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相互作用1

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 ある日の昼、薬屋カヴァナーのドアが軽やかなベルの音と共に開かれた。

「こんにち……あら、アーロン」

 ステイシーが少し驚いた声を上げる。そこにいたのは、ベージュのシャツに黒いズボンを穿いた、私服のアーロンだった。

「こんにちは、お嬢様」

「ステイシーでいいわよ。私はもう平民なんだから。……それで、今日はどうしたの?仕事は休み?」

「呼び捨てにするわけにはいきません。今日は、お嬢様とカヴァナー先生に相談があって……」

 アーロンは、浮かない顔をして言った。


 数分後、ステイシー、アーロン、マージョリーの三人は、狭い待合室にある円卓を囲んでいた。

「実は、俺のいた孤児院の先生が病気で、毎日薬を飲んでいるんですが、最近その薬を飲んで少し時間が経つと具合が悪くなるみたいなんです。医者に診てもらっても原因が分からなくて……それで、お嬢様とカヴァナー先生に相談しようと思って……」

 アーロンが俯き加減に言った。アーロンは物心ついた時から孤児院で育ち、十二歳の時にオールストン家で働き始めたが、孤児院の先生を慕っており、今でも交流があるようだ。アーロンが先生を心配するのも当然だろう。

「わかったわ。医者じゃないから何が出来るかわからないけど、先生に会わせて頂戴」

 ステイシーが言うと、アーロンは目を輝かせた。

「ありがとうございます、お嬢様!」

「すぐ行っておやり。店番があるから私は行けないけど」

 マージョリーも穏やかな表情でステイシーを促した。

「では、早速……」


 アーロンが言いかけたところで、またドアの開く音がした。

「やあ、ステイ……シー……」

 店に入って来たのはセオドアだった。彼は笑顔で挨拶をしかけたが、ステイシーの方を見ると一瞬不機嫌な顔になった。彼女の両手を、アーロンの両手が包んでいたのである。

「……ステイシー、その少年はどなたかな?」

 セオドアが張り付けたような笑顔で聞く。

「殿下、こちらはオールストン家で働いているアーロンです。アーロン、こちらはセオドア第一王子よ」

 ステイシーがにこやかに紹介すると、セオドアはアーロンの方に手を伸ばした。

「やあ、よろしく、アーロン」

 そして力を込めてアーロンの手を握る。

「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。よろしくお願い致します、セオドア殿下」

 アーロンもセオドアの手を握り返す。二人の視線が交わり、しばらく沈黙が流れた。

「……アーロン、いくら親しいと言っても、婚約者でもない年頃の女性にむやみやたらと触れるのはどうかと思うよ」

「お気遣いありがとうございます。しかし、殿下もお忙しいでしょう。俺達に構わず城に戻られては?」

 再び沈黙が訪れ、アーロンとセオドアが睨み合う。前世で男性と付き合った経験のないステイシーは、何故この二人が険悪になっているのか分からず、オロオロするばかりだった。


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