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** トナカイひろいました **  作者: 汐井サラサ
おまけ:**日常平和**
23/28

後編

「気に入ってくれると嬉しいんだけど」


 しゅるしゅると私の手を使って箱を解いていく。

 私の手を使う必要はないのに、大きな手が私の手を包み込み箱の蓋を引き上げる。出てきたのは化粧箱だ。

 かぽりと箱を開けると、可愛らしいオープンハートのペンダントが入っていた。

 一カ所に赤い石がはまっている。


「可愛い」

「本当? 使ってくれる?」


 大した理由もないのに、プレゼントして貰うのは凄く申し訳ないような気がする。


「返却されても僕が使えるものじゃないし、受け取って貰えると嬉しいんだけど」


 私の心内が透かして見えたのかにっこりとそういわれると、受け取らないわけにはいかない。

 ありがとうございます。と受け取ることにした。

 しゃらりと取り出して、首に掛ける。室内灯に反射してきらきらと綺麗だ。


「良く似合うよ」


 勿体ない台詞だけど、嬉しい。

 ふわりと顔が綻ぶのも仕方ないと思う。


「そうそう、それから、こっちはペットくんに」


 もう、ルゥはペットで定着してしまったんですね。

 苦笑した私を気にすることもなく、今度は正方形の箱を出してきた。


「あ、これってあそこのですよね」


 俗にいう行列のできる店というやつだ。

 ぴくりと包装紙に反応した私に桜崎さんは笑って「そうだよ」と頷く。


「あとね、表でペットくんが首を長くして待ってたよ?」

「え!」


 私はその言葉に慌てて荷物をまとめて持ち上げた。

 そして、足を一歩踏み出したところで、はっとして踏みとどまる。


「―― ……あ」

「良いよ。お疲れさま、戸締まりは僕がやっておくから」


 そういって手を振ってくれた桜崎さんに、お礼をいって、ぺこりと頭を下げ私は掛けだした。


「おっせーよ!」

「遅くないよっ。何勝手に待ってるの? 家出るときにメールでもいれてよ」

「めんどい」


 桜崎さんのいったとおり、社屋ビルを出たところでルゥが柱に背を預け、手持ちぶさたに、足を揺らしながら待っていた。


「今日は、当番だったから最後までいないといけなかったの、もうっ」

「ほら、今日は指輪買いに行くんだろ?」


 くんっと私の袖を引いて歩き始めた。

 私はぱたぱたとその姿を追いかけて隣りに並ぶ。


「今から買いに行くの?」


 てっきり、ネットとかで買うのかと思った。


「んー、俺が気に入ったのがこの近くだったから」


 ほらケータイ貸せよ。と手を振られて、私は脇で紙袋を支えてバッグを漁る。


「何この荷物」


 その不安定な体勢を見かねて、ルゥが腕から紙袋を抜き取ってくれる。

 私はやっと取り出したケータイをルゥに渡しながら「ホワイトデーのお返しだよ」と告げた。


「いつもは会社のお茶請けにおいておくんだけど、ルゥもお菓子好きでしょう? だから、持って帰ろうと思って」


 受け取ったケータイをいじりながら「ふーん」と口にするルゥの横顔を眺める。

 あんまり私が真剣に見てしまっていたのか、じわりとルゥの頬が赤くなってきた。


「あんま見るな。減る。……と、ほら、この店、一応ナビにいれたけど、近いだろ」

「アンティークショップじゃん」

「え、アンティーク不評?」


 別にそういうわけじゃないけど、ちょっと意外だ。指輪とかなら普通に宝飾店だと思った。


「そこ、アンティークジュエリーが結構そろってんだ」

「いったことないんでしょ?」

「サイトに載ってた」


 だよね。

 当然の反応に笑ってしまう。でも、私のために何かと探してくれたのなら嬉しい。


「あ、そうだ。ルゥにも貰ったよ、お返し」

「は?」


 いってぼつぼつと歩きながら、ルゥが下げてくれている紙袋の中身を取り出す。

 一番上にあったから直ぐだ。


