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傷跡童話《スカーテイル》  作者: 小鳥遊 和輝
1章 スタートライン
3/19

1話

ようやくほんの少しだけ前に進みました

まだまだ慣れていないのでスローペースになりますが、楽しんでいただけると嬉しいです

桐江学園長の話は要約するとこうだった。


ここ数十年、精神病の人間が減り、完治する者も増えてきた。

その一方で治らなかった重症患者にもとある変化が出始めた。

きっかけはある患者の元に行方不明の息子が帰ってきたニュース。

患者は泣いて喜び、病は順調に回復していった。

しかし退院の日にその患者は『息子を返せ』と医者、患者問わず暴行を加えた。

その事件から拡散するように重症患者の症状は重くなり、重度の精神病の人間は危険対象として扱われ、隔離されるようになった。


「んで、私は某売られていく牛の歌の如く、収容所に売られて行くと」


「あんさ、あなたさっき学園って認識してたわよね!?病棟学校とか治療施設って言うならともかく収容所扱いはどうなの!?」


「いやぁ、割と白百合って世間のイメージ悪いですからねぇ。ちょっと待ってください」


Hufoo日本の検索ページに『しら』と書くだけで『白百合病棟学院 キチガイ』と検索候補の上から3番目に出てきた、とりあえず検索をする。


「あーホレ、こんなこと書かれてますよ、見てください」


「あんまり長い文だと読めないから、あなたが読んでよ」


「え、桐江学園長ってこの程度の文を読めないほど頭がお花……い、いえ、そうですよね、家庭の環境ってありますしね」


「おうコラクソガキ、運転中だから長文に集中してる暇は無いってことだ、分かってて言ってるだろ」


「すーいませーん(笑)」


「……頭痛くなってきた、タブレット取って、スッキリさせる」


「分かりました、SMにします?複数にします?それとも、小・学・校?//」


「おバッカ!タブレットってそっちじゃない!おい動画検索しようとするな、錠菓!黒くて噛むと頭がスッキリするミント系のお菓子!」


「ふふっ、冗談です、これですよね?」


「タチが悪いよ全く……」


とっても面白い反応をする人だ。

……私が暗くならないようあえてオーバーリアクションで返してくれる辺り、優しい性格なのだと思う。

なぜだか分からないけど自然とそう思えた。


「ありがとうございます」


「何がだか分からないけどどういたしまして」


さっきまでの怒涛のツッコミ姿は何処へやら、鼻で笑うようにフッと息を吐き、落ち着いた保護者のような表情でそう返してきた。


「じゃあ真面目な話に、あなたは精神疾患患者として登録された。本来は精神病棟に入院して治療をするべきだったのだけど、あなたの症状は特別でしょ?」


「……特別とはどう言うことですか?」


「そうね、例えば……趣味やしゃべり方にとどまらず味覚と利き手と基礎体力、その他諸々まで違う自分と入れ替えられるとか?」


「うわーすごい限定された症状ですね、まるでずっと見てて確信に至ったみたいですねーあははー」


「ふふふ、さてどうかしら」


勘違いだったかも、この人はあまり信用しちゃいけなかった人種の可能性


『おい変われ、こいつはアタシが相手する』


……出てきて大丈夫なの?肯定しなかったって事実を残してお茶を濁した方が良くない?


『どう聞いたって向こうには確証がある、誤魔化すより理解を得た方が扱いは良くなるだろ。』


分かった、なら変わるけど気をつけてね。

右手の主導権を彼女に渡し、髪留めを外そうとする。


『ああ、立場を悪くするようなことはしない』


いや、そうじゃなくて今髪留め外したら……!!


「がほっ!!辛レェ!!!」

入れ替わった瞬間、アタシがこっそり食べていたタブレットの辛さが口内を蹂躙した。


「え、咽せた!何があったの?」


「ゴホッ!テキトーぬかすなゴハッ!アンタがアタシらのことを知ってるから入れ替わったんだよ。」


「あーわざわざ入れ替わってくれたんだ、ありがとう。ならもう一度自己紹介をお願い。」


「チッ舌がヒリヒリする……。観星(ミホシ)だ、観戦の観に空の星で観星。」


「そう、よろしくね。日向丘観星さん。」


「日向丘はいらない、ただの観星だ。」


「……変なこだわりね、観星さん。」


「あいつの求めたモノがアタシなんだ、人じゃないアタシに日向丘のファミリーネームは無用だ。」


「そう、じゃ話を続けるわ。さっき話した暴れた重症患者とあなたは同じ症状なのよ、重症患者の症状が息子が見えるであなたの場合は朝陽と入れ替わる。」


「全く別に思えるが、ふざけてるのか?」


「いや、同じなのよ、あなたの場合はそこまで特別なものでもないけど、同じ症状の患者で瞬間移動、念力、あとは先の重症患者の場合は降霊とか。」


「まるで異能に目覚めた主人公みたいだな。」


「その異能みたいなのが症状、精神疾患が深刻になって発症する病、夢想(プレシャス)。」


「精神疾患は法の整備で不安が減り治って時間は掛かっても治るようになった、けれども、それでも辛くて命を絶つ患者はいる、そして生きていたくないけど色んな感情で死ぬことができない生き地獄を味わう患者もいる。」


夢想(プレシャス)はそんな死にたくても死ねない患者にのみ発症する、苦しい症状を隅に追いやり正常な精神に戻し、生きるための目標を叶えて笑って生きれる日々を過ごすための補助になる力を持たせる病だ。

例えば遠くにいる恋人を笑顔にさせる、瓦礫の下に埋もれた人を助ける、遺体すら見つからない息子の悲しみを聞届けるとかね。」


「……なるほど、だからそんな危険分子を隔離すると。」


正直あまり良い気分はしないが言いたいことは分かった。


「要は目標を叶える力を犯罪に使うアタシら病人をまとめてブチ込める檻が必要だったんだろ?」


「言い方悪いし気に入らないけどその通り、でも本来なら夢想(プレシャス)って判明したら即収容所に送られるんだけど、まだ学生だし危険じゃない夢想(プレシャス)だから白百合で治療をするって建前で編入してもらったの。」


「治療か……ん?ちょっと待て建前?」


何か不穏なことをこの女は言った。


「そ。建前、あなたのことはいろいろ知っててね。学校での悩み相談や面談、両親の手伝いと称して精神科医とケースワーカーの資格を無視してのカウンセリング、本当はマズイけど割と評判が良かったからのも知ってる。」


「……まさかだけど、そっちの側面が本音なのか?」

冷や汗が垂れ、学園長の口角がつり上がった気がする。

「よろしくねー、日向丘セ・ン・セ・イ。」


アタシは怒りを吠えた、この女は笑った、普通にキレそう。

お読みいただきありがとうございます

また続きを読んでいただけたら幸いです

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