前編 上 神の存在、神の分身、神の子供
地球のすべての万物を創造した、創造主。
彼は形もなく、声もないが、すべての中に存在している。
万物は彼によって秩序を持ち、星辰は彼によって運行し、生命は彼によって誕生した。
彼は人類に一つの贈り物を授けた――
それは彼の子であり、彼の分身、あるいは彼そのものと言える存在だった。
空気が微かに震動し、まるで空間そのものが名状しがたい存在に怯えるかのようだった。
次の瞬間、赤ん坊用のバスケットが大統領執務室の中央に忽然と現れた。天から降ってきたかのように。
バスケットの中の赤ん坊は目を見開き、泣くこともなく、ただ澄み切った瞳でこの世界――地球――を見つめていた。
彼は創造主と同じ能力を持っていた。この能力は彼が地球に降り立ったことで、神が人類に与えた――
贈り物となった。
――
「大統領閣下……これは……」
室内では、背広姿の官僚と銃を携えた軍人たちが木製の会議卓を囲み、突然現れたバスケットに視線を集中させていた。
【神の贈り物】
この四文字が、命令のように、突然全員の脳裏に響き渡った。
「テロ攻撃か?」「誰が国家保安システムを突破した?」「こんなことあり得ない……」
「大統領閣下、下がってください!これは爆発物かもしれません!」
わずか数秒で、場は混乱に包まれた。慌てる声、驚く声、それぞれが異なる反応を示す。
その時、赤ん坊が泣いた。
その声は静寂を破り、ガラスのように澄んでいて、しかし計り知れないほどの響きを持っていた。
泣き声が上がった瞬間、赤ん坊の周囲の空気が明らかに変化した――微かな光が空気中で震え、朝もやのように彼の体から広がっていった。
部屋中の人々は息を止め、誰も動けず、誰も近づこうとしなかった。
その時、一つの足音が響いた。
軍靴でもなく、大統領の足音でもない。
大統領秘書――
室内で唯一の女性が、落ち着いた表情で、決然とした眼差しを向けながら歩み出た。
彼女は周囲の驚きと恐怖の視線を無視し、卓に近づくと、バスケットの中の赤ん坊を見下ろした。
「正気か?!」誰かが叫んだ。
「この子は普通じゃない!触るな!危険だ!」
しかし彼女は止まらず、まるでその声が聞こえないかのように。
両手を伸ばし、赤ん坊を優しく抱き上げた。
その瞬間、赤ん坊の泣き声はぴたりと止んだ。
空気中の光はさらに強くなり、目を開けていられないほどになった。
「私……」
秘書の声は震えていた。
目を見開き、額に汗を浮かべ、息遣いが荒くなっている。
「私……体が動かない……」
彼女の両手は見えない力に縛られたように固まり、全身が微動だにしなくなった。ただ、目だけが抑えきれない恐怖を表していた。
それは神の気配だった。
抗うことのできない力。
この日、神は人の世に降り立った。
人類に、一つの贈り物をもたらすために。
――
白い実験着を着た女性が、幾重ものセキュリティゲートを通り抜け、極秘施設の奥深くへと進んでいく。
白く冷たい照明の中、彼女のヒールの音と低く唸る機械音だけが廊下に響いていた。
「ノエル、おはよう」彼女は部屋の中に静かに声をかけた。
真っ白な部屋の中央に座っているのは、少年とも少女ともつかない存在――ノエルと呼ばれる子だった。
年齢:推定五歳。
性別:不明。
「ミア!」ノエルは声を聞くと、地面から飛び上がった。
しかし、彼の足は地面につかず、空中に浮かんだままだった。
「ダメ!」ミアは慌てて声を上げた。
彼はゆっくりと降り、人間のように歩いて近づいてきた。
「言ったでしょう?こんなことをしてはいけないって」
「ごめんなさい……」彼は頭を下げた。
「でも……」瞳を上げ、黒白くっきりとした目にミアの姿を映しながら。
「どうしてダメなの?ミアだってできるでしょう?」
彼は神の子でありながら、この世界のことを何も知らなかった。
いや――自分が神であることさえ、知らない。
(だから、絶対に気づかせてはいけない……)
ミアは表情を整え、落ち着いたが強い口調で言った。
「この世界には、この世界のルールがあるの。普通の人はそんなことはしないわ」
「うん……」ノエルは考え込むようにして、反論しなかった。
「さあ、今日の身体検査の時間よ」ミアは手招きした。
「はい!」彼は直前の話題などなかったかのように、すぐに走り寄った。
――
部屋の中では、機械音が響き渡っていた。
軍服を着て、仮面をつけた科学者たちが行き来し、データを記録している。
注射器がノエルの腕に刺さり、血液が採取される。
彼は透明な注射器の中を流れる自分の血を静かに見つめていた。
「どうして毎日身体検査をするの?」彼は尋ねた。
「あなたの健康を確認するためよ」ミアは慣れた手つきで血液サンプルを振った。
「それで……健康かどうか、わかるの?」
彼女の手が止まった。
(またか……)
彼が話し始めてから、ほぼ毎日のように似たような質問をしてくる――
しかし、決して同じ言い回しは使わない。
一日目:「身体の健康って何?」
二日目:「人間はどうして健康でいなければいけないの?」
三日目:「僕は……健康なのかな?」
……毎日違う。
彼が発見されてから、まだ一ヶ月も経っていない。
しかし、彼の外見と体格――もう五歳の子供のようだった。
「ええ、わかるわ」ミアは優しく答えた。
「次は身長を測りましょう」
「はい!」
データが表示された。
ミアは画面に表示された新しい報告書を見た。
(また……伸びている)
「ミア!今日は何して遊ぶ?」彼は子供らしい笑顔で聞いた。
「今日はダメよ」
「じゃあ……勉強?」
「それもできないの」
機器が片付けられ、スタッフが退出していく。
ミアも出ようとした。
「ミア……」ノエルは部屋の中央に立ち、彼女の背中を見ていた。
彼女は振り返り、微笑んだ。「ここで待っててね」
分厚い金属製のドアがゆっくりと閉じていく。
「今日……」
このかすかなつぶやきに、ミアははっと振り返った。
ノエルは彼女を見上げていた。
「今日……帰ってくる?」
――彼は、時間の概念を理解し始めていた。
ゴオォン……
ドアが閉まる音が部屋に響き渡り、静寂が戻った。
――
「また言葉が増えた」
別室のモニタールームでは、数十人のスーツ姿の男たちが画面を凝視していた。
あの真っ白な部屋の隅々までが監視されているが、ノエルにはそれが見えない。
「あの女、交換すべきだ」「リスクが高すぎる」
部屋には世界中のトップクラスの学者、政府高官、軍関係者が集まっていた。
「報告によれば、外界との接触がなくても成長を続けている」
「つまり、自発的に語彙と思考を発展させる能力がある」
「問題は――十日間、飲食なしで生きていることだ」
「だが身体データは……完・全・に・正・常!」
「それが正常だと言うのか?人間にそんなことがありえるか?」
「しかし、検査結果では、身体構造は五歳児と変わらない」
「彼の身体は普通の人間の身体だ……ということは――」
「人間も、あのような存在になれる可能性が……」
「いや、忘れるな。彼は『突然現れた』存在だ」
「もう人間扱いはやめろ!」
「……本当に解剖できないのか?」
「失敗したら、誰が責任を取る?」
「とにかく」最上位に座る男が口を開いた。
「次段階の接触計画を策定せよ」
一瞬、会議室は静まり返った。
彼は、何も知らずにこの世に降り立った。
神の能力を携えて――