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プロローグ:死んでから、生まれる、その時まで

ちょっと真面目に書いてみました。でもやっぱり変かもです。設定もやっぱり、ありきたりかもです。それでも、楽しんでもらえたらいいなぁと書きました。読んでもらえれば幸いです。

 ――「そこ」は真っ白い世界だった。そこに色はなく、無数の人が浮いていた。赤ん坊から年寄りまで、性別も見た目も服も、人種にいたるまで、おおよそ共通点はない。みんな死んだように眠っている。

 その中の一人、日系の顔立ちをした青年が目を開ける。



「ん……ここはどこだ……? 何でこんなところにいるんだ……?」


 寝起きのように思考が纏まらない。自分は確か死んだはずだ。不治の病。医者には、もう助からないと言われ、最後は家族に看取られた。それなのになぜ、この白い世界にいるのだろう……? まさか、病気のことも全部、夢だとでも言うのだろうか。馬鹿らしい。それとももしかして、死後の世界と言うやつだろうか。それこそ馬鹿らしい。

 なんて取りとめもないことを考えているうちに、段々と意識がはっきりとしてきた。兎に角、何かないかとあたりを見回す。そこには沢山の人が浮いていた。なんだこれは!? 人が宙に浮くなんて……。それに、みんな眠っているようだ。

 起きている人はいないかと、注意して見てみる。が、誰も起きていないようだ。それどころか、微動だにしない。見る限り呼吸すらしていないようだ。まさか全員死んでるのか? 気になって一人に近づいてみる。口の前に手をかざしてみたり、胸の鼓動を確認してみるが、やはり呼吸していないし、心臓も動いていないようだ。ということは、これは死体ということになるのだろう。そこまで思い至って、慌てて飛びのく。


「うわっ!? もしかしなくてもこれ全部死体か?」


 見える範囲でもかなりの人数だ。数百人程度じゃ済まないだろう。遠くの方も霞んではいるが、それらしきものが見える。

 なんだ……なんでこんな死体があるんだ? いや、それよりなんでオレがここにいるかだった。死体を目にして錯乱したが、何か手がかりはないかと改めてあたりを見回す。しかし、やはり浮いている死体のほかに、手がかりになりそうなものはない。

 白い世界。浮いている死体。これだけじゃ、予想を立てることすら出来ない。いや、一つだけ、自分の状態をかんがみても、当てはまりそうな予想はある。あまりに非現実的だが、そもそもオレは死人のはずだ。死人がこうして動いているだけでも十分、非現実的だし、予想が正しければ死人が動ける理由も想像がつく。


「やっぱり、最初に考えた死後の世界ってやつか?」


 思わず思考が口に出る。特に答えを欲していたわけじゃない、いや、答えられる人がいるなら答えてほしいんだが、ここは死体ばかりだ。兎も角、誰かに言ったわけじゃなかった言葉だったのだが、それに応える声があった。


「その通り。ここは魂の世界、生死のない世界。所謂いわゆる、死後の世界と言うやつだ」


「誰だ!?」


 ここに他人がいると思っていなかったので、不意に返ってきた声に戸惑い、驚く。思わず背後を振り返って見た先には、なんというか、この世界のような人がいた。要するに白い人だが。

 白いフード付きローブを目深まぶかに被り、顔は見えない。足元は茶色いサンダルを履いていた。声や口調からして男のようだが、身長は低く、輪郭から見取れる体つきも華奢だ。袖口やフードの隙間から見える肌は真っ白で、手になにやらボードのようなものを持っている。


「驚かせてすまんな。意識のあるやつは久々なので、思わず忍び寄ってしまった」


「思わずて……。それより、ここのこと何か知ってるんですか?」


 なんだかちょっと危ない人かとも思ったが、口ぶりからして、この世界のことを知ってそうだったので、聞いてみる。


「ああ。先ほども言ったが、ここは死後の世界と言うやつだ。世界から死んだ人間の魂が集まり、次の生を始めるまでの間、眠りに着く場所。ちなみに、動物なんかはまた別の世界に送られる。ここは人間だけが集まる場所だ」