「ほらこれ。桜崎さんから」

「はぁ?」


 面白いくらい声が裏返った。


「クッキーのお礼だっていってたよ?」

「い、いらねーよ」

「いらないなら私にちょうだい。これ、超レアだよ。並ばないと買えないの。大丈夫私が美味しくいただくから」


 私の言葉にルゥの心が動いた。

 笑いそうになるのを我慢していれば「俺に貰ったんだろっ」と取り上げられた。本当、笑っちゃうくらい食い意地が張ってるよね。


「あ、こら食べ歩きは駄目」

「待ってる間に腹減ったんだから仕方ないだろ」


 お店に着くまで私たちはそんな感じでうだうだ揉めていた。

 それがちょっと楽しいとか、思ってしまうのだから私の脳内は常春なのだろう。



 ***



 金とか銀とかも綺麗だなと思うけど、赤銅色も綺麗だ。

 ルゥが選んでくれていたものは、ペアのリングとしては存在していなかったけれど、リングとバングルのセットだった。

 私の指輪にはイエローダイヤモンドが乗っかっている。ルゥのバングルには内側にはめ込まれていた。


「―― ……ふふー」


 おねだりなんてするのも初めてだ。

 店員さんも冗談の好きな――このアクセサリーの逸話を聞かせてくれて、感動しかかったのに「だったら良いなと思います」と締めくくられたのだ。最初から嘘だと分かっていたルゥは、なんとも思わなかったらしいけど、私は目にも明らかにがっかりした。でも、そのお詫びに、お手入れセットもつけてくれた――感じの良い人たちだったし、また機会があったらいってみようかな。


 そのあとご飯食べて、映画――デートなら恋愛物とかチョイスしてくれそうなのに、サスペンスミステリー怖い系だった。CM見てるときにこれがどうのと話していたのを覚えていたらしい――を見に行って。引き篭もりのルゥにしてはとても頑張ってくれたと思う。

 仕事のあとでちょっと疲れてたけど、凄く満足してしまった。


「お前さ、嬉しいのは分かるけど……気持ち悪いからにやにやするのやめろよ……」


 わしわしと首に掛けたタオルで頭を拭きながら、引違戸に背を預け呆れたように笑っている。


「ちょっ! お風呂早すぎだよっ! ちゃんと洗ったのっ!」

「はあ? なんだよ、出てくるなり発情してんの? 確認したいって」

「い う わ け ない でしょ!」


 苦し紛れに手近にあったルームシューズを投げつけた。

 マンガみたいに顔面に受けてくれるので、やっぱりルゥは楽しい。


 翌日部署内は謎のイケメンで盛り上がっていた。


「凜夏は会わなかった? 昨日ここ出たところですっごいイケメンが居たのよ」

「……え、わ、私、最後だったから……」

「それは物凄く勿体無いことしたと思うよー」

「絶対、モデルか芸能人かって雰囲気だったよね? 声掛け辛いオーラ放ってたもんね」


 ……どちら様のことをおっしゃっているのか分かりませんが、どこかのトナカイなら、あれはモデルさんでも芸能人でもなく唯の自宅警備員です。

 声掛け辛いオーラ。

 人見知り全開で誰も近づくなオーラを出してたんだと思います。引き篭もりっ子だから。

 はぁ、と嘆息したら丁度通りかかった桜崎さんが訳知り顔で軽く肩を竦めて通り過ぎていった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 お久しぶりです。

 イベント限定トナカイさん。お楽しみいただけたでしょうか?

 私は毎回書きながら、うちでこんなじゃれあい方をする奴らはみたことないと、寒い感じになっています(笑)

 次はイベント何がありますかね。4月といえばお花見イベントでしょうか? 桜大好きっ♪ 是非各所で色々やりたいですね!

 そのときは是非ともお楽しみいただけると嬉しいです。

 サラサ拝

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

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