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2、ポジティブと自立



 ――これでやっと自立することが出来ます!



 たった今婚約解消と貴族追放されたとは思えない発言をしたリエラ。その表情は明るく、幸せに満ちていた。


 「…リ、リエラ。お前、この状況がわかっているのか?お前はロイド君に婚約を解消されて、この家を出てけと言われたのだぞ?」

 「えぇ、わかってますわお父様。でもそれは、私が一人の人間として自立するためなんですよね?」


 ローガスはリエラがショックでおかしくなってしまったのではないかと思い、念を押して確認をした。しかしリエラは理解しているのか否か表情ではわからない。それどころか、自分が自立するための計画なんだと理解不能な発言ばかりするため、家族だけでなく夜会の参加達までをも困惑させる。


 「ど、どういう意味なんだ…?」

 「お父様は私が妾の子だからと甘やかしたりせず、一人の人間として自立するためにお義母様達に私を使用人としてこき使わせたり、『落ちこぼれ』などと罵詈雑言を吐くように頼んでらっしゃったのですよね」


 まるで自分は家族に奴隷のように扱われてきたとも捉えられる発言に、夜会の参加者達の冷たい視線がガイジェスト家の人間に向けられる。


 「なんてひどい…」

 「ガイジェスト家では御子にそんなひどい躾をなさるのかしら…」

 「皆様仲睦まじいご家族と聞いてらっしゃったのに。幻滅ですわ」


 参加者達のガイジェスト家に対する陰口が止まらなく囁かれ、居心地がどんどん悪くなっていくガイジェスト一家。


 「でも私は感謝してます。おかげで料理や掃除が得意になりましたし、精神的にも強くなったと実感してます。これで心置きなく家を出ることが出来ます。本当にありがとうございました!」


 リエラは家族に感謝の挨拶をすると、会場を後にしようと歩き出した。


 「リ、リエラ。どこへ行くんだ?」

 「婚約解消されたなら、もうここに居る理由はありません。もう荷造りは済んでますので、私はこのまま家を出ますわ」

 「い、いや!家を出るって…ってかいつの間に荷造りを!?」

 「夜会の前に済ませて置きましたわ」

 「それにお前無一文でどうやってこれから暮らしていくんだ?」

 「お金の心配は大丈夫です。掃除の合間に作った刺繍

や小物を行商市で売って資金を稼いだので」

 「いつの間に内職を!?」



 ローガスのツッコミに反して冷静に答えるリエラ。執事のルドルフを呼ぶと、ローガスにある書類を見せた。それは、貴族姓を剥奪する届け出と異国移住届け出だった。書類の下に承諾を示す自国王のサインが書かれていた。


 「国王殿下からは許可を得ています。知り合いのツテで移住先と住居も決まってますので」

 「いやいや展開早すぎる!ワシついていくのがやっと、置いて行かないで欲しい!えっ!?国王殿下にお会いしたのか!?いつ?どうやって!?」

 「………………」


 リエラの事後報告オンパレードにローガスはパニック状態。普段の冷静さはなく、一人ツッコミする姿に家族含め周りは引いていた。


 「ルドルフが殿下の兄上様と遠い親戚でして、先日お父様達が旅行に出かけた際に許可を得に行きました。その帰りにカフェに行ったり買い物したり楽しか」

 「待って待って!また新しい情報が増えたぞ!!えっ!?ルドルフが殿下と親戚!?ってかワシ達旅行行ってた時に外出したのか!?」

 「えぇ。通常使用人は館主の外出届け出が必要みたいですけど、お父様達が居なかったので私が代わりにサインしました。この間長期休暇で一週間旅行に出かけられた時には一緒にネグリジェパーティーをしましたわ」

 「館主が居ない時に使用人とネグリジェパーティー!?ワシもう頭パンクするわ!!」


 ローガスの総ツッコミに冷静に答えるリエラ。まるで大衆喜劇のような光景だった。

 ローガスに一通り報告を済ませると、リエラはロイドとシェリルに視線を向けた。二人は奇天烈な言動をするリエラに自分達はどんなことを言われるのかと内心ビクビクしていた。すると、


