『 窮屈で暮らしにくい世の中で 』
「本当にこの世界は住みにくいよな」
赤に変わったばかりの信号は、当たり前に赤のまま。
騒いでいた鳥達だって、こっちの事なんか気にもしない。
雨雲は空一面を覆い、僕の傘にも沢山の雨が降り注いでいた。
「大事な輪っか、落としちゃうから悪いんじゃない。神様なんて良いご身分から転落すれば、住みにくく感じて当然よ」
道端に倒れてたコイツを拾ったあの日から、もう何回季節が巡っただろう。
大切な輪っかを道端に落とすなんて、本当間抜けな奴。
「しかし、窮屈な世界も……全てが嫌いな訳じゃない」
隣を歩く私の左手に、何気なく伸びて来る右手。
ドジで間抜けな元・神様が、何だか最近素敵に思えてきて、困る。