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秋風が運んだデスティニー  作者: ルイ シノダ
8/12

第三章 展開 (4)

ジュンは、父が書いた資料を確認するためにボストン研究所に決めた。ボストンローガン空港から、かつて通った懐かしい道を走りながら研究所に行こうとすると予定外の道路工事で迂回をさせられた。そして交通事故に有ってしまう。

ジュンの事故にナオミは、急いでボストンに行くが・・・。

第三章 展開


(4)

ボストン・ローガン空港からレンタカーを借りて空港からボストン市街に入るトンネルを抜け一号線に出て直ぐに三号線に入る。この幹線は、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学と国際的に有名な大学のそばを通る道路だ。

三号線から二号線ケンブリッジターンパイク入る道へ車を進めた。やがて九五号線に入り、懐かしさを感じながらそのまま車を進めると27Bと書いてある出口が近付いてきた。車を右に寄せながらそのまま降りて、道なりに進むと右にケンブリッジ貯水池が見えて来た。日本ならちょっとした湖だ。

ボストンから三〇分程の湖のある街、ウォルサムだ。そしてまた少し走らすと、今度は今回泊るホテルが左に見えて来た。 

今日は一度、ケネパル・フォーミュラボストン研究所に直接行って手続きを済ますことにしている。そのままそこを通り過ぎると丘の上に大きな建物が、二つ立っているのが見えて来た。

「久々だな。ここに前に来たのはもう三年も前の事か」

ジュンは、独り言を言いながら車を進めると、道路が工事で回り道するように書かれている。“あれ、工事なんて聞いていなかったが”、こちらに来る前にボストン研究所の仲間に状況を聞いていただけに不思議な思いで、指定された道路に進んだ。

対抗車線の交通量は多いので“普通の幹線道路か”と思いながら車を流していた。流れに乗りながら進んでいる時だ。後続の車が突然ブラインドコーナーで追い抜きをかけて来た。

その時、対向車線を走る車が自分の車を追い抜こうとしている車を避けるため、ジュンの方へ突っ込んできた。ジュンは、左側から突っ込んでくる車を避けるため、更に右にハンドルを切った。

目の前に迫るガードレールを意識して左に少しだけハンドルを切りながら車の右ボディをガードレールにこするように避けた時、左側からの車が左前方に迫った。思い切りアクセルを踏んでガードレールにボディを強引にこすりながら進む。ボディとガードレールが物凄い音でこすれているのが分かる。

左側からの車がかろうじて運転席のドアを過ぎた時だった。強烈な衝撃と共に車が左回転した。ジュンは、体に食い込むシートベルトと目の前に突然膨らんだABSに思い切り顔面を打たれ右方向に飛ばされる感覚と共に意識が遠のいた。


スマホがけたたましくなっている。夜中の二時。“何だろう”思いながらスマホのコール先を見ると全く知らない電話番号だった。

 “いたずら電話か”と思って、無視すると一度切れて少し経って、またなり始めた。ナオミは、覚悟を決めてスマホのコールをタッチすると

「ミス・カンザキ」

いきなり女性の声で英語の発音に“えっ”と思いながら

「イエス。スピーキング」

と答えた相手先が、信じられない言葉告げていた。“ジュンが事故”理解できない内容に

ジュンの状態を聞くと左足のけがと打撲で全治一週間と告げられた。

「ジュン」

スマホをヘッドレストの上に置きベッドの横に座りながら、口からこぼれた言葉に自分の手で顔を覆うと涙がこぼれて来た。

「だから行かないでと言ったのに」

意味のない言葉であることは、解っていても口に出さずにはいれない自分の心の消化に戸惑っていた。


 翌日、朝一番で内調プロジェクトのリーダー弦神に連絡を入れると、そのまま成田に向かった。ボストン直行便は一番早い便で午前一一時二〇分だ。

いらだちを覚えながら待っているナオミは、誰かが自分を見ている事に気付いた。周りを見渡したが、空港という特殊な環境では、とても見分けが付けられる状態ではない。

気にしながらも搭乗三〇分前、仕方なくゲートに向かった。フライト中の飛行機の中で、大丈夫であることは分かっていても“早く会って心の揺れをなくしたい”という気持ちが睡眠を邪魔していた。