「魂が眠る……。ならやっぱりオレは死んだんですね。でも、それならオレは何で意識があるんですか?」


「ふむ……。まぁ色々と理由はあるんだが、要するに人よりちょっと……じゃなく、かなり霊感が強いとかそうゆうことだ。珍しいことではあるが、全くないという訳でもない」


 そうゆうことだ、て……またなんとも軽い説明だな。しかし霊感と言われても、生前、特に勘が鋭い訳でもなかったし、幽霊とかが見えたりしたこともなかった。それとも、そういった所謂いわゆる「霊能力」というのとは違うものなのだろうか。少し気になったので聞いてみる。


「霊感って、生きてるときはそんな実感なかったんですけど……。所謂いわゆる「霊能力」ていうのとは違うんですか?」


「質問ばかりだな。まぁ気持ちは分かるがな。そうだな、お前の世界でいうところの「霊能力」とは少し違う。違う、というより、それは一部に過ぎないという感じだな。霊感が強いものの中に「霊能力」に目覚めるものもいる、というだけだ。分かりやすく言えば「魂の力」といったところか。それが強いものは、様々な能力に目覚めることがある。超能力、霊能力、あまり関係はないように思えるが、類稀たぐいまれな身体能力などもそうだな。と言っても、絶対に目覚めるわけじゃないし、霊感の強さが実際の能力の強さという訳でもない。むしろ、そういった能力に目覚めるほうがまれだ。強さに関しては、どこまで潜在能力を開放出来るか、というところだな」


 なんとなく軽い気持ちで聞いてみたのだが、ものすごく詳しく教えてくれた。正直、半分も理解出来てないと思う。まぁオレに実感がなかった理由はなんとなく分かった。

 それにしても、初対面で質問ばかりしてるのに、えらく親切な人だな。親切ついでに、このあとどうすれば良いのかも、聞いてみたら答えてくれるかもしれない。


「大体分かりました。それで、オレはこのあとどうすれば良いんでしょう? ここでぼーっとしてれば良いんですかね?」


 その質問に、白い人は困ったように頭をく。なんだ? もしかしてまずい質問だったのか?


「んーまぁとりあえず、ちょっとついて来てくれるか? 会って欲しい人がいるんだ」


「はぁ……分かりました」


 ついて来いというので、ついて行くことにした。会わせたい人というのは誰だろう。死後の世界ということだし、神様かなんかだろうか。そんなことを考えつつ、白い人の後ろについて歩く。

 どれぐらい歩いただろうか、白いだけだった世界に、何かの建造物が見えてくる。あそこが目的地かな? 遠目に見える範囲じゃ、宮殿のように見える。ベルサイユ宮殿とか、なんかあんな感じのだ。しかし、白い世界にぽつんと宮殿が建っているのは、なんともシュールな光景だな。

 そんなことを考えてるうちに到着した。近くで見るとものすごいでかさだな。白い人に続いて宮殿に入る。連れて行かれた部屋には、なにやら偉そうなおっさんがいた。会わせたい人ってこのおっさんだろうか。


「天人(てんじん)長、意識のある人間がいたので連れて来ました」


「おお、ご苦労だったな。ふむ、しかし意識のある人間など数百年ぶりか。ここのところは出ていなかったし、久々だな」


「そうですねぇ。まぁそれは兎も角、この人間も訳が分からないでしょうし、早く説明したほうが良いのでは?」


 そうだな、そうして貰えると助かる。この白い人が敬語を使ってるぐらいだし、偉そうじゃなく実際に偉いのだろう。オレが話しかけても良いのか分からなかったから黙ってたが、そろそろ会わせた理由を知りたいところだ。


「おお、そうだったな。人間よ、待たせてすまなかったな。私はこの世界の住人、天人の長をしている。名はゴルドス・ヘイメルという。お主の名前も聞かせて貰えんかな?」


「あ、はい。オレは沢井 陽太郎(さわい ようたろう)です。普通の会社員でした」


「ふむ。ヨウタロウが名前でいいのかな?」


「はい」


 とりあえず自己紹介をされ、オレも返す。そういえば名前と言えば、白い人の名前は聞いてなかったな。オレも自己紹介してなかったし。道中もそこそこ話はしてたんだが、どうして気にならなかったんだろうな。白い人も同じ考えにいたったのか、自己紹介してくる。


