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神の贈り物  作者: 若君
1/9

前編 上 神の存在、神の分身、神の子供

地球のすべての万物を創造した、創造主。


  彼は形もなく、声もないが、すべての中に存在している。

  万物は彼によって秩序を持ち、星辰は彼によって運行し、生命は彼によって誕生した。


  彼は人類に一つの贈り物を授けた――

  それは彼の子であり、彼の分身、あるいは彼そのものと言える存在だった。


  空気が微かに震動し、まるで空間そのものが名状しがたい存在に怯えるかのようだった。

  次の瞬間、赤ん坊用のバスケットが大統領執務室の中央に忽然と現れた。天から降ってきたかのように。

  バスケットの中の赤ん坊は目を見開き、泣くこともなく、ただ澄み切った瞳でこの世界――地球――を見つめていた。


  彼は創造主と同じ能力を持っていた。この能力は彼が地球に降り立ったことで、神が人類に与えた――


  贈り物となった。


――


  「大統領閣下……これは……」


  室内では、背広姿の官僚と銃を携えた軍人たちが木製の会議卓を囲み、突然現れたバスケットに視線を集中させていた。


  【神の贈り物】


  この四文字が、命令のように、突然全員の脳裏に響き渡った。


  「テロ攻撃か?」「誰が国家保安システムを突破した?」「こんなことあり得ない……」


  「大統領閣下、下がってください!これは爆発物かもしれません!」


  わずか数秒で、場は混乱に包まれた。慌てる声、驚く声、それぞれが異なる反応を示す。


  その時、赤ん坊が泣いた。


  その声は静寂を破り、ガラスのように澄んでいて、しかし計り知れないほどの響きを持っていた。


  泣き声が上がった瞬間、赤ん坊の周囲の空気が明らかに変化した――微かな光が空気中で震え、朝もやのように彼の体から広がっていった。


  部屋中の人々は息を止め、誰も動けず、誰も近づこうとしなかった。


  その時、一つの足音が響いた。


  軍靴でもなく、大統領の足音でもない。


  大統領秘書――


  室内で唯一の女性が、落ち着いた表情で、決然とした眼差しを向けながら歩み出た。


  彼女は周囲の驚きと恐怖の視線を無視し、卓に近づくと、バスケットの中の赤ん坊を見下ろした。


  「正気か?!」誰かが叫んだ。


  「この子は普通じゃない!触るな!危険だ!」


  しかし彼女は止まらず、まるでその声が聞こえないかのように。


  両手を伸ばし、赤ん坊を優しく抱き上げた。


  その瞬間、赤ん坊の泣き声はぴたりと止んだ。


  空気中の光はさらに強くなり、目を開けていられないほどになった。


  「私……」


  秘書の声は震えていた。


  目を見開き、額に汗を浮かべ、息遣いが荒くなっている。


  「私……体が動かない……」


  彼女の両手は見えない力に縛られたように固まり、全身が微動だにしなくなった。ただ、目だけが抑えきれない恐怖を表していた。


  それは神の気配だった。


  抗うことのできない力。


  この日、神は人の世に降り立った。


  人類に、一つの贈り物をもたらすために。


――


  白い実験着を着た女性が、幾重ものセキュリティゲートを通り抜け、極秘施設の奥深くへと進んでいく。


  白く冷たい照明の中、彼女のヒールの音と低く唸る機械音だけが廊下に響いていた。


  「ノエル、おはよう」彼女は部屋の中に静かに声をかけた。


  真っ白な部屋の中央に座っているのは、少年とも少女ともつかない存在――ノエルと呼ばれる子だった。


  年齢:推定五歳。


  性別:不明。


  「ミア!」ノエルは声を聞くと、地面から飛び上がった。


  しかし、彼の足は地面につかず、空中に浮かんだままだった。


  「ダメ!」ミアは慌てて声を上げた。


  彼はゆっくりと降り、人間のように歩いて近づいてきた。


  「言ったでしょう?こんなことをしてはいけないって」


  「ごめんなさい……」彼は頭を下げた。


  「でも……」瞳を上げ、黒白くっきりとした目にミアの姿を映しながら。


  「どうしてダメなの?ミアだってできるでしょう?」


  彼は神の子でありながら、この世界のことを何も知らなかった。


  いや――自分が神であることさえ、知らない。


  (だから、絶対に気づかせてはいけない……)


