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村人の日々  作者: 昼の月
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倉庫の屋根板

午後のセレン村は、雲間から光が差し込み、広場に面した倉庫の壁を淡く照らしていた。

 その屋根の一部が剥がれ、隙間から日差しが斜めに射し込んでいた。

 中に積まれた穀物袋が陽にさらされ、村人たちは心配そうに集まっていた。


「このままじゃ雨が降ったら全部濡れてしまうわ」

 サラが額に手を当てて言う。


「畑の収穫を守る倉庫が駄目になったら、一年の苦労が水の泡だ」

 ガルドが重い声を漏らした。


「板が浮いてるな。釘も錆びて外れかけている」

 フロイが屋根を睨みながら唸った。


 イルロは脚立を立て、剥がれた板を調べた。

「木はまだ強い。新しい板を添えて押さえ、釘を打ち直せば持ち直します」


「それなら私が布を持ってくるわ。雨よけにかぶせましょう」

 織物職人マリナが走り出す。


「俺は板を運ぶ!」

 ガルドが力強く宣言する。


「槌と釘なら任せろ」

 フロイが腰袋を叩いた。


「明かりが足りないから、私が灯りを持つわ」

 サラが小さなランプを掲げる。


 ノヴァは子どもたちを連れて、落ちていた小枝や屑を片付け始めた。

「足元をきれいにしておけば作業が楽になるよ!」


 掛け声が飛び交い、屋根の上と下で人々が息を合わせた。

「板をもっと寄せて!」「釘を深く打て!」「布を広げろ!」

 笑いと真剣な声が重なり、倉庫の前はひとつの大きな作業場になった。


 やがて板はぴたりと収まり、布が覆い、屋根は再び穏やかに整った。

 イルロが屋根を見下ろし、静かに頷くと、人々から歓声が上がった。


「これで安心だ!」

「収穫も守られる!」


 サラは胸に手を当て、ほっとした笑顔を見せた。

「倉庫がしっかりしていると、村の気持ちまで落ち着くわね」


 イルロは空を仰ぎ、光に染まる屋根を見つめた。

 ――人の手が重なれば、暮らしの屋根は再び強くなる。


 午後の風が優しく吹き、倉庫の影は広場を穏やかに包んでいた。


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