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秋風が運んだデスティニー  作者: ルイ シノダ
10/12

第四章 追及 (2)

ジュンとナオミは渋谷のインターネットカフェでわざとマザーDBをアクセスし、国際科学アカデミーの情報検索網に掛かるようにした。これが罠とも知らずジャックとトランザムは、インターネットカフェを訪れる。相手が素人と油断したすきにトランザムこと戸野上を拉致するが。

第四章 追及


(2)

「ジュン、気がついたわ。そろそろ出ましょう」

そう言って、カメラを意識しながらナオミはジュンの首に両腕を回しながら顔を近づけると軽く口づけをした。そしてカメラの方を向きながらウィンクをすると

「ジュン、出ましょう」

そう言って自分から部屋を出た。カウンタに二人で行くと一時間前にいた男が、少し紅潮した顔で

「お帰りですか」

と聞いたのでナオミは

「はい」

と言ってカウンタの向こうに立つ男の顔を見た。ナオミに直視された男は、顔を赤くしながら

「お待ちください」

と言って目の前にあるPCのディスプレイを見ると

「ご精算の必要はありません」

と告げた。


二人は、受付カウンタの前にある狭いエレベータに乗ると一階に降りた。細い通路を通り道路に出ると左に折れて少し行った喫茶店に向かった。

渋谷駅の二四六を跨ぐ大きな横断歩道橋を斜め渡り少し入った、あまりに人通りが少ない場所だ。喫茶店のドアを引いて中に入れると昔風の落ち着いた雰囲気と古い喫茶店独特の臭いがあった。

窓際より一つだけ中にあるテーブルに座りコーヒーを頼むと、今までいたビルの入り口を見た。二人で外目から見れば素敵な恋人の様に振舞いながら一五分程待つと、やがてそのビルの入り口を少し過ぎた道路の左側に一台の車が停まった。ボディに“国際科学アカデミー”と書いてある。

「ジュン」

それだけ言うと視線を窓の外に向けた。


助手席側のドアを開けると車のボンネット側から回って運転席側に来ると運転席に座る男が、

「ジャック、お前一人で大丈夫か」

「おい、素人相手にお前も一緒に行ったら二人とも笑い物だぞ」

そう言って口元を斜めに緩ますと運転席に座るトランザムを背にビルのエレベータのある細い通路を歩き始めた。

 トランザムこと戸野上は、“ふん”と思いながら“他愛無いか。素人の男と女。間違ってもあいつがやられることはない”そう思うと、ポケットにあるケース入りの煙草を取り出し、火をつけようとした。そして何気なくバックミラーを見た時だった。

「なにっ」

バックミラーに映る男と女の姿は間違いなく神崎姉弟だった。まだ火の付いていない煙草を車の煙草ケースですり潰すと急いでドアを開けた。そして車から離れようとした時、いきなり後頭部に衝撃が走った。そして戸野上は自分の視界が暗くなって行くのを感じていた。


ジャックは、受付に着くと

「ここに男と女の二人組が来なかったか」

受付のカウンタに立つ男が怪訝そうな顔をしながら

「あんた誰だ」

と言うとカウンタ越しにジャックは、いきなり右腕を伸ばして男の胸ぐらを掴んで“グイッ”と引き寄せた。その反動でカウンタ越しに引っ張られ宙釣りになる姿勢になった男に

「無駄口はいい。居るか居ないかだけ答えろ」

サングラスの奥に鋭い眼光を漂わせながら、二人のいた部屋の確認を取るとその部屋に行った。カウンタの男から言われた部屋のドアを開くとサラリーマン風の男が、PCを覗き込みながらアダルト画像を見ていたところだった。

 部屋にいた男は、いきなり入ってきた男に怒ったような顔をしながら睨みつけると、ジャックは、その男の胸ぐらを掴み“じっ”と男の顔を見た。力の違いに部屋にいた男は怒りの顔が恐怖に変わると怯えるように委縮した。

ジャックはサングラスの奥から“じっ”と男を睨みつけると“こいつじゃないな”そう思って何も言わずに男を椅子に座らせた。

いきなり部屋に入り胸ぐらを掴まれた男は、顔がまるでとんでもないものを見たかの様になりながら怯えきった顔をしていると

「ふん」

と言って部屋を出た。カウンタに戻り

「あの二人はいつ出て行った」

受付カウンタに立つ男は、額に汗をかきながら怯えた顔で

「さっ、さっきです」

「どのくらい前だ」

「にっ、にっ、二〇分くらい前です」

怯えている男を無視してエレベータに乗ると一階に降りて狭い通路を出て車に向かった。“うんっ”車の中に誰もいない事が分かると“トランザムの野郎、どこで油売っている”そう思いながら周りを見た。

