七章
暗闇の中を私達は進んでいた。持ってきたライトでは奥まで照らせない程の深く、濃い闇だった。念のため銃は構え続けていたが、この通路はしばらく使われていないようだったので襲撃の心配はなさそうだった。しばらく進んで行くと開け放たれたドアの奥に階段があった。階段は更に地下深くへ繋がっていた。最早自分が何階にいるのか理解するのは難しそうだった。階段はどこまでも続いているようだった。もしかしたら私は階段を降りている気になっているだけで、本当は一歩も進んでないのではないだろうかと思うほどだった。しばらくしてドアを見つかったことで、私の考えがただの妄想であるという裏づけになった。彼はブービートラップを警戒しながらゆっくりドアを開けた。私は後ろでカバーをしていたが、正直なところこの不気味な階段から出たい気持ちが一杯で、彼がゆっくりドアを開けるのをもどかしく思っていた。ドアには何も仕掛けられていないことを確認してから、彼に続いてドアを通った。そこはかつての事務室のようだった。時計はとっくに止まっていて、積もった埃が二度と事務員はこないであろう事を示していた。この部屋はまるでタイムカプセルだった。私たちがこなければ永遠に忘れられていた地中深くのタイムカプセル、それがこの部屋だった。しかし、箱を開けても入っているものは何もない。何故ならこの部屋で本格的に仕事が始まる前に蓋が閉じられてしまったからだ。部屋はどこかに続いてはいなかった。私は部屋から引き返して他の道を探そうとしたが、彼は私を呼び止めた後、ライトを上に向けた。光の照らしているところにはダクトがあった。丁度、若い男ならなんとか通れそうな隙間があった。恐らく美食家きどりの中年女性じゃ無理だろう。私たちは机をダクトの下に動かし、ダクトの中に侵入した。下手したら身体が嵌って動けなくなるほどの狭さだったが、彼は構わず進んでいった。明かりがないためどのくらい進んだかはわからなかったが、匍匐前進するのは何の訓練も受けていない私には厳しい事だった。何故彼はどこに繋がっているかもわからない道を迷わず進んでいけるのだろうか。そもそも彼に迷うという事があるのだろうか。彼は間違っていない確信を持って進んでいるようだったが、ここに来るまで何か一つでも偶然が欠けていたらここには辿り付けていないだろう。そんな事を考えていたときだった。内臓が浮き上がる嫌な感じがするのと同時に、私は何の抵抗もなく落下して行った。