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テレンス・ヘイワード

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 ステイシーはテレンスを応接室に案内し、アーロンと三人だけになると、申し訳なさそうに言った。

「申し訳ございません、カヴァナーは昨日から外出しておりまして、今どこにいるか私もわからないのです」

「そうですか……」

 テレンスは、目を伏せながら呟いた。

「あの、差し支えなければ、どういった用件か教えて頂けないでしょうか」

 ステイシーが聞くと、テレンスはお茶を一口飲んだ後話し始めた。

「新聞で、『薬屋カヴァナー』の醜聞を目にしました。実は私は、カヴァナー先生と疎遠になった後も手紙のやり取りをしておりまして。カヴァナー先生が薬局で楽しそうに働いているのを存じておりましたので、醜聞を何とかしたいと思い、相談しに伺ったのです」

「そうでしたか……」

「ステイシー様の事も手紙に書いてありました。患者さんと真摯に向き合う、立派な薬剤師だと……」

「先生がそんな事を……」


 テレンスはティーカップを置くと、ステイシーに頭を下げた。

「申し訳ございません。三十年前の事件のせいでステイシー様やヒューズさんにまでご迷惑をおかけして……」

 ステイシーは慌てて言った。

「頭を上げて下さい!……どうしてヘイワード様が謝るのです?」

 テレンスは、唇を噛み締めながら言った。

「……三十年前、ヘンリー様に間違った薬を飲ませたのは、カヴァナー先生ではなく……私なんです」

「ええっ!!」


 三十年前、あのバタバタした日、ヘンリー第二王子の担当になったのはマージョリーではなくテレンスだった。

 ヘンリー第二王子に正しい薬を飲ませた後、マージョリーとテレンスは話し合った。

「……テレンス、ヘンリー殿下の担当になったのは私という事にする」

「そんな!落ち度のない先生に責任を押し付けるわけには……」

「それでも、上司である以上責任は私にある。……それに、あんたはまだ若く優秀だ。あんたの将来を潰すわけにはいかない」

 マージョリーは、全く引き下がる気配を見せなかった。テレンスは、罪悪感に苛まれながらも、頷いた。

「……承知致しました。でも、責任を負った事で困った事になったら、いつでも相談して下さい。私に出来る事なら何でもします」

「……ありがとう」

 そして、マージョリーはヘンリー殿下の担当をしたのがテレンスだと知っている医師や一部の侍女に口止めをして、自分が全ての責任を負う事にした。


「そうだったんですか……」

 話を聞き終わると、ステイシーは目を伏せて呟いた。

「それから私はカヴァナー先生の代わりにお抱え薬剤師にならないかとお誘いを受けましたが、罪悪感もあってお断りしました。その後私は田舎で薬剤師として働き始めましたが、三十年前の事を忘れた事はありません」

「それで今回、カヴァナー先生の力になろうと思われたんですね……」

 テレンスは、ゆっくりと頷いた。


「……でも、肝心のカヴァナー先生の居場所が分らないんじゃどうしようもありませんね。先生が不在のまま名誉を回復するのは難しいでしょうし……」

 アーロンが、考え込むようにして言った。

「そうね……先生、どこに行ったのかしら……」


 ステイシーが腕組みをすると、また玄関のドアが叩かれる音がした。しばらくすると、メイドが申し訳なさそうに応接室に入って来た。

「あの……お嬢様……来客中大変申し訳ないのですが、セオドア殿下が、緊急の用があるとおっしゃっておられるのですが……」

「セオドア殿下が!?」


 ステイシーは、テレンスに非礼を詫びると、すぐに玄関に向かった。

「セオドア殿下、どうなさったんですか!?」

 ステイシーの姿を見ると、セオドアは切迫した様子で言った。

「ステイシー、これを見て!!」


 セオドアの手には、新聞が握られていた。彼から新聞を受け取ると、ステイシーは素早く目を通す。そして、目を見開いた。そこには、こう書かれていた。


『エイミスファーマシー、薬屋カヴァナーを買収か』


 そして、写真にはエイミスに出迎えながらエイミスファーマシーのビルに入るマージョリーの姿が写っていた。


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