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秋風が運んだデスティニー  作者: ルイ シノダ
1/12

第一章 いたずら (1)

両親の交通事故で、ジュンとナオミの運命は大きく変わった。仲の良かった二人は、両親の資産に目を付けた、親戚筋を始めとして色々な人からの誘惑をはねのけ、二人だけで生きていくことに決めた。周りには、気付かれないように。

だが、それは、二人の心の中にも別のひずみを生みだした。

「秋風が運んだデスティニー」いよいよ始まります。お楽しみください。

第一章 いたずら


(1)

「いきなりですね」

少し酔っているのかな。僕の隣には、素敵なジャックダニエルと

とても素敵な・・・。

”なんで、いつも隣にいるんだろう”そう思いながら今日も一緒。

「おいしいね。これ」

僕は、隣に座る人を見ながら軽く頷いた。


細い指先に少しだけ化粧した爪を意識なく持つカクテルの不思議なブルーの色が

とても合っていた。

「ジュン、どう」

聞いている意味は分かっていた。ただ、その言葉の先にある状況が、言葉を出すことを

躊躇させていた。

少しの間、グラスに入った琥珀色の液体がロックアイスの肌に委ねながらその触れ合いに気持ちよさそうにしている姿を見ていた。

自分の耳に入る声にどう反応すればいいか、判断できないままに横顔が見られているのが分かる。

「どうする」

グラスから顔を起してカウンタの隣に座る女性を見て頷くとジュンは、椅子を降りた。


目の前に少しヒールの高い靴を履いた人がいる。周りの視線が集まっているのが分かる。その人は、”クルリ”と踵を返すとバーの出口に向かった。


「ジュン」

それだけ言うと、目の前の女性は、ゆっくりと僕の手にその人の柔らかい手を重ねた。その人の手が、手の甲に指を立てるとだんだん指を交差させるようにして、そう、人が歩くような感じで自分の腕の途中まで歩いてきた。


「ふふふっ」

瞳が僕を見つめる。薄くアイシャドウを塗っている。大きな切れ長の目の中にある瞳が、自分を映し出すように見つめている。

”すっ”と通った鼻筋、”キュッ”と締まった口、耳元から顎にかけて綺麗に流れる綺麗な顔のライン。

輝くほどに手入れされた髪が、肩から胸元にかけて伸びている。


先ほどまで腕を歩いて指を止めると、もう片方の手を僕の手首に持って来て、そっと上げた。行き先は分かっている。瞳を離さないままにしていると、僕の手は、とても柔らかい部分に添えられた。


「なぜ」

言葉に何も答えずに目の前にいる女性は、ゆっくりと指を自分の唇に持って行った。

そして、人差し指をゆっくりと唇に触れさせるとその指を女性の唇に合わせた。

「ふふっ、ジュン」

 やがて、ゆっくりとその女性の唇が自分の近くに来ると瞳を見つめたまま触れた。優しく、そして優しく唇を。

最初、下唇に触れさすとゆっくりと上唇に動かした。

 決して押し付けず触れるように合わせている。瞳は閉じていない。自分の瞳を見つめていた。

その唇が上と下が重なるように合わせると少しだけ上唇を吸い込んだ。ほんの少しだけ。 歯に当たっていた。女性の舌が自分の歯に当たった。


自分の横に静かに寝息を立てる女性を見つめていた。

”なぜ”、ジュンは、自分の心の葛藤を抑えながらここまで来てしまった流れを見つめた。


「どうしたの、ジュン。そんなに急がなくても大丈夫だよ」

「早く行かないと間に合わない」

「大丈夫だよ」

前を必死に走る弟を見ながらナオミは、声をかけた。


大学の正門の少し入った所にある掲示板を見ると

「有った。やったー」

手に持つ受験票と掲示板に張り出された番号を何回も見比べながらジュンは、大きな声で言った。

「お姉さんやったよ。合格した」

姉の手を取ってはしゃぐ目の前にいる可愛い弟に自分もつい、目元がほころんだ。

「良かったね。ジュン」

「うん」

「お姉さん、手続きに行く」

そう言って、姉の手を引きながら学生課のある建物へ歩いて行った。


 ジュンは、東京大学に合格した後、そのまま素直に進んだ。成績は、抜群で常に5番以内だった。3年の時は学生総代をしたほどだった。

 そんなジュンは、ある国立の研究施設に高額の報酬を持って迎えられた。

それから、5年。研究主任として活躍していたジュンはもう27歳になった。


「お姉さん、どうしたの」

 家で週末にのんびりしていた。今日は朝から両親が郊外にあるアウトレットに二人で行くと言っていたので、朝寝坊でノンビリしていた。

 さっき鳴っていたスマホを何気なく取ったナオミは、スマホの向こうからでる言葉に血の気を失った。

冷静に

「解りました。今すぐ伺います」

そう言ってスマホの通信終了にタップするとジュンの顔を見た。少しの長い、一瞬の時間が過ぎるとナオミは、弟の顔をはっきりとした目で見て、

「ジュン、お父さんとお母さんが亡くなった」

ジュンは、なにを言っているのか理解できなかった。


警察からの連絡で来たのは、なぜか慈恵医大病院だった。“御殿場のアウトレットに行ったはずの両親がなぜ、都内の病院に”理解できない疑問を持ちながらナオミは、救急窓口に行くと病室の番号を教えられた。