数人の人間が歩いているだけだった。“おかしい”と思いながら運転席を見ると車の灰皿にまだ火の着けていない煙草が置いてあった。

“まさか”と思いながらポケットから小さなディスプレイのある小型通信機を出すと耳にイヤホーンを付けて小さなマイクに話しかけた。

 “ツーッ”という音だけが流れている。“くそっ、あの野郎”そう頭の中で思うとすぐに運転席に乗り込んで車を動かした。


暗い闇夜から後頭部に感じる痛みを覚えながら目が覚めてくると“ぼーっ”とした視線の中で三人の人間の姿が有った。やがてはっきりと意識すると自分の体がしっかりと椅子に縛り付けられている。身動きが取れないままに目の間に立つ三人を見ながら

「どういうつもりだ」

と言うとトランザムこと戸野上は言うとうすら笑いをした。その顔を見た小野寺が

「こちらの二人がお前に聞きたいことがあるそうだ。素直に言った方が身のために思うがな」

 言葉の意味が分からないままに目の前に立つ男と女を見ると

「お前たち、まさか神崎姉弟」

何も言わないままに立っている男の方が、やがて

「戸野上、話してもらえないか。両親の死の真相を」

そう言いながら、バッグの中からケースを取り出した。そして白い粉のようなものを同じケースに入っている水溶液に混ぜると注射器に吸わせた。

「あなたもその筋の人間なら分かりますよね。これが何なのか。話してもらえませんか」

戸野上は、それを見たとき、さすがに体に戦慄が走った。“まさか、だが素人が手に入れられるものじゃない”そう思いながら男の方を見ると

「そうです。あなたの想像通りのものです。話して頂けませんか」

戸野上は、必死の顔で

「ふざけるな。お前たちが手に入る訳がない。偽もんだろう」

その言葉に

「では、自分の体で確かめてください」

そう言って男は、注射器を戸野上の腕に射すとゆっくりとポンプを押して行った。

戸野上は、腕に感じる“ちくっ”とした感覚に最初は、体に何も感じないでいた。だが、体全体が弛緩するような感覚と共に意識が朦朧としてきた。

その様子を三人は、冷静に見つめていた。やがてぐったりとした様子になった椅子に縛り付けられている戸野上を見て、

「確認してみるか」

その言葉にジュンとナオミが頷くと小野寺は、

「戸野上、お前の所属をいえ」

朦朧とした顔を上げながら

「内調三部、コード〇七六、戸野上正志」

普通では、口にしない事を話すと

「聞いているようだ。始めてくれ」

そう言ってジュンの顔を見た。それに頷くと

「内調三部とは、何をするところだ」

「国家機密漏洩阻止を目的として国家に適さない分子を処分する組織だ」

「半重力物質の前責任者、神崎建夫とその妻を殺したのは誰だ」

すこしの時間の後、

「俺だ」

ジュンはいま直ぐにでも目の前に座る男を絞め殺したい衝動に駆られながら

「なぜ殺した」

「国家機密保護法を無視して、反重力物質の敵性国家に対する応用を世界のメディアに漏洩するそぶりを見せたからだ」

ジュンは、自分の右手拳が我慢できないほどに力強く握られると右手を振り上げた。その様子をとっさに見てとった小野寺が、

「神崎さん、後でいくらでもできる。今は目的を果たすことが先だ」

右腕を掴まれながら自身の我慢の限界を超えているジュンに

「ジュン、小野寺さんの言う通りよ。今は、この男から必要な情報を聞き出すのが先。お父さんとお母さんの為にも」

大切な姉の声に右手をゆっくりと降ろすと

「内調三部の組織のボスは誰だ」

「内閣安全保障局長」

「国際科学アカデミーの目的を知っていると国とその要人を教えろ」

「アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、そして日本だ。各国の元首は全員が関わっている。更に・・・」