 「パチパチパチパチパチパチッ」


 リエラは満面の笑みで二人に拍手を送っていた。静まり返った会場にはリエラの拍手だけが響いていた。


 「シェリルお義姉様、おめでとうございます!ロイド様と無事両想いになれたのですね」

 「………は?」


 リエラはシェリルに抱きつき、またしても奇天烈な発言をする。ロイドもシェリルもポカーンとした顔をする。


 「ロイドと…両想い…?」

 「えっ?お義姉様、ロイド様をお慕いしてらっしゃったのでしょ?だから私に隠れてロイド様に会いに行ってらしたのですよね」


 シェリルがリエラに内緒でロイドと会っていたのは事実だ。しかし、それはリエラからロイドを奪うためだけであったが、リエラの目にはシェリルがロイドを好いているものだと思っていたようだ。


 「お義姉様のお気持ちを知ってロイド様を譲ろうと思ってましたが、私は婚約された身。私の一存だけでは決められないのです。だからロイド様がお義姉様を好いてもらえるように努力しました。ロイド様のお誘いを極力断ったりロイド様と会った時はお義姉様の良い所ばかり話したり、『リエラは義妹を虐げている』『使用人をこき使っている』『リエラが裏街で娼婦として身売りしている』などあらゆる噂を貴族中に広めたりしてました」

 「どうりで私が吹き込んだものとは知らない噂が流れてると思ってたら、あれあんただったの!?」

 

 シェリルも父親に負けじのツッコミをする。すると、今まで黙っていたロイドが口を開いた。


 「…リエラ、何でそんなことをしたんだ?お前は俺のことを好いてたのではないのか?」

 「えっ?私ロイド様はお義姉様をお慕いしてると思ってましたので、私自身ロイド様をお慕いなど一度も思ったことございませんわ」


 リエラの衝撃的なカミングアウトに、ロイドはショックを受ける。リエラは自分と会う時楽しそうに話をしていたから、てっきり自分を好いているものだと思っていたのだ。


 一通り話終わると、リエラは背筋を伸ばして家族の顔を見渡した。


 「今までお世話になりました。私リエラは平民として生きて行きます。どうか皆様の今後のご活躍を心から願っております」


 リエラはそう言って一礼すると、ルドルフと共に会場を後にした。





 

 「色々とありがとうね、ルドルフ」

 「お礼を言うのは私の方です。リエラ様のおかげで、執事として仕えてから一番楽しい時間を過ごすことが出来ました」


 リエラは今ルドルフが走らせている馬車の中にいる。明日からリエラが暮らす国までルドルフが送ってくれるのだ。

 「落ち着いたら手紙を書くわ。また他の使用人達と一緒にお出かけしましょう」

 「ほほっ、リエラ様は本当にお優しい方です。あの方達と違って…」


 ルドルフは意味深にそういうとゆっくりと馬車を走らせるのだった…。






 一方、リエラが去った後のガイジェスト家の夜会はなんだか落ち着かない様子だった。


 「一体どういうことなのだ!!」


 高圧的な口調で話すこの人物は、ロドリゲス・サエストロ伯爵。ロイドの父親だ。彼も夜会に招かれていたが、急な用事で途中参加となったのだ。


 「ロイド!!何故リエラ嬢がここに居ないのか説明しろ!!」

 

 ロドリゲスが不機嫌な理由は、ロイドの婚約者だったリエラが姿を現さないことだった。ロドリゲスの御子は男児しかいないため、リエラを娘のように可愛がっていたからだ。


 「ですから父上。私はリエラとは婚約を破棄して、リエラの義姉であるシェリル嬢と婚約をしようと」

 

 バシッ!!


 ロイドが途中まで説明したところで、ロドリゲスはロイドの頬を叩いた。叩かれた衝撃で、ロイドは勢い良く床に倒れ込んだ。


 「婚約…破棄だと…。何を考えているんだ、この馬鹿息子が!!」


 ロドリゲスの怒号が会場中に響く。あまりの迫力に会場にいる者全員凍りついていた。

 この時ロイドは、自分がとんでもなく選択を間違えたと真っ青な顔になる。





 一人の少女が前向きに人生を歩もうとする一方で、ひとつの一族が崩壊の道に進もうとしていることを、この時は誰もが想像していなかった…。

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