  ミアは表情を整え、落ち着いたが強い口調で言った。


  「この世界には、この世界のルールがあるの。普通の人はそんなことはしないわ」


  「うん……」ノエルは考え込むようにして、反論しなかった。


  「さあ、今日の身体検査の時間よ」ミアは手招きした。


  「はい!」彼は直前の話題などなかったかのように、すぐに走り寄った。


――


  部屋の中では、機械音が響き渡っていた。


  軍服を着て、仮面をつけた科学者たちが行き来し、データを記録している。


  注射器がノエルの腕に刺さり、血液が採取される。


  彼は透明な注射器の中を流れる自分の血を静かに見つめていた。


  「どうして毎日身体検査をするの?」彼は尋ねた。


  「あなたの健康を確認するためよ」ミアは慣れた手つきで血液サンプルを振った。


  「それで……健康かどうか、わかるの?」


  彼女の手が止まった。


  (またか……)


  彼が話し始めてから、ほぼ毎日のように似たような質問をしてくる――


  しかし、決して同じ言い回しは使わない。


  一日目:「身体の健康って何?」


  二日目:「人間はどうして健康でいなければいけないの?」


  三日目:「僕は……健康なのかな?」


  ……毎日違う。


  彼が発見されてから、まだ一ヶ月も経っていない。


  しかし、彼の外見と体格――もう五歳の子供のようだった。


  「ええ、わかるわ」ミアは優しく答えた。


  「次は身長を測りましょう」


  「はい!」


  データが表示された。


  ミアは画面に表示された新しい報告書を見た。


  (また……伸びている)


  「ミア!今日は何して遊ぶ?」彼は子供らしい笑顔で聞いた。


  「今日はダメよ」


  「じゃあ……勉強?」


  「それもできないの」


  機器が片付けられ、スタッフが退出していく。


  ミアも出ようとした。


  「ミア……」ノエルは部屋の中央に立ち、彼女の背中を見ていた。


  彼女は振り返り、微笑んだ。「ここで待っててね」


  分厚い金属製のドアがゆっくりと閉じていく。


  「今日……」


  このかすかなつぶやきに、ミアははっと振り返った。


  ノエルは彼女を見上げていた。


  「今日……帰ってくる?」


  ――彼は、時間の概念を理解し始めていた。


  ゴオォン……


  ドアが閉まる音が部屋に響き渡り、静寂が戻った。


――


  「また言葉が増えた」


  別室のモニタールームでは、数十人のスーツ姿の男たちが画面を凝視していた。


  あの真っ白な部屋の隅々までが監視されているが、ノエルにはそれが見えない。


  「あの女、交換すべきだ」「リスクが高すぎる」


  部屋には世界中のトップクラスの学者、政府高官、軍関係者が集まっていた。


  「報告によれば、外界との接触がなくても成長を続けている」


  「つまり、自発的に語彙と思考を発展させる能力がある」


  「問題は――十日間、飲食なしで生きていることだ」


  「だが身体データは……完・全・に・正・常!」


  「それが正常だと言うのか?人間にそんなことがありえるか?」


  「しかし、検査結果では、身体構造は五歳児と変わらない」


  「彼の身体は普通の人間の身体だ……ということは――」


  「人間も、あのような存在になれる可能性が……」


  「いや、忘れるな。彼は『突然現れた』存在だ」


  「もう人間扱いはやめろ!」


  「……本当に解剖できないのか?」


  「失敗したら、誰が責任を取る?」



  「とにかく」最上位に座る男が口を開いた。



  「次段階の接触計画を策定せよ」


  一瞬、会議室は静まり返った。



  彼は、何も知らずにこの世に降り立った。


  神の能力を携えて――

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