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異国の技術1

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

よく晴れたある日、ステイシーは王城の広間にいた。目の前には、国王夫婦。隣には、セオドアがいる。四人だけがいる広間に緊張した空気が漂う。

「……で、セオドアはステイシーと婚約したい……と」

 ユージンが、真顔でセオドアに話し掛ける。

「はい、僕はステイシーと結婚したいと思っています」


 しばらく沈黙が流れた後、ユージンがステイシーの方を向いて言った。

「ステイシーは、それでいいのかな?」

「はい。私も……セオドア殿下と共に生きていきたいです」

 ステイシーが真剣な顔で答える。

「そうか……ならこちらから言う事は無いな。健康に問題ない第一王子が王族を抜けるなど前代未聞だが、高位貴族の説得を含めて私が何とかしよう。セオドア、ステイシーを大切にするんだぞ」

「はい」

 セオドアが、力強く応えた。


「そうだ、そう言えば、ステイシーに頼みたい事があったんだ」

「何でしょう、陛下」

 ユージンの言葉に、ステイシーが首を傾げる。

「実は……来月、隣国であるヴィッセン王国の第三王子がこの国に短期留学をしにいらっしゃるのだが、彼は薬学に興味を持っていてね。この国の薬学がどれくらい発展しているか知りたいそうなんだ。……それで、ステイシーに彼の話し相手になって欲しくてね」

「平民の私が隣国の第三王子のお相手をしてよろしいのでしょうか」

「構わない。ステイシーは元公爵令嬢でマナーも完璧だし、異国の言語や歴史の知識もある。それに、向こうの王子も身分は気にしない主義だと聞いている」

「承知致しました。第三王子のお相手を務めさせていただきます」

 ステイシーはそう言うと、優雅にカーテシーをした。


 そして数週間後、ステイシーは再び王城を訪れていた。文官に促され広間に入ると、国王夫妻とセオドア、そしてブレットとアーロンがいた。

「お久しぶりです、お嬢様」

「久しぶり、アーロン」

 二人共、穏やかな笑顔で挨拶を交わした。現在アーロンは宰相になるべく勉強を続けている。お互い忙しくなかなか会えなかったが、アーロンが元気そうで良かった。


 ステイシーは、ブレットの方を向くと挨拶した。

「ブレット殿下もお元気そうで良かったです。アニタ様のお加減はいかがですか?」

「ああ、アニタは今つわりが酷くて大事を取って部屋で安静にしているが、母子共に健康だそうだ」

「そうですか……私に出来る事があったらおっしゃって下さい」

「ありがとう」


 そんな事を話していると、広間に二人の人物が入って来た。一人は背が高く黒い短髪の騎士らしき男。もう一人は、小柄で栗色の長髪を後ろで縛った少年。白い上等な礼服を着ている。彼が第三王子のエルマー・ツヴァイクだろう。現在十六歳だが、飛び級で大学の薬学部に在籍し、優秀な成績を修めているらしい。

 異国から来た二人は、国王夫妻の前まで来ると、恭しく頭を下げた。


「お初にお目にかかります、国王陛下。私は、ヴィッセン王国の第三王子、エルマー・ツヴァイクと申します。本日よりお世話になります」

「ユージン・ウィンベリーと申します。エルマー殿が滞在されるのは今日から二週間でいらっしゃいますよね?困った事があれば何なりとお申し付け下さい」

「ありがとうございます」

 エルマーは、ニコリと綺麗な笑顔を見せた。


「エルマー殿は薬学に興味があるとの事。こちらにおりますステイシー・オールストンは薬学に精通しておりますので、薬学について何か質問がございましたら彼女にお聞き下さい」

 そう言って、ユージンはステイシーを手で指し示した。

「ステイシー・オールストンと申します。よろしくお願い致します」

「よろしくお願い致します。薬学の話を聞けるのが楽しみです」

 エルマーは笑顔でステイシーと握手を交わした。それからすぐにエルマーは文官に案内されて客室に向かった。その後姿を見ながら、ステイシーは彼と仲良くなれると良いなと思った。


 翌朝、ステイシーとセオドアは王城に併設された図書館にエルマーを案内した。護衛の騎士も一緒にいる。

「さすが王城の図書館ですね。薬学の専門書も沢山並んでいる」

 エルマーが感心したように本棚を眺める。

「そう言って頂けて良かった」

 セオドアが笑顔で応える。


 エルマーは、本棚から一冊本を取り出し、パラパラと捲り始めた。そして、内容を確認しながらステイシーに話し掛ける。

「そう言えば、こちらの国では注射剤の使用はどれ程普及しているんですか?」

「注射剤ですか?そうですね……王家のお抱え医師が治療に用いる事はありますけど、一般には普及していませんね」

 彼女の答えを聞くと、エルマーはつまらなさそうな顔をして呟いた。

「……何だ、その程度か」


 先程までニコニコしていたエルマーの豹変した態度にステイシーは戸惑った。確かに隣国では注射剤が普及していると聞いていたが、この世界で王族が注射剤の投薬を受けられるだけでも驚くべき事だ。

 しかし、エルマーは馬鹿にしたような笑顔でステイシーを見ると、もうその後彼女に話し掛ける事はなかった。


 それから数日間ステイシーとセオドアはエルマーや護衛の騎士と一緒に、街の博物館や劇場などを訪れたが、エルマーはステイシーの事を無視し続けた。セオドアとは仲良さそうに話しているのに。

 セオドアもエルマーの態度は気になっているようで、時折眉を顰めているが、隣国の王子に意見する事も出来ず、事態は好転しなかった。


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