(13)教えて、テム先生
もしくは「いや、あるの? マジで?」
とりあえず、テムに朝食をごちそうしつつ、いろいろ聞き出す事にする。
ちなみに今日のトラップフードは《微毒》と《麻痺(遅効性)》の効果のみ。途中で二度寝されると困るから《眠気》はなしだ。
まあ、その代わりと言ったらなんだが件の薬草ジュースを出しといた。
えっ、味?
「まずい! もう一杯」
ってことらしい。
てかそのネタこっちにもあるのな。
えっ、この前読んだ異世界小説に載ってた? マジか?
――マジです。
だそうだ。
「と言うことで、テムはテイマーって知っているか?」
「何が『と言うこと』なのか分からないけど、知ってますよ?」
だろうな。
テムの生い立ちを見る限りでも有名なテイマーが何人もいるっぽいし、絶対に常識レベルだろ。
それに子供の頃、テムがテイマーに憧れていたってことも俺は知っている。
「じゃあ、もし俺がテムにテイムされたらどうなるんだ?」
「ほえ? 私、テイマーじゃないですよ?」
「あぁ、知っている」
少なくとも今はテイマーじゃない。
「それとテイマーの血を引いてないとなりたくてもなれません」
そう言うテムはどこか悲しそうな表情を浮かべたが、今は関係ないな。血を引いていればなれるわけだし。
「まあ、仮の話だ。テイムされたモンスターはテイマーに絶対服従なのか?」
「えっと、そうとも限らないです。テイムの形式には何種類かあって、その種類によってテイマーとの関係も変わります。例えば……」
話が長くなるから、簡単にまとめる。
まず、テイムの形式には「支配」「隷属」「従属」「共存」「共生」「契約」「寵愛」などがあって、テイマーとモンスターのレベル差によってとれる形式か変わってくる。
テイマーの方が圧倒的強い場合、「支配」と言って心のあり方まで変えれるようになるらしいが、偉人クラスのテイマーであっても最低ランクのモンスターを1体支配できるかどうからしい。
逆にモンスターの方が圧倒的に強い場合が「寵愛」。これはテイムとは名ばかりで一方的に気に入られ付きまとわれているような状態だ。もちろん相手の方が強いから言うことを聞かない事が多い。
「隷属」「従属」は「支配」にほど遠くてもテイマーの方が強い場合、「隷属」が絶対服従で「従属」は抵抗の余地あり。世のほとんどのテイマーが「従属」関係にあるそうだ。
「共存」「共生」はモンスターとテイマーが同じぐらいの強さの場合。「共存」が気の合う仲間って感じで、「共生」がお互いに助け合っている感じ。もちろん「共生」の方が裏切られる可能性は低い。
最後に「契約」だ。文字通りモンスターと契約を結び力を借りる。弱めのモンスターとも契約出来なくもないが強いモンスターに有利な条件を啓示して雇うみたいな使い方が普通。言うまでもなくある程度の意志疎通が出来ることが前提のため、開けたら襲うと言うほぼ条件反射で生きているミミックなんかとは契約は出来ない。
ただし、俺を除く。
「そういや俺、テムのステータスを見ていろいろ知ってしまったって言ったよな?」
「はい」
「でだ。もしテムが知りたいことあるんなら答えてやれると思うんだがなんかあるか?」
「んー、特にない、かな?」
「マジか? 例えば両親の事とか……」
――マジです
いや、空気読んでくれよマジカ先生。しかも喰い気味に答えるとか。
「私にとっての親は孤児院の先生達ですし、それにどうせなら本人達の口から聞きたいから」
「そっか」
なら、そこまで詳しくは話せなさない方がいいか。
「じゃあ話題を変えて、この後テムはどうするつもりなんだ?」
「このあと?」
「うん、このダンジョンを出た後。いつまでもここにいる訳にもいけないだろ」
「え~と……」
目を右上の方にそらし、数秒。
「特に考えてませんでした。けど、有名になって孤児院に恩返ししたいなと」
うん。そこは知っている。
「いろんな国に行ってみたいとは思わないか?」
「えっと……」
ぶっちゃけ、俺はいろんな所に行ってみたい。せっかく異世界転生したんだ。こんな岩しかないダンジョンの一室で一生を過ごすよりもいろんな風景を見てみたいと思う。
ただ俺は箱だ。自分では動けない。だから移動するには誰かに運んでもらう必要がある。だからそれをテムにってのは……
「流石に都合が良すぎるか……」
紛いなりにも人1人が身を隠せるサイズの宝箱だ。それを常に持ち歩くとか非現実すぎる。
「ミミックさん?」
「いや、気にすんな」
「はい」
「まあ、どっちにしろ。ここを出られないと意味がない話なんだが……、1人で出れそうか」
「えと、あう……」
少し考え絶望的な表情を見せるテム。
「だと思った」
だたでさえ武器をなくしているのに初心者のテムが生き残れるとは思えないしな。
「あっ、でもここが初心者ダンジョンなら……」
「確かに初心者ダンジョンらしいが?」
テムの生い立ちに書いてあったから間違いないはず。
「なら、最悪は『死に戻り』でダンジョンの外に放り出されるはず」
「はい?」
いや、あるの? 死に戻り? マジで?
――マジです。初心者ダンジョンのような一部ダンジョンでは魔力が充分にあるため人類を捕食することなく、体内の悪性物資の除去のため共存を計る者もいます。
なんかダンジョンが生きているみたいな言い方なのが気にならなくもないが、取りあえずこのダンジョンで死ぬことはないらしい。
とはいえ、テムがここに放り込まれた経緯を考えると、安易に死に戻りはしない方がいい気がするな。
「死に戻りは止めとけ。いやな予感がする」
「そうですか?」
「おう」
入り口に飛ばされた所を盗賊に襲われるとか簡単に予測できるし。
「じゃ、じゃあどうすれば……」
顎に人差指を当てテムは頭を捻る。そんなテムを見つつ俺はある提案をしてみる事にした。
「それに関して一つ提案があるんだが……」




