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傷跡童話《スカーテイル》  作者: 小鳥遊 和輝
1章 スタートライン
15/19

7話

さて、207号室の住人は誰か。

そんなものはだいたい分かる、殿町恵一だろう、残り的にも。

霧晴の言った『そーくん』の意味は分からんがまあいい関係ないし。

アタシは扉を3回強めにノックをする。しかし返事が無い、ならば普通に声をかけるべきなのだがここで少し悪戯心が現れる。


「殿町そーくん、日向丘だ。部屋確認と挨拶に来んだがいるか?」


再びドアをノックしながらそんなことを大声で言って待つがやはり返事が無い。

ここは後で挨拶に来ることにし帰ろうとする、しかし思いとどまる。

軽快な音ではなくもっと力強い全力に怒りを追加した走る音が近づいてきているからだ。


「その呼び方やめろ馬鹿野郎」


「アタシが野郎とは言ってくれるな殿町そーくん恵一」


「だから呼ぶな下の階まで聞こえてるんだよどんだけでけえ声で呼んでんだ」


よほど急いで来たのだろうな。

髪はしっとりと濡れていて皮膚には水滴が見えるし少し汗臭い。


「そんなに焦って来る必要はないだろうどんだけこの呼び方が嫌なんだ?経緯を話せば今後この呼び方をしないよう気をつけるが」


「嫌だ思い出すのも恥ずかいんだよ。勘弁してくれ」


「そうか、とりあえずここがお前の部屋だな。今日から寮長らしいからよろしく頼む」


「おう、つかさっきと口調が違うな。気が抜けるとこんな感じなのか?」


「それに関しては今はノーコメント。お前がそーくんの謎を教えてくれれば話さないこともないが?」


「こだわるなよ……頼むからマジで。悪いんだが部屋入ってもいか?汗を流したい」


「そうか、なら別れるまえに1つ聞きたいことが」


「そーくんのこと以外なら聞くがなんだ?」


「幸織がさっき扉を破壊してな、直せたりしないか?」


「それこそ寮長の仕事だろうが……、まあ直せそうか見ておく無理だったら業者に電話するしかないな。学園長が渋い顔するだろうけど」


恵一はニヤリと歯を見せ快活な笑顔を向け足早に部屋に戻った。



「待たせた」


恵一との挨拶を終え霧晴の元へ向かう。

しかし破壊された扉の前には霧晴の姿はなく青美兄妹がいた。


「よおさっきぶり。霧晴はどうした?」


「センパイお疲れ様です、霧晴センパイなら奥で幸織を寝かしつけてます」


「早くね?まだ19時すら過ぎてないぞ」


「幸織はいつも全力の幼女ですし少し泣き疲れたみたいなので仕方がないです。センパイは大丈夫ですか?」


「ああ問題ない。なあ空多扉直りそうか?」


大丈夫金具が壊れただけだし。今夜中に空多と柴柳先生と直しておくよ」


「サンクス、恵一には話しておいたからそのうち来るだろう。悪いが頼む」


「分かった」


今日中に直るなら安心だ、霧晴に声をかけて挨拶回りに戻ろう。

部屋に入り2人の様子をそっと覗く。

しましま模様の猫や金髪に青のエプロンドレスの人形、時計を持った白いウサギなどの人形が所狭しと乗ったベッドの上でスースーと眠る幸織がいた。

そして幸織のお腹を枕にニヤケ顔で眠る霧晴もいた

なんか叩きたくなった。


「てい」


「いたっ」

「ゔッ」


頭を叩いたのはミスだった。

霧晴は起きたが勢いで幸織のお腹にダメージが入った。


「暴力はんたんだーい、ダメダヨー」


「うっさい、幸織は大丈夫そうだな」


「うん、お風呂は入ってたみたいだから泣いた後に顔洗って歯磨きさせてぐっすり。そっちは当然終わったのね」


「もちろんだ、じゃあ行くとしよう。お前のアタシの部屋をまだ知らないからな」


「あ、私は205でみーちゃんは306だよ」


「そこは案内しねーのな」


「挨拶と部屋番号の案内が目的だしねー。後で遊びに行くかもしれないから入れてね」


「おう」


そうして解散してアタシは部屋に向かった



3階に戻り思い出した。

というか思い出す羽目になった。


「あら寮長様、わざわざ目下の人間の部屋にお越しいただきどうもありがとう」


朔来がボードに何かを書いているところだった。

笑顔がオモチャを発見したような顔に見える。

様を付けて書かれたせいで朝日のように遊ばれるのだろうか。

黒いマジックを持ってゆらゆらと近づかれる。


「まあまあ落ち着いてくーーッ」


手を前に出して静止してくれアピールをしようとするがさっきの怪我が痛くて動きが止まってしまった。

すると朔来は一気に距離を詰めてきた。

『やられたか』『目立つ場所に落書きされないように』と2つの考えが反射的に浮かび目を瞑るが予想は反した。

袖を捲られる感覚と腕を掴まれる感覚がした。

つまり両手で腕を掴まれた。


「アナタ、これどうしたの?」


朔来は青い痣を凝視しやや震える声で質問してきた

ペンは距離を詰めた場所に置き去りだ。


「これはちょっと転んでな」


「本当に?誰かにやられたりしてないの?大丈夫なの?」


「落ち着いてくれ。大丈夫だアタシが間抜けだっただけだ」


「……そう、そう。大丈夫か、大丈夫なのよね?」


「大丈夫だ。ずいぶんと慌てているな」


「怪我人見れば慌てもするわ。まあ良かった、ワタシは部屋に戻ります」


朔来は振り返りスタスタと部屋に戻って行った。

過敏な反応が気になったがとりあえずアタシも部屋に行こう。

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