表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/65

腰痛1

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 一包化の機械の試作品が出来てから数日経ったある日の昼、薬局のドアのベルが軽やかに鳴った。

「こんにちは……あ、セレストさん」

 店内に足を踏み入れたセレストは、笑顔でステイシーに声を掛けた。

「こんにちは、ステイシー。……話があるんだが、今いいか?」

「ええ、大丈夫ですよ」


 今、待合室に患者はいない。セレストは、待合室の椅子に座ると、困ったような顔でステイシーに言った。

「……先日、工場に一包化の機械の試作品を見に行ったろう?」

「はい。試作品とはいえ、とても良く出来ていて驚きました」

「そこの工場長が、腰痛で悩まされていてな」

「腰痛ですか……」

「ああ。それで、布に軟膏を塗り込んだ湿布を使っているんだが、いつもかぶれてしまうらしい」

「まあ……」

「それで、湿布を休み休み使ったりして様子を見ているそうなんだが、湿布を使わないと痛みが辛いらしくて、困っているそうだ。そこで、ステイシーに相談に乗ってもらえないかと思ってな」

「それはお困りですね……分かりました」

 そして、ステイシーはカウンターの奥にいるマージョリーの方を振り向いて言った。

「先生、工場に行ってもいいですか?」

「ああ、行っておいで」


 アーロンが城に滞在するようになったので、薬局のスタッフは二人だけ。以前より忙しいにも関わらず、マージョリーは快くステイシーを送り出してくれる。

「ありがとうございます、では行ってきます!」

 そう言って、ステイシーは薬局を後にした。


 それからしばらく馬車に揺られ、ステイシーとセレストは工場に到着した。工場は赤茶色のレンガ造りで、よく目立つ。

 中に入ると、工場の従業員達が明るい声で挨拶した。

「リンドバーグ会長、こんにちは!」

「お、この前見学にしたお嬢ちゃんじゃないか。よくあんな機械思いついたな」

 従業員達はざっくばらんとしていて、けれどもステイシー達が傷つくような事は言わない、優しい人達だ。


「こんにちは、ブラウンさん。一包化の機械の件ではお世話になってます」

「よお、ステイシー。今日も機械の試作品を見に来たのかい?」

「いえ、今日は、ブラウンさんが腰痛に悩まされているとお聞きしまして……」

 そう、腰痛に悩まされているのはこの工場長、ルイス・ブラウンである。


「俺の腰痛?……そういや、ステイシーは薬剤師だったか」

 白髪が目立つ六十代の工場長は、宙に視線を向けながら呟いた。

「はい。湿布の事で何かお役に立てればと……」

「……じゃあ、休憩室で話を聞いてもらおうかな」


 そして、ステイシー、セレスト、ルイスの三人は休憩室で話をする事にした。

「俺は数年前から腰痛に悩まされていてな。色々湿布を試してみたけど、この湿布が一番効くんだよ」

 そう言って、ルイスは手持ちの湿布をステイシー達に見せてくれた。白い布に白い軟膏が塗られている。

「かぶれないようにするには、毎日少しずつ貼る位置をずらした方が良いんですが……」

「それはもう実践してるんだよなあ……」

 ステイシーの言葉に、ルイスは溜息を吐いて応えた。


「ちなみに、その湿布の成分が記載された紙とか、説明書みたいなものはありますが?」

「ああ、エイミスファーマシーで薬を貰った時に渡されたな。……これだ、これ」

 ルイスは、側にあった鞄から一枚の紙を取り出した。ルイスから紙を受け取ったステイシーは、しばらくその説明書に目を通していたが、やがて顔を上げて言った。


「ブラウンさん、念の為聞いておきたいんですけど、湿布を貼った部位に直接日光が当たるなんて事は無いですよね……?」

 ルイスは、目をぱちくりさせながら答えた。

「今は暑いからな。たまにシャツを脱ぐ事があるから、腰に日光は当たってるな」


 それを聞くと、ステイシーは難しい顔をして言った。

「……ブラウンさん、この成分が含まれる湿布を貼った部位に直接日光が当たると、肌が赤くなったり発疹が出来たりする事があるんです。光線過敏症と言うのですが、もしかしたら、ブラウンさんのかぶれはそれが原因かもしれません」

「へえ……そう言えば、説明書をよく読んでなかったな」

「今後はよく読むようにして下さい……ブラウンさん、今はその湿布を使っていないんですか?」

「ああ、一昨日剝がしてから使ってない」

「なら、その湿布を使うのはそのまま中止して下さい。剥がした後も光線過敏症の反応が出る可能性があるので、数か月は日光に当たる場所でシャツを脱がないようにして下さい。暑くてどうしてもシャツを脱ぎたいのであれが、布を巻いたりして患部を保護して下さい」

「そうなのか……分かった。じゃあ、俺の場合腰痛には違う成分の湿布を使った方が良いんだな」

「はい。それでもまたかぶれのような症状が出たら、医師に相談して下さい」

「そうするよ。ありがとう、ステイシー」

 るいすは、穏やかな顔で微笑んだ。


「あ、そうだ。もう一度一包化の機械の試作品を見ていくか?」

 話が終わった後、ルイスが思い出したように言った。一包化の機械の試作品は完成しており、今は実用化に向けて色々と調整している最中らしい。

「はい、拝見します」

 ステイシーは嬉しそうに答えると、セレストと共に一包化の機械のある場所へと移動した。


よろしければ、ブックマークやいいね等の評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