1 リアンと仲間たち
「マーガレット侯爵令嬢、私は貴方との婚約を今この時を持って
破棄する!」
「何故ですの?シャルル王子。わたくしのあなたを思う気持ちは
変わっておりませんのに」
「私はこのリリィ男爵令嬢を心から愛してしまったのだ。
真実の愛に目覚めた私に 偽物の愛を騙る君は必要なくなったのだ。」
「シャルル様ぁ~、リリィは幸せですぅ」
「わたくしだってずっとシャルル様をお慕い申しあげておりますのに・・・」
「黙れ!お前がリリィにしてきた数々の嫌がらせを私が知らないとでも
思っているのか!」
「そんな・・・わたくしには身に覚えのない事ですわ・・・」
「おーい、リアン。門限に遅れるからそろそろ帰ろうぜ」
「ああ、先に行ってて。
ごめん、もうそろそろ帰らなくっちゃ」
「えー、これからが見せ場ですのに」
「そうですわ。今王都で人気の演劇、なかなかチケットが手に入らなかったのを
朝早くから並んでやっとの思いで見てきましたのに」
「リアンにもあの感動を味わってほしくてこうして皆で再現していますのよ」
「ありがとう。今度また続きを見せてよ。来月も集まるでしょ?」
「もちろんですわ。同郷の者同士、同じ中等学校卒業生
気の置けない者の集まりの会だけが都会の癒しですもの」
「そのセリフって観劇の影響?」
「うふふ、とにかく来月もみんなで集まりましょ。
リアンも怪我しない様に頑張ってね。」
「うん。ありがとう。皆も貴族学園の勉強頑張って。」
此処は王都にあるセントラルパークの一画・・・
ジョゼリアン・リトレーは王立騎士専門学校の一年生。
半年前に故郷のリトレー子爵領から就学の為に同郷の中等学校を卒業した
仲間たち十数人と上都して来た。
リアンは貧乏子爵家5兄妹の末っ子、10か月年上の姉”ジョゼフィーヌ”
がいるのだが、幼い頃愛称が被っている事に気付いた母親の一言で
”ジョゼ”から”リアン”と呼び名が変わり今に至っている。
リトレー子爵領は、没落した伯爵家の広い領地を細かく分断して
幾つかの子爵や男爵などの下級貴族に下げ渡された領地のうちの一つだ。
その小さな領地の主たちの家族やその縁戚の者が王都へ出てきた同郷の者として
こうして交流を持っているのである。
リアンと同じ騎士学校に通う者と王立貴族学園に通う者
街中や中・上級貴族の屋敷で働く者など
ひと月に一度、都合のつく者が集まって一緒に買い物を楽しんだり
お互いの近況報告をしたりと和気藹々と過ごしている。
女の子たちはドレスを着たりワンピース姿だったりとお洒落しているが
リアンたち騎士学校の生徒は制服の者がほとんどだ。
王立騎士学校は入学するのに試験を受けるが合格さえすれば衣食住と
僅かではあるが手当ても出る。
支給される衣服は制服だけではあるが、平民や貧乏貴族などの
家からの仕送りがあてに出来ない者にとっては大変ありがたい事なのである。
そんな集まりのあった夕暮れ時、リアンより一足先に帰途についた者たちが
公園の出口付近で不審な者達を見つけて近寄って行った。
どうやら騎士学校の上級生数人が同じ年頃の男子三人を取り囲んで
言いがかりをつけている様だ。




