表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人の日々  作者: 昼の月
386/406

橋に集まる理由

朝、橋の上には誰もいなかった。


それでも、

木の上には小さな足跡が残っている。


昨日の子どもたちだろう。


イルロはそれを見て、

軽く指でなぞった。


「……増えましたね」


*****


見回り役のノルが橋を渡りながら言う。


「夕方の足跡だな」


「夜は静かでしたか」


「静かだった」


ノルは橋の中央で足を踏む。


揺れは穏やかだ。


*****


畑番のオルナが畝の端から声をかける。


「今日は早く終わる」


「毎日そう言ってるな」

グラドが川のほうから笑う。


「昼が長いからだ」


*****


午前の仕事はすぐ終わる。


ユルンが焼き場から戻りながら言う。


「焼きも終わった」


イセラが干し場から声をかける。


「布も乾いた」


*****


昼は静かだ。


橋の上には風だけが通る。


川の音もゆっくりだ。


イルロは工房の中で木材を整えながら言う。


「……夕方が長いと、

 昼が短く感じますね」


*****


午後、

日が少し傾き始める。


最初に橋へ来たのはオルナだった。


続いてグラド。

そしてノル。


「またここだな」

グラドが言う。


「理由はない」

ノルが答える。


「風だ」

オルナが言う。


*****


そこへユルンが袋を持ってやってくる。


「理由がある」


「何だ」

グラドが聞く。


「橋が涼しい」


皆が笑う。


*****


染め物のイセラが布を抱えて現れる。


「影がいい」


「風もいい」

オルナが言う。


「川も見える」

ノルが続ける。


*****


子どもたちも橋を渡ってくる。


昨日より人数が多い。


「揺れる!」

「昨日より揺れる!」


ノルが笑う。


「人数だ」


*****


橋の上に人の輪ができる。


誰も呼んでいない。

だが、

皆ここに来る。


グラドが言う。


「橋が場所になったな」


*****


夕日が川を赤く染める。


人の影が橋の上に伸びる。


ユルンが言う。


「村の真ん中じゃないのに」


オルナが答える。


「風の真ん中だ」


*****


人が帰ったあと、

橋はまた静かになる。


イルロは欄に手を置き、

川の流れを見た。


「……人は、

 理由より

 居心地で集まりますね」


セレン村の初夏は、

橋を通り道から

居場所へ変えていた。


朝は静か。

昼は暑い。

夕方に人が集まる。


その流れは、

もう村の形になり始めていた。


明日もまた、

夕方にはここに声が集まるだろう。


それを、

誰も不思議に思わなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