第4話 第5海防戦隊
青森県の大湊基地に所在する第5海防隊群は、2000年代に創設された新しい水上艦艇による機動運用部隊である。
第5海防戦隊
DDV-191 ふそう
DDG-171 たかお
DD-121 かげろう
DD-122 はつひ
艦隊防空を担うイージス艦『たかお』は、2010年代に8200トン型海防艦の計画名で建造された新鋭の『いぶき』型海防艦の同型艦だ。
アメリカ海軍の最新版イージスシステムと同じものを搭載し、SM-2ミサイルによる防空やSM-3ミサイルを用いた弾道ミサイル防衛能力も設計段階から可能とされている。また、トマホーク武器システムも設けられており、艦対地ミサイル能力も行えた。
汎用海防艦の『かげろう』と『はつひ』は、『あさひ』型海防艦の3番艦と4番艦で、戦隊の対潜防御を担う。
石橋保仁大佐は、『ふそう』進水以来、艤装員長として艦の調整に携わった。そして、国防海軍への引き渡しに伴い初代艦長に就任する。
彼の軍人歴は異例なものだった。国防大学校を優秀な成績を残して卒業した後、国防空軍の戦闘機パイロットとして活躍し、戦闘機部隊の飛行隊長を経て中佐時にアメリカ留学を行う。これは、国防海軍の新型DDV導入に伴う艦長候補育成のためのもので、他の候補者に海軍の海防艦艦長や哨戒ヘリ隊の部隊長を経験した者もいた。
それでも、アメリカ海軍が空母の艦長を戦闘機パイロットに当てる様に、行われた研修や適性に基づいて石橋が新型DDVの艦長に選ばれた。これにより、所属を空軍から海軍に変わり、国防海軍初の空母艦長となった。
しかし、日米において艦の操艦や航法技術を学んだとはいえ空軍出が海防艦艦長とは、海軍上層部から不安や不満の声があった。そのため、艦長の補佐にアメリカ留学で海軍側から参加した米沢守中佐が副艦長兼航海長に着く。
旧自衛隊を通じて戦後初の空母の運用は、戦前の旧海軍とは違う特異な指揮系統となっている。主力艦載機となるF-35BJの運用は、イギリス空軍のハリアー統合部隊を参考とした国防空軍空母飛行群が行う。
空母飛行群司令に着く千草秀明大佐は、彼もDDV艦長候補の一人としてアメリカに派遣されたが、候補から脱落するも培った空母飛行隊運用の知識から本職が用意されていた。
そして、第5海防戦隊司令官となるのが、久松誠少将である。総員1,500名に達する艦隊は、初となる訓練航海のため太平洋の訓練海域を目指した。