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5、後悔と義妹


 『シェリルお嬢様、おはようございます』

 『おはよう、シェリル』

 『シェリルお姉様、おはようございます』


 使用人達が自分に頭を下げる。優しい家族と笑顔で食卓を囲む幸せな空間。


 『シェリル嬢、私と一緒になって欲しい』


 リエラから奪った伯爵令息との婚約。


 『シェリル様ご婚約おめでとうございます!』

 『サエストロ家のご子息様とご婚約なんて羨ましいです!』


 周りからの祝福や称賛の声。


 何もかも上手くいく。シェリルはそう確信していた。



 しかし………



 




 






 「シェリル、婚約を解消して欲しい」



 何かが、崩れる音がした。






 「婚約……解消…?ロイド、なんの冗談かしら?」

 「冗談じゃない。やっぱり俺が好きなのはリエラだ」

 「なっ!何故リエラなの!?あんな妾の腹から生まれた女より、れっきとした令嬢の私の方が」

 「リエラのことを悪く言うな!」


 ロイドの怒号がホール中に響く。その気迫にシェリルは一瞬にして黙り込んでしまう。


 「リエラは自分の生い立ちも、君や君の両親からの仕打ちを恨んではいなかった。むしろ『いつかわかり合える時がくる。時間が解決してくれる』と俺に話してた。前向きに振る舞っていた。俺はそんな彼女に惹かれたのに、君の姑息なやり口に騙されて婚約解消なんてことを…」

 「だ、だから私がリエラの代わりに貴方の妻になると言っているじゃないの」

 「両親に言われたんだ。君と婚約するのならサエストロ家を出ていけって。両親はリエラのことを大事に思っていたから、シェリルをサエストロ家には迎えたくはないってハッキリ言ったんだ」

 「はぁ!?いい年して親の言いなりなの?このファザコン、マザコン男!!」

 「…はぁ。リエラなら絶対そんな風には言わないのに。君みたいな女を一度でも好きだと思った俺が馬鹿だった。とにかくもう君とは婚約解消だ。二度と俺の前に現れないでくれ」

 

 ロイドはそう言い放つと自室へと戻った。


 「ちょっと!まだ話は終わってないわよ。ロイド!!」

 

 シェリルはロイドを追いかけようとしたが、侍女達に前方を阻まれ、動けない。そして侍女に『お帰り願います』と突っぱねられ、追い出される形で屋敷から出された。


 「何よ…みんなしてリエラリエラって…」


 シェリルは怒りに震えた。

 今まで散々妾の子として疎まれていたのに、いざ居なくなると手の平返したように皆リエラリエラとすがるようになる。この状況をシェリルは面白くなかったのだ。


 「……絶対に許さない!!」










 










 「っくしゅ!!」

 「あら、リエラちゃん風邪?」

 「そうですかね…でも大丈夫です」

 「そう?辛かったら早めに上げるから無理しないでね」

 「はい。ありがとうございます!」


 自分が噂されてるとも知らないリエラは、仕事場である街のレストランで働いている。日課の畑仕事の後に週五日で働いている。

 メニュー豊富な上に安価で提供する有名なレストランで、昼夜賑わっていた。リエラが店にいる時は、リエラ目当ての客が訪れるため、昼過ぎのピークを過ぎた今でも居座っている。


 「リエラちゃん風邪?大丈夫?」

 「無理しないで。俺薬あるよ」

 「なんなら俺看病しに行くよ」

 「はぁ!?お前看病とか言ってリエラちゃんに変なことすんじゃねぇぞ!」

 「そんなことしねぇよ!お前等と一緒にすんなよ!」

 「喧嘩するなら外でしなさい!!」


 常連客がリエラの心配から喧嘩にヒートアップすると、レストランの女主人であるラティが一喝して黙らせた。ラティの圧にさっきまで騒いでた男達はまるで子犬のように縮こまってしまう。


 「まぁまぁラティさん。皆さんお気遣いありがとうございます。皆さんの言葉で元気が出ましたわ」


 ラティと対照的に、柔らかい笑顔を見せるリエラ。その姿に皆癒されるのだった。


 「あんたって本当に怒った顔しないよね。なんでそんなに笑顔でいられるんだい?」

 「亡くなった母がいつも言ってたんです。『笑顔を忘れないこと。前向きな気持ちでいれば必ず良いことがある』って。だから、それを信念として今まで生きてきたんです」

 「…いい母親だったんだね」



 カランッ


 入り口が開く音がした。


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