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アニタの妊娠3

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 その数日後、王城でささやかな晩餐会が催され、ステイシー、マージョリー、アーロンが招待された。アニタの相談に乗った礼らしい。

 広い食堂で窓の近くの席に座ったステイシーは、辺りを見渡した。長い木製のテーブルには白くて清潔なテーブルクロスが掛けられており、部屋の隅には品の良い調度品が置かれている。

「……俺、マナーを守って食事をする自信がありません」

 右隣に座ったアーロンが、緊張した声で言った。

「落ち着いて、アーロン。オールストン家で働いていた時、あなたも食事のマナーを勉強したでしょう?」

 ステイシーは、苦笑してアーロンを落ち着かせる。

「そう言えば、あなた、数日前王城に呼ばれていたわね。何の用だったの?」

 ステイシーが聞くと、アーロンは真顔になって黙り込んだ。

「……言いたくなければ言わなくて良いわ。何か相談したい事があったら言ってね」

 ステイシーは、それ以上何も言わなかった。


 間もなく国王夫妻、セオドア、ブレット、アニタが食堂に現れた。

「薬屋カヴァナーの皆さん、ようこそいらっしゃいました。本日はゆっくりしていって下さい」

 国王のユージンが挨拶をし、食事が始まると、ユージンがマージョリーに話し掛けた。

「カヴァナーさん、あなたは以前城で薬剤師として働いていらっしゃいましたよね?私はまだ子供でしたが、あなたの事は覚えています。薬が苦くて飲めないと騒いでいた私にもきちんと向き合ってくれた事、感謝しています」

「いえ、そんな……三十年前は、あなたの弟のヘンリー様にご迷惑をおかけしましたし……

「でも、結局弟は無事だったわけですし……まあ、二十八歳の時に病気で亡くなりましたが」

 ユージンは、目を伏せながら言った。


「アニタ、食欲が無いのか?無理して食べなくていい。食べられるものがあったら言ってくれ」

「ありがとうございます、ブレット様……」

 ブレットとアニタがそんな会話をするのが聞こえる。恐らくアニタには悪阻があるのだろう。ブレットがアニタを労わる様子を見て、ステイシーは少し羨ましくなった。そんなステイシーの様子を、セオドアがじっと見ていた。


 食事が終わると、皆食後のコーヒーを飲みながら雑談を始めた。ステイシーがコーヒーを一口飲むと、セオドアがステイシーに近付いて来た。

「ステイシー、ちょっと話があるんだけど、いいかな……?」

「……ええ、構いませんよ……?」

 ステイシーは、セオドアの後をついて城の庭に出た。


「ステイシー、君……もしかして、ブレットとアニタを羨ましく思ったりしてる?」

 庭に出るなり、セオドアが聞いてきた。ステイシーは迷ったが、正直に答える事にした。

「……はい。私は今の生活のままでも十分幸せですが、愛する方と共に生きていけたらと……どうやら私は、欲張りになってしまったようです」


 それを聞くと、セオドアはステイシーに近付き、両手でしっかりと彼女の手を握って言った。

「ステイシー、やっぱり僕と結婚しよう!僕が君を幸せにしたい!」

 ステイシーは、困惑しながらも応えた。

「……以前も申し上げましたが、身分が……」

「君が公爵家に戻り、僕が公爵家に婿に入ればいい。君の学園での虐めが嘘だったなんて、いつでも証明出来るんだから」

「ええっ!!」

「王子の妻が薬剤師として働くのは無理でも、公爵夫人が薬剤師として働くのなら何とかなるよ。僕が君をフォローするし、時代の流れも変わってきているからね」

「セオドア殿下が公爵家に入るのなら、王位は誰が継ぐのですか!?ブレット殿下ですか?あの方は民の事を考えて下さる方だとは思いますが、バ……思慮深くないところがありますので、せめで有能な補佐がいなければ……」

「その点は大丈夫です」


 不意に第三者の声が聞こえた。振り返ると、そこにいたのはアーロンだった。

「……アーロン、聞いてたの?……大丈夫って、どういう事?」

 ステイシーが聞くと、アーロンは一呼吸置いた後、ゆっくりと口を開いた。

「……実は僕、王族の血を引いているみたいなんです」


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