午前一一時にボストン・ローガン空港に着くと直ぐにタクシーでジュンが入院しているとう“マサチューセッツ総合病院”に向かった。ウォルサムにある病院だった。

ナースセンターで病室を聞くと夢中で向かった。ドアをいきなり開けて中を見るとジュンとその前に白衣を着ている女性と男性、それに明らかに警察官と分かる体の大きな男が立っている。

三人は、ドアの開く音に振りかえるといきなり入ってきた女性に“誰だ”という怪訝な顔をした。

「お姉さん」

自分自身連絡をしていないのでいきなり現れた姉のナオミに驚くと、ナオミは三人を無視して

「ジュン、心配したんだから」

と言ってジュンに近づき優しく頬に手を添えた。

「大丈夫だよ。でもどうして。大した怪我じゃないので心配させては、と思って連絡していないのに」

「ここの病院の人が連絡をくれたの」

“えっ”と思って、まだ、状況がつかめていない三人に“自分の姉だ。心配して東京から来てくれた”と説明すると、驚きながらも納得のいく顔になった。

ジュンは、ドクターとナースに誰か、自分の事を知らせたかと聞くと“そんなこと誰もしていない。大体君の家の電話なんて知らないよ”と返って来た。

「そんな、確かに昨日の夜中二時に携帯に電話が」

そこまで言ったナオミの言葉に

「お姉さん、それは無理だ。僕が運ばれて来た時間とほとんど同じ時刻だ」

自分の言った言葉に“えっ”と思うと

「お姉さん。後で」

と日本語で三人に解らないように言うとまた、ドクターとナースに視線を向けた。


結局、警官の話も含めて三〇分程経った後、二人きりになった。

「ジュン、どういうこと」

今の状況になった理由を弟に聞きながら不安な気持ちも隠しきれなかった。

「お姉さん、僕は明日には退院できる。全治一週間と言っても治療は今日だけだ。いまどきこの程度じゃ、病院にはいらせてくれない。研究所には事情を言って明日から行くと話してある。お姉さんは、僕と同じホテルに泊まるようにするよ」

その言葉に

「あっ、泊るホテル予約してなかった」

目元を緩めて少し笑う顔をするとジュンも

「お姉さん」

と言ってジュンも微笑んだ。

 夕方までジュンのそばにいたナオミは、ナースに近くのホテルを紹介してもらい、翌日早くジュンのもとに行った。

 レンタカーが完全に壊れた為、空港まで戻り同じレンタカー会社に必要書類の事を聞いた後、新しい車を借りて、再びウォルサムにある、ケネパル・フォーミュラボストン研究所に向かった。

 ジュンは昨日こともあり、姉のナオミが同乗していることもあり、用心しながら車を進めたが、昨日のような事はなく、ボストン研究所に着いた。

 ナオミの為にゲストパスを貰うと、自分と同じ研究を行っている仲間のところへ言った。姉を研究ルームに入れる訳にはいかないのでカフェで待つように言って目的の資料を検索した。目的の資料は直ぐに見つかった。

 だが父が書いた資料は、今、同僚の行っている研究の少し前のフェーズそのものであり、特にこれで殺されるという理由は見つからなかった。仕方なく、他のキーワードで検索していた時の事であった。

“えっ”、信じられない情報がスクロールしているサブジェクトの中にあった。“反重力の実用化とその危険性について・・起草 神崎建夫。そんなばかな、さっきの資料では、まだ父の時代では、実用化のめどは立っていなかったはずだ”疑問に思いながらその資料をオープンにすると“これは”、ジュンはその中に記載されている組織名と名前を頭に覚えこむと自分の表向きの資料の検索を始めた。


