(3)とりあえず外を見てみる
もしくは「目を開けるとそこは薄暗いダンジョンの中だった」
※6時間置きの連続投稿3/6です。
いつまでも自分の中に引きこもっていてもしようがないと、外の世界へ目をやることにする。文字通りの意味で。
薄暗い中、俺は周囲を見回す。
やろうと思えば周囲180度を一度に見ることもできるのだか、しても元人間の俺が処理しきれるとは思えない。
人間の視覚範囲で「見回す」イメージで辺りを確認してみた。
周りはゴツゴツとした岩に囲まれておりちょうどいい感じに部屋になっている。
って、軽く意味不明か。
簡単に言うと二、三人ぐらいが通れそうな入り口がひとつあり、俺がいる所はちょっと広めの空間になっている。
要するに不思議なダンジョン系での行き当たりにある部屋みたいな場所だ。
うむ。まさしくダンジョン。それも洞窟型。
ファンタジー物で言うところのヒカリゴケに当たるだろう淡く光る苔が所々に生えているため、この部屋も含め入り口から見える風景は意外と明るい。
ちなみにこの部屋を出てすぐがT字路となっており、ついさっきゴブリンらしきモンスターが通り過ぎたが、こちらに入ってくる様子はなかった。
しばらくそのまま眺めていたが、状況に変化がなくすぐに飽きてしまった。
中に戻り、これからどうしようか考える。
まず、急に襲われたりしないように外の警戒。だと言ってもずっと外ばかり見てても飽きるしどうにかできないかなと思ったらできた。
中にいても外の映像や音を拾える窓?みたいなのが作れたのだ。
常の視界に収まるように設定すれば、俺がどこを向こうが勝手についてくる優れものだ。
次に宝物生成でなんか作ってみるかとできたのがこちら、薬草10束。
とりあえず半分ほど残して「中身」として設定してみる。
こうする事で俺を開けた奴が「中身」を手に入れ、俺はその「中身」の価値によって経験値を得る事ができるらしい。BYスキル説明。
おまけに毒消し草などの基本的な状態回復薬も各2個ずつ作っておく。
それが終わり、次に確認したのか偽体スキル。
いま作れるのは偽腕1本。それでどこまでできるのかを確認しておくべきたと思ったのだ。
「窓」で辺りを見渡し、特に変化がないこととするすると偽腕を伸ばす。
黒い陰のような手。ぱっと見、質感はないのだがこれで攻撃とか本当にできるのだろうか。
試しに近くにいたネズミを捕まえてみる。
偽椀は俺のイメージ通りに動き、いとも簡単に捕獲できた。
どうやら、この偽体。実際に自分の体を動かすように扱えるマニュアルモードと、俺のイメージに通り自動で動くオートマチックモードがあるようだ。
マニュアルモードだとどうしても人間的な動きしかできなが、オートマチックモードだと多少の無茶はきく。
3本目以降の偽椀とか偽翼など本来ない器官を使いたいときにお世話になるだろう。
ただオートマチックモードは半自動制御なので、とっさの対応が必要担った場合に反応できないことから、マニュアルでも慣れておく必要はありそうだ。
しばらくマニュアルで偽腕を操りネズミやコウモリを捕まえようとしてみたがなかなか難しい。
だって奴ら素早いし。
まあでも、コウモリが悠々と避けている事から想像するに、俺の偽椀は超音波を反射している、つまり物質として存在しているというのは分かった。
さらにしばらく訓練していたが、途中でこの部屋に近づく足音が聞こえたので、とっさに偽椀を中にしまう。
いや、だってさ。
訓練してるところとか人に見られるの恥ずかしいじゃん。
人じゃなくてモンスターの可能性もあるけど。
足音の主がこの部屋の前を駆け抜けたのは、ふたを閉じた直後だった。
モンスターではなく人間だった。
それも結構かわいい女の子。
ここにいるって言うことはたぶん冒険者なのだろう。
美少女冒険者いいね。
それに俺にとっては第1異世界人だ。
是非とも異文化交流を果たしたい物だ。
とか考えたら彼女が戻ってきた。
どうやら向こうも宝箱に気づいた様だ。
部屋に入り、武器?を手にしたまま俺に駆け足で近寄ってくる。
あれ、俺がミミックってバレた?
俺、討伐されちゃうの?
焦る。こちどら仲良くしたいと思ってた矢先だ。
なのに敵対するとか本当に焦る。
「マジか」
中で思わず叫ぶ。
――いいえ、それはありません。
無情にも真実を告げるマジカ先生。
って、敵じゃないの?
軽く混乱している間にも女の子は俺に近づき、そして宝箱の陰に身を隠す。
えっと……?
どういう事か状況の把握に少し手間取ったが、部屋にゴブリンだと思われるモンスターが入って来た為、すぐに把握できた。
つまり、この女の子はモンスターから逃げていて隠れる場所を探してた、そういうことか。
でも、でもさ、宝箱の後ろに隠れるってあんま意味なくねぇか?
という事で、メインヒロイン登場回でした。