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(7)パンはパンでも食べられないパンツなんだ?

もしくは「ヒント:覆面でもありません。」

「ご、ごめんなさい」


 俺の言葉に少女は勢いよく頭を下げた。とりあえず間違いを指摘されたらすぐに謝れる素直な子なのはわかった。


「で、でも、あのう、ここってどこですか?」


 そりゃ、どこと訊かれたらミミック()の中なんだが、それをそのまま言うとややこしくなりそうなんだよな。


「ここは俺の部屋だ」


 だから嘘にならない程度にボヤかして答えてみる。

 実際、元の世界での俺の部屋を元にしてるんだし問題ないだろ。


「そうなんですか。じゃあ、なんで私はここに?」

「それは……」


 首を傾げる少女にどう答えるべきか少し悩む。そしてその間に彼女自身で答えに行き着いたらしく、声を上げてその答えを発表した。


「あっ、わかりましたっ。やっぱり私はミミックさんに殺され……ダンジョンで死んだから、異世界転生させる為にここに呼ばれたんですねっ?」

「いや、ぜんぜん分かってないから。というかそもそも死んでないし。それに異世界転生とかそんな権限ないし。ってか。何で異世界転生なんで知ってるのさ?」

「へっ? 物語として結構メジャーなジャンルですよ? 私のいた孤児院にもいっぱいあって私それを全巻読破したんですから」


 なぜか、ふんすと胸を張る少女。なにをそんなに偉そうなのかは分からないが、精一杯張られた胸がもの悲しい。まあ、身長から察するにそこまで気にする年齢じゃないんだろうと結論づけておく。

 とにかくだ。一言行っておこう。


「まじか」


 ーーマジです。この世界では異世界転生物はそれなりに流行ってます。


 マジらしい。

 どういう内容でどういう経緯で流行っているのかは気になるけど、俺が異世界転生した存在と説明しやすくはなった、のか?

 信じてもらえるか否かをともかく、少なくとも「異世界」の存在を説明する必要がなくなったのは確かなようだ。


 でも、いまは彼女がここにいる理由だな。

 正直に彼女を救う為だと言うのは、俺がミミックだとバラさないといけなくなるし、なんだかこっぱずかしい。

 だからなんか他の言い訳が欲しいのだが、なんかあったけな……。

 俺は思考を巡らし、彼女とのいままでの経緯を思い返してみるとひとつそれらしいのがあった。


「君をここに呼んだ理由。それは説教する為だな」


 そうだ。

 今度戻ってきたら説教しようと思ってたんだ。

 ミミック()だと話せないが、ここだと別だ。この機会にきっちりみっちりと説教してやろう。


「せ、説教ですか?」


 ここに連れてこられた理由が説教と聞き、少女は逃げ腰になっている。

 俺が言いたい事と同じとは限らないが少女自身心当たりがあるようだ。


「あぁ。だが、その前にだ」


 ごくっ。俺の言葉に少女が息をのむ。


「いま手に持っているそれ、返してくれ」

「あっ……。ご、ごめんなさい」


 俺に指摘された少女はさっきまで手に持ったままだったそれを慌てて俺に差し出してきたので、きれいに広げられた状態で渡された三角の布製品を無言で受け取る。

 いや、気の利いたコメントとかこの状態でできるか?


「あと名前を教えてくれないか。俺は君をなんと呼べばいい」


 そして俺はどう名乗ればいい。名字が先か名前が先か。そもそも名字とかなかったり逆に滅茶苦茶あったりしたらどうするか。

 そこら辺を含めて少女の名前を聞いてから考えよう。外国語っぽい名前なら、俺の名前も英語に……しなくてもいいな。

 ……。

 べ、別に木菟を英語でなんて言うか分からない訳じゃないぞ。ただ辞書を捜すのが面倒なだけだからっ。って、誰に言い訳してるんだ俺?


「あっ、ごめんなさい。私、ティミアです。ティミア・マースタです。テムって呼んでください」

「あ~と、ティミアの方が名前でいいんだよな?」

「えっ。あっ、はい、そうです。よ?」


 少女、いやテムは何を当然な事を聞いてくるんだと首を傾げる。

 この反応からしてもこの世界では名前、名字という順なのが一般的っぽいな。


「わかった。ありかとう」


 だと、すると俺の名前をこっち風に言うとミミズク・ニイトか。

 微妙にゴロが悪い気もするが、まあいいか。


「えっと、神様?」


 なにやら1人で頷く俺を不審に思ったのか、テムが声をかけてきた。


「ごめん。ちょっと考え事してた」

「いえ気にしないでください」


 逆に恐縮して謝るテム。さっきもなぜか俺のことを神様って言ってたしもしかしなくても勘違いしてるのか?

 だとしたら、早い目に訂正しておくべきだよな。


「ちなみに俺は神様じゃないから」

「えっ……」


 じゃあ、もしかして悪魔さん?

 少女がそう呟いたのは聞かなかったことにしよう。うん。


「俺はミミズク。ミミズク・ニイトだ」

「……ミミックさん?」

「ミミズクだ。ミミズク」

「ミミ……ックさん?」

「ミミックじゃなくて、いやミミックだけど、ミミズクだから」

「えっと……ミミツクさん?」


 あとで分かった話。こっちの世界ではどうやら「()」の発音がないらしい。だからどうしても「つ」や「す」、「っ」になってしまうそうだ。まあ元世界の「ゐ」や「ゑ」みたいなもんだな。

 と言うことで、すったもんだあった物の結局は俺が折れることになった。


「はあ、もうミミックで良い」


 ま、俺だって「ヴィ」とか「ヴ」の発音がよくわかんないしな。それにあながち間違っているわけでもないし。


「す、すいません……。で、でも、あの、もしかしてミミックさんって、あのミミックさんです?」


 どのミミックさんだよと一瞬思ったが、すぐにテムを何度も助けたミミックのことだと気づく。


「あぁ、たぶんそのミミッ……」


 くぅ~。

 ある意味ジャストタイミングで可愛らしい音がなった。


「うぅ。ご、ごめんなさい……」


 顔尾を真っ赤にしてお腹を押さえるテムにどう返せばいいのか一瞬迷った後、取り敢えず俺はこう答えることにした。


「いや、まあ、うん。とりあえずなんか食うか?」

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