表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人の日々  作者: 昼の月
148/163

夕暮れの縁台

秋の日は短く、セレン村の空は早くも茜に染まっていた。

 工房の前の縁台に、イルロは腰を下ろし、手を休めていた。

 削った木片の香りが袖に残り、指先には今日の仕事の感触がまだ残っている。


 そこへ、養蜂家のオルネが歩いてきた。

 籠には蜂蜜壺がいくつも並んでいて、陽を受けて黄金色に光っている。


「イルロ、作業の合間にどうだ。温かい茶に甘さを足すと、身体がほぐれる」


 そう言って一壺を差し出すと、イルロは静かに受け取り、頷いた。

 二人で縁台に並ぶと、しばらくは村の夕暮れを眺めるだけの時間が流れた。


「今年は蜂もよく働いたよ。……けど、不思議なもんだな」

 オルネが呟く。

「蜜を集めて巣に持ち帰る姿は、まるで俺たち村人そのものだ。

 働いて、持ち寄って、分け合って……」


 イルロは小さく笑い、壺の蓋を指先で撫でた。

「道具も同じです。壊れても繋ぎ直せば、また役目を果たせる。

 人も暮らしも、それで保たれているのかもしれません」


 オルネは深く頷き、目を細めた。

 二人の間には言葉少なな静けさが漂い、やがて遠くで子どもたちの笑い声が響いた。


 ――秋の夕暮れは、働いた心を休めるためにある。


 縁台に並ぶ影は、暮れゆく空に溶けていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