第一話 〜突然の終わり〜
「おーい、エンリ〜。」
エンリは振り返り声の主を探した。
「なんだい?セイル、これから修行なんだけど。」とエンリは言った。
声の主は『セイル・マルビーゼ』エンリの幼馴染だ。
「あぁ、知ってるよ。リゲルトの村の近くだろ?
ちょっと休暇とったから村に帰ろうと思ってさ。一緒に行っていいだろ?」
セイルは城の兵士だ、センリも認めるほどの使い手だ。
「ふ〜ん、休暇ねぇ。珍しいな、お前が休暇なんて。」
そう、セイルは超が付くほどの働き者で休暇も滅多に取らないのだ。
「ちょっとね、一応城の任務も兼ねてるんだよ。」
あぁ、なるほどな、と思った。セイルが休暇をとるのは村の近くでの任務の時ぐらいだ。
エンリはあえて任務の事には触れないようにした。
「そういえば、魔法の修行ってどんなことをするんだ?」
セイルは無理矢理、別の話題に変えた。
エンリは任務の事に触れられたくないのだろうと思い、説明を始めた。
「まず、魔法の契約を結ぶ。これは知ってるな?そして大きな岩や、大木に向かってひたすら練習するだけだ。」
とエンリが説明した。
「ふ〜ん、で、お前はどれ位強いんだ?」
セイルはエンリの魔法を見たことが無いのだ。
「どれくらいって・・・そうだな、例えば、今、四人の兵士が俺を囲んでも、全員を同時に倒す事が出来るな。」
エンリは三歳の頃から魔法の修行を続けているので、かなりの腕だ。
「ほぉ!それはすごいな。」
セイルは、半信半疑の目でエンリを見た。
でも、エンリはそれでも良かった。エンリにとって自分の強さがどう評価されようとも関心が無いのだ。
この国には兵士がたくさん居る。だからエンリが国のために戦う事も無い。
しかも、この国の王は魔法使いをあまり好いていない。
「あ、この辺だから。じゃあな、たまには親孝行してやれよ。」
「おぅ、お前も修行がんばれよ。」
こうしてセイルと別れた。
修行場には師匠がすでに来ていた。
「さぁ、今日も修行を始めるか。と言いたいところだが、すでにお前はこの国の魔法を全て習得してしまった。
お前に教える事が無くなってしまったのじゃ。これからは自分一人で魔法力を磨くのじゃ!」
エンリは信じられないといった表情でこう言った。
「・・・は?嘘でしょう?師匠、まだ自分は・・・」
ここで師匠がエンリを黙らせてこう言った。
「自分はまだ師匠を越えていない、か?それはそうだ。わしなど40年も修行を続けているのだからな。
それに比べお前はまだ14年じゃ、しかし、魔法の才能には長けておる。もう、1年ぐらいでわしなど足元にも及ばんような偉大な魔法使いになるじゃろう。」
そう言い残し師匠は去っていった。
エンリは途方に暮れていた。エンリにとって修行はいわば、この国での存在理由。
それがこの国では学ぶ事が無くなってしまった。
これから、どうすればいいのか・・・
今回、序章の続きとなる部分を書いてみました。
主人公と幼馴染の会話が多くて、性格が良く現れていると思いますが、どうなんでしょうね?
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