何も分からず急いでジュンを連れて3階にある個室に行くと、そこは病室ではなかった。“処置室”ナオミは解らずにドアを開くと警察官や担当医が何か話していた。二人の顔を見た警察官が、

「神崎さんの身内の方ですか」

その言葉にナオミは

「はい、神崎ジュンと神崎ナオミです」

二人の言葉に警察官らしい男が医者らしい男に目くばせすると

「こちらに来て確認して頂けますか」

大きく布が掛けられた2つの台が有った。

吐き気がするほどのいやな気持になりながらゆっくり前に進み、その布の先端部分をもち上げると

「・・・・」

何も声が出なかった。ただ、母らしい姿や顔の一部が残っていた。倒れそうになりながら手を口に持っていき、状況が全く把握できないままにいると

「お母さんで間違いありませんか」

声の主に何も言えずにただ頷くと

「すみませんが、こちらの確認もお願いします」

そう言ってもう一つの台を目線で示した。ゆっくりと歩きそっと布の先端を取ると同じような物体になっている父の姿が有った。布を手に持ったまま

「父に間違いありません」

というとナオミは、布を持ったまま、警察官らしい男の顔を睨みつけ

「何が有ったんですか。両親は、御殿場に言っていたはずです」

「御殿場」

ナオミの言葉に理解できないままに不思議そうな顔をすると

「ご両親の自動車は、湾岸道のトラックの横転事故に巻き込まれ、自動車が横転し、発火してこのような状況になりました」

ナオミは声が出なかった。ジュンは、何も言わないまま、ナオミを見ている。


看護婦らしい女性が、

「すみませんが、ご遺体を整えますので、少し出ていてくださいますか」

と申し訳なさそうに言うとナオミは、自分の目に溜まってくる涙を自覚した。


それから、ずいぶん色々なことが有った。両親や財産の事で色々な人間が二人に

近づいては、色々なことを言っていた。

みんな金が目的だった。ナオミとジュンは、すでに社会的にも独立している。子供だましのような誘いは二人で跳ね付けた。

自分たちも知らなかったが、両親が残した財産は、信じられない額だった。総額にして一二億円。大部分が相続税で持って行かれたが、十分な資産が二人に残った。

ただ、心の中に空いた回廊を埋めることはできなかった。誰に離しかけられてもいつも二人で話し合った。


 二人は、生まれた時から暮らしていた家。両親の思い出がある家を出て、都内にあるマンションに越した。理由は、簡単だった。周りの目が、だんだん変な感じに変わって行くのが分かったからだ。

 二人で話、これからも二人だけで生きていくことを決めた。だから、二人で住めるマンションを探した。大型の2LDK+2Sという大型マンションだ。一般的には高いマンションだったが、二人の資産からすればどうという金額ではなかった。

 親戚にも引っ越し先は教えなかった。これも理由は簡単だ。“人というのは、口ではきれなことを言っても腹の中が全く反対だ”ということが、両親が亡くなった時、身をもって教えられた。だから連絡はしない。そう二人で決めた。


「ジュン」

二人で生きていこうと決めてから・・・時間だけが流れた。

誰も干渉されない時間。そんな時間の中で必然的に起こったことだった。

「えっ」

ナオミが、お風呂から出た時、ジュンはバスルームの前にある場所で鏡を見ていた。いきなり出てきた、姉の姿に・・ただ、あまりにも惹かれる体を見ていた。何もまとっていない、引き込まれるような綺麗な姿だった。

時間が流れた。


あれからだった。自分の横にいる女性あねの寝姿を見るようになったのは。

「ジュン、どうしたの」

体を合わせた後の眼で“じっ”と見られると言葉がなかった。ただ“二人だけで生きていこう”と言ったあの時だけがよみがえった。


「ジュン」

もう一度言うと何もまとわないナオミは、ジュンに“そっと”寄り添うと

「二人だけ。誰も触れない。私たちだけ」

そう言って、体を寄せると瞳をはずさないままにゆっくりと唇を当てた。

“お姉さん”。理解できないままにそのままにしていた。“どうすれば”そう思いながらされるままにしていると

「ジュン、いいの・・・」


それだけ言うと自分の手を引きながら自分の大切なところに招き入れた。ゆっくりとそしてゆっくりと自分の手が、初めて触れる感覚のそばにたどり着くと、ジュンは一瞬だけ顔を強張らせ、強く姉の目を見た。

“いけないよ”自分の顔を映る姉の瞳を見つめながら、引かれていく手を止めた。

姉は、少しだけ微笑むと寂しそうな顔をして

「そうね」

そう言って、ジュンの手を離すと、バスルームの入り口に掛けてあるバスタオルを体に巻いた。


めくるめく気持ちの中で、自分の体の下にいる姉が狂おしいほどの顔を見せながら声を出している。

 突然襲った感覚に自分自身を出すとそのまま、体をゆっくりと沈めた。柔らかい絹のような胸に頬を当てながら“これでいいんだよね”そう思いながら、また込み上げてくる激しい気持ちに素直に従った。


いきなり、二人のメンタリティから始まりました。次回はシリアスな部分から始まります。お楽しみに。

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