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神奇世界のシグムンド  作者: 上川 勲宜
第5章 リベンジャー
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幕間1 しがらみ

 東方呪術協会。日本に点在する魔術組織を牛耳っていた、今は無き組織……。


 まだ組織が現存していた頃に、なずなは生まれた。


 東方呪術協会は当時、巨大な魔術組織であった。そのこともあってか、組織の跡取り問題は、当たり前のようにあった。そのせいもあり、なずなは幼い頃から、厄介なしがらみの中に放り込まれていた。


 幼い頃は、その浅識のおかげもあって、大人たちの言葉の意味が分からなかったが、歳を経て、知識と知恵を蓄えていくうちに、彼らの言葉の意味が理解できるようになっていった。それは決して前向きな激励のようなものもあったが、口汚く罵るような言葉もあった。組織の頂点の地位を手に入れたいがために、東方呪術協会の下についている小さな組織は、上へとのし上がる好機を、虎視眈々と目を光らせていた。罵倒の言葉も、小さな子なら意味も分かるまいという、相手を下に見る意識からのものなのだろう。子供を……それも上司の子供をストレスのはけ口にするとは、今になって考えれば、なんて業腹ものの所業だろうと、なずなは思う。


 ただ、彼らの目論見とは裏腹に、幼き頃のなずなは、大人のそういう口汚い言葉の数々の意味を、薄々ながら理解していたのだが……。


 自分より格下のものにしか大きく出られない人は、一生その人の下僕に成り下がる、ということを意味している。自分より強い相手と戦わないということは、決して上り詰めることはできないのだ。


 だけど……、となずな。


 彼女は、自分よりも大変な渦中にいる人を知っていた。言ってしまえば、それを知っているからこそ、自分の身に降りかかってくる罵倒の嵐を耐え凌ぐことができたのだ。


 なずなには、三歳ほど離れた兄がいる。


 なずなにとって、血の繋がった兄は、頼れる存在であり、憧れを抱く存在だった。兄の傍にいるだけで心が安らぎ、どのような辛い所業にも耐えられた。


 兄は玖珂家の長男として生まれた。前述したが、巨大な組織には跡取り問題が当たり前のようについて回る。かくいう、なずなの兄もそうだった。


 兄は毎日、組織のトップに恥ずかしくない実力を身につけるため、修練を積んでいた。なずなの両親も、彼のその強い向上心を見抜き、スパルタで兄を鍛え上げた。組織に舞い込んでくる仕事に兄を連れて行き、実戦という形で日頃のトレーニングの成果を見せる機会を設けていた。


 その成果もあり、兄は組織の頂点に位置するに、ふさわしいほどの実力を手に入れた。


 なずなも、喜んだ。彼の努力が実を結んでいこうとしているのを、傍にいて感じられたから……。


「よかったね。お兄ちゃん」


 なずなの激励に、兄は彼女の頭を優しく撫でることで応じた。


 見上げた兄の顔は穏やかで、陽だまりのような温かさがあった。それは、日頃なずなが感じている、あの安らぎの温度をもっていた。






 だが、なずなは知らなかった。






 この温もりを、壊してしまう日が来てしまうことを――――。






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