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(4)ボックス ミーツ ガール

もしくは「I・BUN・KAコミュニケーション?」

※6時間置きの連続投稿4/6です。

 前回のあらすじ。

 俺が訓練を終わらせたと同時に部屋に飛び込んできた女の子。

 彼女はモンスターに追われ、それから隠れるように俺の陰に隠れる。

 彼女を追って部屋に進入するモンスター(推定:ゴブリン)。

 対峙する俺。

 ただし俺、宝箱(ミミック)

 どうしろと?


 俺の陰に隠れて震える女の子。

 いや、助けてやりたいのは山々何だけどさ。

 いまの俺ってば宝箱だぜ?

 手も足も出せな……、あっ、出せるわ。

 俺はフタを開け、偽椀を降りかぶる。

 それを見て驚愕するゴブリン(仮)。

 まあ、当然といえば当然か。

 俺がミミックとは気づいていなかっただろうし、ましてそのミミックが積極的に動いて敵対するとは予想してないなかったはずだ。

 しかも本来の獲物である筈の冒険者には見向きもせずだ。


 俺は気が動転して固まっているゴブリン(仮)に対し、問答無用で殴りかかる。

 上から殴りつけた俺の拳をまともに受けたゴブリン(仮)はそのまま床に叩きつけられ、ぴくぴくと痙攣をしている。それを見た俺は止めとばかりで平手で押し潰す。すると、手を退けた時には淡く光る石だけが残っていた。

 もしかしてこれは魔石とかいう奴なのか?

 取りあえずいったん解析してみようと、それをつまみ上げ、そしてそれを取り込んでみる。

 すぐに「未知の存在です。すぐに解析しますか?」という声が聞こえたので迷わず「はい」と答えておく。

 なるほどね、俺が知らない物を取り込むと勝手に解析スキルが使われるのね。これは楽だな。


 残されたのはオレの陰に隠れて震えている女の子一人。

 まだゴブリン(仮)が倒されたことに気づかずそのままの格好でいる。


 いまから行う異世界人とのファーストコンダクトに心弾ませ、軽く妄想にふける。

 助けを求めて飛び込んできた美少女とそれを救った俺。

 助けられた少女は俺に一目惚れ、なんだかんだで一緒に旅する事になり、ほかの女の子たちも巻き込んでいつの間にかイチャラブハーレムになったり……はしないか。

 俺、ミミックだし。

 逆に恐れられるよな。

 まあ、そうなったらそうなったで諦めるか。

 勘違いして攻撃してくるかも?

 ……それもどうにかなりそうだな。

 なんせゴブリン(仮)から逃げるレベルだからたぶん耐えきれるだろ。それによく見るとこの子の武器、壊れてるし。

 返り打ち? しないよ。

 盗賊とかむさいおっさんならともかく、かわいい女の子なんだぜ。誰が攻撃できようかできるはずない。

 耐えて耐えて耐えきって、こちらに敵意がないことを理解してもらう。これっきゃないね。


 方針が決まったので、早速彼女の肩をつんつんとつついてみる。

 ピクッと身を震わせ、おそるおそる辺りを見回す彼女。

 すぐに俺の「手」に気づいて身を強ばらせる。

 別に怖がらせる気はなかったんだけど、まあ普通に怖がるわな。

 彼女を怖がらせない様にゆっくりと偽椀を引っ込ませると、彼女は俺からぱっと逃げる様に離れていった。

 うん。びみょーに傷つくね。


 傷つくといえば、彼女もさっき俺から逃げるときに転んで膝を擦り剥いてしまったようだ。

 傷つけるつもりはなかったんだか結果としてそうなってしまった。すまんね。

 しようがない。ここはさっき作ったばかりの薬草でお裾分け作戦と行きますか。


 俺はフタを開け、彼女に向けて偽椀を伸ばす。

 強ばる彼女の目の前で偽椀を止めて、ゆっくりと手を開くと5枚の薬草。その光景に彼女は目を丸くした。

 うん。びっくり大成功。


「……薬草? ……くれるの?」


 もちろん俺はしゃべれない。

 だから、少女を驚かせないようにゆっくりと手を閉じ、サムズアップ。こっちの世界で違う意味があるかもしれないが、できれば意味が通って欲しい。

 しばらく躊躇した後、再び開かれた俺の手からおずおずと手を伸ばして薬草を受け取ってくれた。

 薬草1枚でどれだけ傷が直るかは不明だが、まあこんだけあれば少なくとも急場しのぎにはなるだろう。


 さて、薬草を受け取って貰えたのはいい。

 いいのだけれども、これからどうするかを考えてはなかった。

 俺はしゃべれないのだから彼女と話すことはできない。

 手話は知らないし、通じるとは思えない。そもそも腕一本でできるものだと限られてそうだ。

 筆談。俺、この世界の文字知らないし。日本語とか通じないよな、たぶん。

 と言うわけでお手上げ状態。

 しようがない。手を引っ込めて、彼女の動きの観察でもしとくか。


 そんなことを考えている間に彼女の傷が既に治っていた。きっと、さっきの薬草で治したんだよな。

 こんな短時間で治るとは、さすが薬草。さすがファンタジー。

 で、傷を治した彼女なのだかしばらく俺を眺めたのち、ちょこんと立ち上がり部屋を後にした。

 部屋を出るとき、こちらを振り返りぺこりとお辞儀してでていったのが印象的だ。

 礼儀正しいいい子である。

 次会えるかどうかは分からないが、いつかあるかも知れないその時までに何とかしてコミュニケーションを採る方法を見つけられればいいな。


 と、そう思ったのだがそれが叶うことはなかった。

 なぜなら、それから約10分後、魔石(ゴブリン)の解析が終わったその直後に、彼女と再会することになったからだ。

 二度目にあった彼女はこの部屋へ入るとすぐに俺の元へ駆け寄って……、俺の陰に隠れた。

 おう、なんて言うデジャブ。などと考えた矢先、出入り口からゴブリンが1体顔を覗かせたのは、まあ言うまでもないよな。

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