戸野上から出てくる情報を二台のレコーダーで録音しながら三人は、その内容に戦慄を隠せなかった。

「こりゃ、とんでもないことだぞ」

戸野上を見ながら言う小野寺は、ジュンの顔を見て

「どうするんだ。この情報」

「世界の主要メディアに送りつける」

「なにーっ。そんなことして見ろ。世界中が混乱するぞ」

ジュンのあまりの言葉にさすがに小野寺が驚くと

「何万人もの一般市民が理由もなく殺されるのとどちらがいい」

ジュンの目は、恐ろしいまでに眼光が光りを増していた。そんな二人の会話を聞いているナオミが

「戸野上の様子が・・」

体がだんだん痙攣してくるとやがて硬直して、首をだらしなく垂らした。

「逝っちまったみたいだな」

ジュンの使用した自白強要剤は、自分の意識との葛藤の中で脳内にある記録を喋らせる。それだけに、それが限界まで来ると前頭葉の思考回路を破壊し、廃人と同じ事になる。

だがそれくらいの強い薬剤を使わないと自白しないだろうと考えたジュンと小野寺は、ケネパル・フォーミュラの東京研究所から持ち出した。

“少量の為、すぐには気がつかれない。だが、いずれは、誰かが気がつくだろう”そう思うと自分自身も長くあそこには居られない事を感じていた。


「局長、トランザムがMAです」

「なにっ」

イヤホーンの向こうで驚きのあまり言葉を失っている男に

「今回の件、神崎姉弟が関係していると思われます」

「分かっているなら、直ぐに動け」

暗に“拉致して抹消しろ”と言う指示をだすとイヤホーンの向こうで無通の音が“ツーッ”聞こえた。口の中で“チッ”と言う声を漏らすとジャックは、地下の情報収集室に向かった。


戸野上が、意識を 失うと小野寺は、

「これ以上は、聞けそうにないな。二人とも手伝ってくれ」

そう言うと椅子に座っている男を見た。二人とも“どうするんですか”何て野暮な事は聞かなかった。帰すことも出来ない。勿論警察に届ける訳にも行かない。小野寺の指示通りにしながら戸野上を片付けた。

一通りの事が終わると二人は、小野寺と別れた。マンションまで車で走りながら後味の悪さに言葉が見つからなかった。

ただ、沈黙の中にお互いがしてしまった事を感じていた。マンションに着くとナオミは

「先にお風呂にはいる」

そう言ってバスルームに消えた。ジュンは、意識して思い出さずに、ただ戸野上の声を録音した二台のレコーダーの隠し場所を考えた。やがて上気した顔でナオミがバスルームから出てくると

「お姉さん、レコーダーはお互いが分からないように一つずつ持っていよう。その方が安全だ」

そう言うと風呂から出てバスタオルだけ身体に巻いている美しい姉の顔を見た。ジュンの言葉を一度考えるとナオミは、軽く頷いた。そのしぐさを見たジュンは、

「僕もお風呂に入ってくる」

暗に“その間に隠しておいてくれという意味だ”と理解したナオミは、テーブルに置いてある、一つしかないレコーダーを手に持つと“あそこしかないわ”そう考えると自分の部屋に行った。


 自分の部屋でドレッサーの前で髪の毛を乾かし、風呂上がりのファンデーションを体に付けるとそのまま、ジュンが風呂から上がるのを待った。

 やがて、リビングから

「お姉さん、出たよ」

その声に自分の部屋からリビングに行くとお風呂の暖かさで上気した顔をしながら

「スパークリングワインを飲もう」

そう言ってすでに手に持ったワインを目の高さに上げた。ナオミは、いま心が揺れているだけに可愛い弟の提案に微笑みながら

「うん、ジュンそうしよう」

と言うと、テーブル置いてあるグラスを手に取った。


「お姉さん、明日からも普通に仕事に出る必要が有るけど、弦神は要注意だ。すでに今日の事は耳に入っているだろう。決してどこに居ても油断せずに」

「分かっている」

弟の体に自分自身を添えながら言う姉にジュンは姉の背中に手をまわして思い切り抱きしめた。


 翌日、ジュンとナオミはそれぞれの職場に出社した。ナオミは、いつものようにロッカーに自分の私物を入れたあと、プロジェクトルームに入るといつものようにメンバーが働いていた。ナオミの出社時間は遅い方ではない。まだ半分くらいしか来ていない。

 だが、リーダー席には、すでにい弦神が座っていた。そしてナオミの顔を見るといつものように笑顔になって

「神崎君おはよう」

とだけ言って、そのまま新聞に目を落とした。ナオミは、いつもと変わらない態度に昨日のジュンの言葉が“取り越し苦労かな”と思いながら自分の席に着くと桂浜が、

「おはよう、神崎君。昨日依頼した件、今日いっぱいだからよろしく頼む」

いつもと変わらず、朝になると依頼されている事項の期限を確認する姿も変わらない雰囲気に“何も知らないのかな”と思って少しだけ気が緩んだ。




戸野上から情報を引き出した二人は、拉致に協力した小野寺と一緒に戸野上を処分する。家に帰った二人は、翌日からの行動に十分注意をするようお互いが確認する。次の朝、ジュンとナオミは平然と出社するが、ナオミは何もない状況に気が緩んでします。

さて、来週はナオミが危機に陥ります。お楽しみに。

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