「お姉さん、有ったよ。目的の情報が」

ウォルサムにあるヒルトンホテルの一室で姉のナオミを見ながらつぶやいた。そして、ナオミの耳元に口を近づけると

「国際科学アカデミー。戸野上正志。お父さんを殺したと犯人だ」

ジュンの言葉に一瞬目を大きく開けるとジュンの顔を見た。

「もう一つある。内調のプロジェクトリーダー弦神新之助。仲間だ」

ナオミは、信じられないという顔でジュンを再度見た。そして何も口にせず、頷いた。

「お姉さん。明日帰国する。一日早いけど何も問題ない。帰ったら・・・」

後は言わずに姉の顔をしっかりと見た。


翌日、午前の便に搭乗する為、早めにホテルを出た二人は、ボストン・ローガン空港に向かった。

 ジュンは、ウォルサムからずっと後ろにいる車が気になったが、特に何も動きがないので気にせずにそのまま車を走らせた。

 だが、空港についても誰かが見ているような気がする。人には感というものがある。特に見られていると肌で感じるのだ。ナオミに視線を送ると分かっているように頷いた。

 ただ、何を仕掛けてくる訳でもないので、そのままにしてした。やがて搭乗手続きが始まったところでその感じが消えた。

 二人の姿が搭乗ゲートに入ったのを確認すると背の高いがっちりとしたサングラスをかけた男が、耳にイヤホーン掛け、口元に小さなマイク持ってくると

「二人は、搭乗ゲートに入りました」

それだけ言ってその場を去った。


ジュンは、タキシングの後、離陸順番を待つ機内の中で隣のシートに座る姉のナオミの引き込まれそうな素敵な素顔を横目で見ながら“誰がお姉さんに連絡したのだろう”と思った。

そして“あの事故は、真相など究明されるはずもないだろう。明らかに自分を狙ったものだ。でなければ、追い抜いた車と対向車線から来た車のあの連携はない。あたかも事故の振りして、僕の運転席に追突するつもりの流れだ”そう思いながら、証拠も何も作れない自分自身の割り切れない気持ちの置き所を見つけられないでいた。

 やがて離陸順番が来て、滑走路に入ると、737の両翼に着いているエンジンが猛烈な音と共に機体を強引に前へ押しやる。目の前のスクリーンにフロントタイヤが浮き格納される映像を見ながらこれからの事を考えながら自然と窓の外に視線を流した。


ジュンは“シートベルト装着”のランプがつくと隣に座るナオミの横顔を見た。ジュンが見ているのが分かったのか、ジュンの方に視線を移すと少しだけ微笑んだ。

日本に無事に帰ってきたのが、心の余裕を生み出したのかもしれない。やがて目のあるスクリーンに滑走路の映像が映し出されてきた。やがて下から突き上げるショックと共に飛行機が着陸すると、メインからサブウエイへとランディングし空港の建物へドッキングする。

シートベルト装着ランプが消えると窓際のシートに座る姉に微笑みシートベルトを外した。シート上部にある荷物入れから仕事用のバッグと姉のバッグを取りだすと、姉のバッグを自分の座っていたシートに置くと

「ジュン、ありがとう」

そう言って、ナオミは微笑みながらバッグを手に取り立ち上がった。


自分たちが住むマンションについてエレベータに乗り、部屋のドアの前に着いた時、ジュンは何か、いつもとは違う違和感があった。

ノブを手に持つ前に姉の目を見て頷くとゆっくりとノブの上下にあるキー穴にダブルディンプルキーを入れた。キー穴は二つある。普通では開けることができない仕組みだ。だが、ジュンは何かを感じた。

“そっ”とキーを上のカギ穴に入れ左に回した。“カチッ”という音と共に鍵が開いた事を知らせた。同じように下の鍵も開けるとゆっくりと縦長になっているノブを引いた。

音が出ないようにゆっくりと開くと一歩足を入れる。そして玄関の中に体を入れると静かにそして“じっ”と部屋の中を見た。

匂い、空気の淀み、熱を体全体で感じた。“二人だけのものだ”そう体で感じると、まだドアの外にいる姉に微笑んだ。


「アライブド」

サングラスの男は、冷静な声で隣に立つ男に伝えると

「OK」

その言葉にサングラスの男は、オペレータの前から消えた。


ジュンは、目的の情報以外にも両親の死の真相まで知ってしまう。急いで日本に帰るジュンとナオミを見張っていた男がいた。そして、更に日本に帰るとすでに二人の周りには、周到に用意された調査網が敷かれていた。

はたしてこの組織は・・・・

次回もお楽しみに。

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