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(6)神様ごめんなさい(????視点)

もしくは「これはチョロインですか?」

ヒロイン視点です。あと、前話以前と比べて少し長い(当社比、約2倍)です。


※そして6時間置きの連続投稿5/6です。


 私がそのダンジョンに潜ったのは、言ってしまえばお金が欲しかったからです。


 幼い頃から冒険者に憧れていた私は、13歳になったその日にそれまでお世話になっていた孤児院を出ました。

 いつか有名な冒険者になって孤児院に恩返しするんだ、そんな思いを胸に秘めて。


 冒険者登録と薬草採取依頼の受領を済ませて、ギルドを出た所である男性が声を掛けてきました。

 それは古い装備を割安で買わないかという提案でした。

 なんと武器防具一式を買い換えようと思っておりに、ちょうど冒険者登録したばかりの私が目に留まったというのです。

 今から装備を整えようと思っていた私には願ってもない提案でしたが、男性の方が損するのではないかと気になりました。

 でもその男性曰く、店に売るよりかは高い値段だし、逆に買うには安い値段だから互いに損はないとのことです。

 そう聞いて安心した私は、喜んでその提案を受けることにしたのです。

 冒険序盤の装備品は量産品ということもあり「サイズ自動調整」の効果が付いているため、男の人が使っていた装備品を私が身につけてもちゃんと使うことができます。

 孤児院の先生が当面の軍資金として工面してくれた500Gが一気に残り100Gとなってしまいましたが、一般的な初期装備にかかる費用でそれよりひとつ先の装備品が手に入ったのですから問題ありません。

 私は早速貰った装備品を身につけて薬草採取に向かう事にしました。


 薬草の採取ポイントに着き、薬草を採取していると男の人がやってきて教えてくれました。

 何でもここは私有地で勝手に薬草をとったら犯罪者、賞金首になってしまうそうです。

 どうしましょう。犯罪者になってしまったら孤児院に迷惑をかけてる事になります。それはいけません。どうにか許してもらえないでしょうか。

 困っている私を見兼ねたのか、この場所の持ち主である男の人は採取した薬草10個と植え直す費用80Gとで許してくれると言ってくれました。

 残りの所持金が20Gになるけど仕方ありません。私は犯罪者にはなりたくはありませんし。


 別の採取ポイントで必要数の薬草を手に入れて、ギルドへ依頼達成の報告へ行った際に、初心者を騙して薬草を横取りする人達がいると言うことを聞きました。私も気をつけないと。

 さて、薬草採集の報酬と併せて残り68G。この町の宿の宿泊料は80Gから。これでは宿を取る事ができません。なので新しい依頼を受けることにしました。ゴブリン退治です。ゴブリンを倒して得られる魔石を持ってくれば色付きで買い取ってくれるそうです。

 でもゴブリンってどこにいるんでしょうか?

 あっ、ダンジョンですか。ありがとうございます。

 親切に教えてくれたおじさんに情報量とダンジョンまでの案内料、ダンジョンに入る為の手数料を支払い残り20Gに戻ってしまいましたが問題ありません。

 ゴブリンはある程度の装備がそろっていれば素人でも勝てるレベルなので今の私にも十分勝てます。経費分はゴブリン狩って稼ぎ直せばいいのです。

 ちなみにこのダンジョンに入るのに手数料は必要ないそうなのですが、そのことを私が知るのは少し先の話。


 さて、ダンジョンに潜って数分後、早速ゴブリンと出会いました。

 私は威勢良くゴブリンに飛びかかり見事倒したのですが、少々困った事になってしまいました。

 せっかく譲って頂いた剣がさっきの戦闘で壊れてしまったのです。

 あの男性が知ってていたのかどうかは分かりませんが、譲って貰った時点でかなり耐久度が減っていたようです。困りました。これではゴブリンが倒せません。

 ゴブリンが倒せないと宿屋に泊まれないどころか依頼不達成の違約金を払わないといけません。

 もちろんそんなお金はないので借金奴隷になるしかありません。どうすればいいのでしょうか。


 あっ、そういえばこのダンジョンには未知のお宝が眠っていると言う噂を聞いた事があります。モンスター達から逃げつつ、そのお宝にたどり着ければ……、というかもうそれに賭ける事しか思いつきません。