「あぁ、そういえば私も自己紹介してなかったな。私はレオル・ヘイメル。管理課主任だ」


「管理課? ってなんですか?」


「あの白い世界の魂を見ただろう? 眠っているとはいえ、何か問題がないとも限らない。現にお前は意識があって、動いていただろう。そういったことがある為、定期的に調査しているんだ。その調査を担当するのが管理課という訳だ」


 なるほど。確かに珍しいとはいえ、なくはない訳だし、もし変な人が目覚めて暴れでもしてたら大変だしな。それから気になった天人についても聞いてみた。要するに、この世界の管理者らしい。人数は少なく、全ての天人がこの宮殿で暮らしているそうだ。そんな話をしていると、おっさん……ゴルドスさんから声がかかる。


「そろそろいいかな? ここに来て貰ったのは用事があったからなんだ。今からその話を聞いて貰いたいのだが」


「あ、すいません。それで、話ってなんでしょう?」


「ああ。さて、道中少しは聞いたかもしれんが、死後、目を覚ます魂は非常に珍しい。前回は数百年前だった。そして、目を覚ますには理由わけがあるのだ」


「あ、それは聞きました。なんか霊感が強いとか何とか」


「ふむ、聞いておったか。その通り、そして、目を覚ますほど霊感が強い魂は、来世にも影響を及ぼす。具体的には、ここでの記憶を持っていたり、何がしかの能力に目覚めたり、だ。後者に関しては、普通の魂でも起こりえることではあるが、普通より数倍、目覚めやすくなる。ここでの記憶を持っているならば尚更なおさら、ほぼ確実と言ってもいい」


 ふむふむ、それじゃ来世ではなんかの能力を使えるかもしれないわけだ。まぁその時、オレとしての記憶があるかは分からんわけだが。


「ただ能力に目覚めるだけならば問題はない。しかし、記憶を持っていた場合、この世界の存在を認知する人間が、下界にいることになる。まぁ普通は、ここのことなど話したところで相手にもされんだろう。しかし、どこにも信心深い人間はいるものだ。私達は下界で言い伝えられる神などではないが、中にはその神と認識する人間もいることだろう。そして救いを求めて自殺などせんとも限らん。私達の立場としては、死ぬ人間が増えること自体はそう問題ではない。だが、その死ぬ理由がこちらにあるとなれば問題だ。ただの信仰の神を信じて自殺するならば良いが、私達の存在を認識し自殺ともなれば、こちらから下界に干渉したと言っても良い状況だ。それを防ぐために、目を覚ました人間には、私達のことを口外しないように頼んでいる。ここまで言えば分かると思うが、お主にもそのことを了解して貰いたい。どうかな?」


 なんか途中からあんまり理解出来てなかったが…要するに転生(でいいのか?)した時に、記憶があっても言い触らすな、ということだろう。まぁ言い触らして得があるとも思えんし、別にかまわないな。


「分かりました。要はここでのことを言い触らさなきゃいいんですよね?」


「そういうことだ。分かってくれて感謝する」


 話はこれで終わりらしい。それじゃオレは……どうすればいいんだ? とりあえずついて来てくれ、と言われてついて来たは良いが、そもそも会って欲しい人がいると言われただけだ。その後について何か言われた訳じゃない。かといって勝手に動き回るのも問題だろう。ここは素直にもう一回聞いてみるか。


「あの、それでオレはこのあとどうすれば良いんですかね? 会って欲しい人がいるとしか聞いてないので……」


「ああ、そうだったな。いや、時々、拒否する人がいてな。そういう人間は、問答無用で記憶を消して眠らせているので、とりあえず話をしてから、という感じだったんだ」


 問答無用……拒否らないで良かったなオレ。あの時困ってたのはこのせいか。


「それで、このあとだが。次の生が始まるまで、まだちょっと時間があるんだ。だからそれまではこの宮殿で過ごしてくれ。何かあれば私の名前を出せば良い」


「分かりました」


 そうしてオレはここに住むことになった。なんかちょっと楽しみだな。


 そして物語は数年後……オレが新たに生まれるところから始まる。

同時投稿の1、でした。

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