが、アンタはまだ待つ。
「正当な、少なくともアタシらが納得できる理由で切ったんだよな?」
「そこは信頼して欲しいわね、私的な理由じゃなくあたしなりに生徒のためを思っての処置。」
「分かった、考えさせろ。」
点滅から丁度13秒待った、これは朝陽の治療した精神病患者蒸気が自慢していた、自称玄人の吸い方だ。実際美味い。
水蒸気をたっぷり含んだタバコをゆっくり吸い髪留めを握る。
『はいはーいってめっちゃタバコの匂いがする!』
悪いな朝陽、話は聞いてたか?
『もちろん、カウンセラー兼生徒として編入するって話でしょ?』
その認識で問題はない、お前は大丈夫なのか?
『私は……うーん……自信はないかなぁ』
まあそりゃそうか、ならきっぱり断っておくか。
『あーいやいやお待ちになって、ここは一歩を踏み出そうと覚悟して』
やってみるのか?
『……とりあえずはクラスメイトと顔合わせるまでで』
チキン
『うるへー』
気づかない間に手の温度がうつるほど強く握っていた髪留めをポケットにしまう
「決まったかしら?」
「とりあえずな、朝陽は前向きに検討してる。クラスメイトに会ってから決めるそうだ。」
「分かった。それであなたは?」
「アタシか?アタシは朝陽の夢想だ、アイツが行くならサポートをする。あいつが苦手な分類の奴らへの対処もあるし。」
「それは良かった、そうと決まれば白百合まで直行。よ」
ごらんいただきありがとうございます
ようやく学園に着きそうな辺りにまで進みました
どんな人がいるのかはまだわかりません
また続きを読んだいただけたら幸いです
タバコは20歳になってから吸いましょう