 なので私は、そのままダンジョンの奥へ挑むことにしました。

 どうにかモンスターに見つかる前に道を変え、見つかることなくダンジョンの中ほどまでは進めたのですが、運悪く1匹のゴブリンに見つかってしまいました。

 最初はどうにか素手で倒せないかと挑んで見たのですが、やっぱり無理なようで、多少の傷を受けつつも逃げ出す事にしました。

 逃げる道すがら見つけた小部屋に入り、置かれていた宝箱の陰に隠れます。これでやり過ごせればいいんでしょうけど……。

 少しの間、そこに隠れていると誰かに肩をつつかれました。ホラーなどにあるお約束通り振り向けばゴブリン。そんな展開を覚悟しつつ頭を上げた私の見た物は黒い手。予想外のそれに少し思考停止しました。

 しばらく固まっていると、その手は宝箱の中へ消えていきます。完全に消えたのを見届け私はとっさにその宝箱から離れました。

 もしかしてこれが噂に聞く人食い宝箱ミミックなのでしょうか。だとしたらなぜ私を襲わないのか不思議ですか、とりあえず触らぬミミックに祟りなしです。

 下手に動いて反応されても困るのでしばらくその宝箱を観察することにしました。

 すると箱からまた手が現れて私の方へゆっくりと伸びてきました。そして体を強ばらせて固まっていた私の前で止まり、握っていた拳を開いて見せてきました。

 そこにあったのは5枚の葉っぱ。それは初心者冒険者とっては必需品とも言うべき薬草でした。


「……薬草? ……くれるの?」


 なんだかそう言っているような気がして、思わず聞き返してしまいました。

 言葉が通じるはずないのに、おかしな話ですね。

 でも、ホントに言葉が通じたのでしょうか。ミミックさんはゆっくりと手を閉じ親指を立てなにやらジェスチャーをしました。どう意味なのかは分かりません。でも悪い意味ではない気がします。たとえば、正解、とか。

 もしそうだとしたら、そうであって欲しい、そう思いつつ再度開かれた手へ自分の手を伸ばします。そして薬草を手にして見ましたが、特に動く気配はありません。

 どうやら思い違いではなく、このミミックさんは優しいミミックさんのようです。


 とりあえず彼?がくれた薬草で体力を回復しておきましょう。……、あれ? 普通の薬草よりよく効いている気がするのは気のせいでしょうか?

 もしかしてこのミミックさんがくれたから?

 私はいつの間にか手を仕舞われたミミックさんをじっと見つめます。できれば彼?とお話してみたいのですが……。


 でも、無理ですよね。私と彼?は人間と魔物、彼?がかなり高ランクの魔物でもない限り話すことができる筈がありません。私に魔物使いの才能があれば別かも知れませんがそれを調べる為のお金すらない状態ですし。

 名残惜しいですが仕方ありません。いつまでもここにいる訳にも行きませんし、そろそろ行きましょうか。

 部屋を出る間際、ふと思いつき私はミミックさんにお辞儀しました。

助けてくれてありがとうございます。ほかの冒険者さんやモンスターに倒されないことを願ってます。そんな思いを込めて。


 一念発起してミミックさんの部屋を出た私でしたが、この時失念していました。そう私の武器はまだ壊れたままだったのです。

 つまり、それから約10分後に再びゴブリンと遭遇してしまった私には逃げるしかすべが無く、結果またもミミックさんの部屋に隠れるしか無かったのです。


 ミミックさんにゴブリンを倒して貰って、部屋を出て、またゴブリンに遭遇して、ミミックさんの所に逃げ帰って……。

 何回繰り返したでしょうか、詳しくは覚えていませんがそれでも何回目かのその時、私は思ったのです。

 このままではいけない。いくらミミックさんが優しいといってもこのまま頼り続けるのはミミックさんの迷惑になる。だからもうミミックさんの部屋に逃げ込むのはやめようと。


 それからしばらくはモンスターに見つからないように最大限に注意して進み、順調に進めていると気を抜いた矢先、私はやってしまいました。

 一歩踏み出した足の下でカチッという何かスイッチが入る音。それに続いて鳴り出すジリリリというベルの音。それに引き寄せ、集まってくるモンスターの群。そう私は、警報の罠に引っかかってしまったのです。

