マリッジブルーとサムシングブルー
なろうの大切なお友達の割烹を拝読して思い付いたお話です。
アジサイに彩られる季節は、空はくぐもり、まるで自分の心模様を映された様だ。
また、夫……
いいえ!
もうそう呼んではいけないんだ!
また、久幸さんの……悲しい夢を見てしまった。
「茉莉香の指輪も一緒に焼いてくれ」
カレの最期の言葉を……
こうやって何度も何度も
夢の中で目の当たりにする。
でも私にはできなかった。
本当はカレの指輪も着けていたかったけれども……
冷たくなった薬指から抜く事ができなくて……
変わり果てたカレそのものとして
骨壺に収めた。
だからせめて
「私の気持ちと同じ様に」と
結婚指輪は薬指に残し続けた。
そうやって生きていくつもりだったのに……
カレが亡くなって9年目に凪くんと出会い、
私は有り得ない事をしてしまう……
だから、悲しい夢から醒めた私は
「二夫に見える私は……ふしだら」
と天井に向かって呟き、枕に顔を埋める……
「こんな姿、凪くんには見せられないから
やはり結婚はしない方がいいんだ!」
いくら夜明けにこう決心しても
心弱い私は
寂しくて寂しくて
仕事先でいつも
凪くんを目の端に捕まえる。
そして……
上生菓子を創り出すカレの繊細な指使いに
じゅんとなってしまう
ふしだらな私
自己嫌悪……
「やっぱり気になっているんだね」
「えっ?!」
「今も左の薬指を見つめているから」
「これはその……今度、凪くんと指輪を見に行くんだから綺麗にしなきゃって……」
私の下手な言い訳に頭を振って
凪くんはその繊細な指で
私の薬指に残っている指輪跡を撫でる。
また、じゅんとしてしまうふしだらな私……
「僕が贈る指輪は右手に着ければいい。この指には久幸さんからの指輪を戻してあげて!」
ふしだらな私にはあまりにも優し過ぎるその言葉に……
私はさめざめと泣くしかなかった。
これも“マリッジブルー”と言うのだろうか……
こんな事を積み重ねて
今日、私はウェディングドレスを身に纏う。
久幸さんのお姉様が下さったのは“サムシングブルー”のアイリスの花束。
私は全然純潔ではないのだけど、
この花束を抱いてバージンロードを歩きます。
久幸さん、ごめんなさい。
あなたが遺してくれた指輪の跡は今日、隠されます。
それが私と言う人間の
歴史なのです。
おしまい
黒姉に負けず私も投稿いたしました!(*^^)v
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