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相互作用2

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 数分後、とある孤児院の門の前に魔法陣が現れ、ステイシー、アーロン、セオドアの三人が姿を現した。

「すごいわね、アーロン。瞬間移動魔法を使えるなんて」

「行ったことのある場所にしか行けませんけどね」

「それでも凄いよ。しかし、珍しいな。平民で魔法を使えるなんて」


 セオドアが珍しがるのも不思議ではない。この世界では、貴族の大部分が魔法を使えるが、平民で魔法を使える者は少ない。正確には、貴族が魔法を使えるのではなく、魔法を使う力のある者が貴族になったというべきかもしれないが。

「とにかく、行きましょう」

 そう言ってアーロンは歩き始めた。後ろを歩きながら、ステイシーは辺りを見渡す。くすんだ灰色の壁の建物に、よく手入れされた庭。情緒があって、思ったより敷地が広そうだ。


「あれ、お前アーロン?久しぶりだな」

「ああ、久しぶり。ポリー先生いる?」

「ああ、職員室にいるよ」

 孤児院での友達らしき子供と会話を交わすと、アーロンは職員室に向かった。

「先生、こんにちはー!」

 アーロンは、職員室のドアをノックした後、元気な声を出して中に入った。ステイシーとセオドアも後に続く。

「あら、アーロン、元気?」

 笑顔でそう言ったのは、長い銀髪を一つの三つ編みに纏めた美しい女性。年齢は四十代くらいだろうか。

「はい、元気です。ポリー先生はおかげんいかがですか?」

「今のところ大丈夫よ。……ところで、そちらの方は?」

「こちら、俺が働いているオールストン家のステイシーお嬢様。事情があって今は平民だけど。……それと、こちらはセオドア第一王子」

 アーロンが紹介すると、ポリーは慌てて頭を下げた。

「失礼致しました……!!私、この孤児院の職員として働いております、ポリー・アディソンと申します」

「そんなに畏まらないで下さい。僕はこの二人について来ただけですから」

 セオドアが笑顔で言った。


 それから四人は職員室にあるテーブルを囲んで、アーロン達がここを訪れた理由を説明した。

「そう……私の事を心配してくれたのね。ありがとう、アーロン」

 ポリーが笑顔で言うと、アーロンは照れ臭そうに目を逸らした。

「あの、薬を飲んで具合が悪くなったとの事でしたが、詳しい経緯をお話頂けないでしょうか」

 ステイシーが訪ねると、ポリーは簡潔に話し始めた。

 ポリーは五年前から血圧を下げる薬を飲んでいるが、この一~二か月程、薬を飲んだ数時間後に動悸がするようになったらしい。医師にも相談したが、原因がわからないという。


「医者には、数年間薬を飲み続けているのに最近になって副作用が出る可能性は低いと言われました。恐くて薬を飲むのをやめたかったんですけど、急に薬を止めるとまた血圧が上がるかもしれないと聞いたので飲むのをやめられなくて、困っていたんです」

「そうですか……」

 ステイシーは、考え込んだ。確かに、数年飲み続けているのに急に副作用が出る可能性は低い。しかし、動悸が出るタイミングを考えるとやはり薬が原因なのだろう。可能性は低いがゼロではない以上、薬の副作用なのだろうか。


「あの、よろしければお茶をどうぞ」

 ポリーが、ポットから紅茶を注ぎ、ティーカップを皆の前に置く。ティーカップの中には、スライスした柑橘系の果物が浮いている。

「あ、この果物、香りが良いですね。ウィンベリーフルーツですか?」

 紅茶を一口飲んだステイシーが聞く。

「ええ、そうです。ここの庭に木が生えてるんですよ」

 ポリーが笑顔で答えた。ウィンベリーフルーツとは、この世界のこの国でしか採れない果物である。果物として収穫するのなら、今の時期が一番良いはずだ。

 しばらく紅茶を飲んでいたステイシーは、ふと真剣な顔になり黙り込んだ。

「どうしたの、ステイシー?」

 セオドアが心配そうにステイシーの顔を覗き込む。ステイシーは、ポリーの方を見ると短く言った。

「アディソン先生、今飲んでいる薬を見せて頂けませんか?」


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