 幸い、後ろからはモンスターは来ていません。私はとっさに引き返し、ミミックさんの部屋へ向かいます。ミミックさんにはまた迷惑掛けてしまいますが、私にはミミックさんしか頼る人?がいないのです。

 ごめんなさいごめんなさい。胸の中でミミックさんに謝りながら部屋へと向かいます。そして部屋に着いたとき、そこにいたのは腕を構え殺気を放つミミックさんでした。


 やはり頼り過ぎたのでしょう。何度も助けてもらいながら今度はこれまでよりも大量のモンスターを引き連れて戻ってきたのですから、彼?が怒っても仕方ありません。

 ミミックさんから怒気が放たれ、私は覚悟しました。死ぬのは怖いです。けど、どうせ死ぬならミミックさんに殺されよう。ミミックさんに殺されて彼?の経験値や栄養になれるのなら、少しは恩返しになるのかなぁ。

 そう思った瞬間に私はミミックさんに掴まれ……、次に気付いたときには見知らぬ部屋にいました。


 ここは?

 私は見たこともない家具?がいっぱいあるその部屋を見回します。机やダンス、ベッドと言った見たことがある家具ももちろんあります。でも、それらも見られぬ素材で作られていたり、とても高価そうな雰囲気が漂っていたりします。

 もしかして天国? どうもそんな気はしません。私達の世界じゃないどこか別の世界にある誰かの部屋と言われた方が納得出来そうです。

 ベッドの側に窓がありました。そこから外の様子が分かるかも、そう思いのぞき込んでみましたが、辺りは真っ白。

雪かとも思いましたが、どうやらそうではない様です。空も地平線も無くただ真っ白で、たぶんそう言う場所なんでしょう。

 この部屋にはドアらしきものもありますが、この様子だと外に出ても意味がない気がします。下手に出ても危険ですし部屋から出るのは最終手段として、私は部屋の中を物色する事にしました。


 まず私に目に止まったのは本棚です。そこには様々な本が並んでおり、ツンツン頭の男性が書かれた物や麦わらの少年が書かれた物などがありました。試しにひとつ手にとって見ましたが、とても上手な絵と台詞らしき物が書かれていますが、異世界の文字なのか見たことのない文字で書かれていたので私には読むことは出来ませんでした。絵を見る限りとても面白そうだったのに残念です。

 次に私が調べたのはタンスです。もしこの中にナイフのような武器になりそうな物があればとても助かります。外に出るにしても、護身用の武器はあった方がいいですし。

 でも、ホントに良いのでしょうか。少し心が揺らぎます。人の気配がないにしてもしている事は泥棒と同じです。犯罪です。

 少し迷って結局タンスの引き出しを開けました。仕方ありません。おなかが減ったのに食べ物がないんです。もしかしたらこの中にあるかも知れないじゃないですか。命あっての何とやらです。生きてさえいれば罪は償えると思うんです。

 意を決し開けたそこにあったのは丈夫そうな布?製のなにか。おそらく服の一種のだと思われるます。どう見ても食べ物じゃありません。

諦めきれずタンスの中を引っ張りだしていたその時、いきなり背後に人の気配がしました。

 私は気まずく思いつつもゆっくりと振り返りました。

 そこに居たのは、見たことのない服を身に纏った格好いいお兄さんでした。


 えっとつまり……


「お兄さんは神様で、ダンジョンで死んだ私を異世界転生するために、この部屋に呼んだって事ですか?」

「うん。いろいろ勘違いしてるようだけど、とりあえず人の部屋を荒らしといて無かったことにはしないでくれるかな?」


 あっ、やっぱり怒りますよね。

 ごめんなさい。

ノクタで投稿してた分は終わり。

追加で4話ぐらい書き溜めあるんで1日1話で予約投稿を設定しておきます。

切れたら? ……週1か不定期になるかと(汗


次回。「パンはパンでも食べられないパンツなんだ?」

ヒント:帽子ではありません。

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