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第二話 でかっちょくんと敬語

でかっちょくんはちびっこちゃんの1つ下です。


だから、ちびっこちゃんに敬語を使います。


ちびっこちゃんはそれがどうやら不満のようです。



「でかっちょくんにため口で話されたい……」


スクールバスを待つバス停。


ちびっこちゃん、美保ちゃん、でかっちょくんの順でベンチに座りながら今日もちびっこちゃんは頬をふくらませています。


「それは無理ですね。年上の方にため口で話す無作法者になるなら俺は切腹します」


真面目な顔で返すでかっちょくん。


美保ちゃんは手鏡で化粧をなおしながら返します。


「ちびっこ、敬語で話されるのと切腹されるのどっちがいい?」


ちびっこちゃんはぷしゅーっと空気を吐き出します。


「どっちも良くない。何でそんな究極の選択みたいになってるの?」


「仕方ないじゃない。あんたが付き合っている男が武士みたいな男なんだから」


「でかっちょくんは大げさに考え過ぎなの! 付き合ってるんだから年上とか年下とか関係ないでしょ!」


「それは違うと思います。男女間の関係にあってもそういうところはきちんとしないといけないと……」


「ちがうもん! 私はでかっちょくんにため口で「俺の命にかけても守る!」とか「危ない、死ぬつもりか!」とか言われたいんだもん!」


「……それはどう言う状況でしょうか」


「あんた、またハードボイルドな映画でも観たんでしょ」


昨日はDVDレンタル100円の日でした。


ちびっこちゃんは手をぶんぶん振り回します。


「とにかくとにかく敬語だと距離を感じるの、今の状況みたいに!」


美保ちゃんを挟んだ現在の状態を示すちびっこちゃん。


美保ちゃんは迷惑そうな顔をします。


「そもそも何でこの並び順なのよ。バカップルに挟まれる私の精神の苦痛を考えてみなさいよ」


ちびっこちゃんはチッチッチと指を振ります。


「これはでかっちょくんと私の距離を具現化したものです。この距離を縮める方法を答えよ!」


「突然、数学の問題もどきが出題されたけど」


「……………」


「ちびっこ、でかっちょが本気で悩んでるわよ」


でかっちょくんは「考える人」ばりに悩んでいます。


「答えは「ため口をきく」でした~。ほら、言ってみて」


「……アブナイ、シヌツモリカ」


「片言のハードボイルド外国人が登場したけど? やめなさい、でかっちょ、いくらカバンを探しても切腹道具なんて出てこないから」


「でかっちょくん、もうひと踏ん張りだよ! ほら、次はハードボイルド外国人じゃなくて、でかっちょくんバージョンでいってみよう!」


「…………」


でかっちょくんは「考える人」ばりに悩んでいます。


全く進まない会話に美保ちゃんは助け舟を出すことにしました。


「じゃあ、取りあえず、呼び方から変えてみたら? お互いにあだ名じゃなくて本名で呼び合うとかど……」


「あ、それは嫌」


「それは嫌です」


二人とも即答でした。


スクールバスがやってきました。


美保ちゃんは「もうこのバカップルは放っておこう」と思いながら先にバスに乗りました。


ちびっこちゃんとでかっちょくんも立ち上がります。


その時、でかっちょくんは心を決めたようにちびっこちゃんの手を取りました。


そして、言ったのです。


「ほら、行くぞ……」


「!」


ちびっこちゃんは大きく目を見開きました。


それから――


「……でかっちょ、その横のやつどうにかしてくれない?」


後ろの席からあきれ顔でそう言う美保ちゃん。


でかっちょくんは窓にもたれかかりながら反省モードに入っています。


その横ではちびっこちゃんがゆでダコのように真っ赤になりながら放心状態に陥っていました。


ちびっこちゃんはその後、どうやって家にたどり着いたか覚えていないと言います。


美保ちゃんはでかっちょくんに「ため口禁止令」を出しました。


ちびっこちゃんは不満そうでしたが、まあ、仕方ありませんよね……。


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