マージョリーの思い出4
この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。
あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。
そして現在。マージョリーは、ステイシーの横顔を見ながら思った。この子は、知識や技術だけでなく患者との向き合い方も立派な薬剤師だ。自分の醜聞のせいでこの子の将来が閉ざされる事はあってはならない。自分が何とかしなければ……。
翌朝、ステイシーが目覚めて食堂に入ると、アーロンが配膳の手伝いをしていた。
「おはよう、アーロン」
「おはようございます、お嬢様」
ステイシーは、キョロキョロと辺りを見回した。
「カヴァナー先生は?」
マージョリーは普段早起きで、オールストン家に来てからもステイシーより早く食堂に来て配膳を手伝っている。それが今日は見当たらない。
「先生なら、薬局に忘れ物をしたとか言って薬局に戻って行かれましたよ」
「ええっ、どんな嫌がらせをされるのか分からないのに、薬局に戻ったの!?」
「俺も一人で薬局に戻るのは危ないって言ったんですけど、こっそり裏口から入るから大丈夫と言って……。どうしても一人で戻りたそうだったので、俺も強く言えなくて……」
「そう……でも心配ね。後で薬局に行きましょう」
「はい」
朝食が終わると、ステイシーとアーロンは薬局に戻った。やっぱりと言うべきか、薬局の壁には広い範囲で落書きがされていた。裏口から店内に入ると、ステイシーは薄暗い店内に向かって声を掛ける。
「カヴァナーせんせーい、いらっしゃいますかー!?」
返事は無い。人の気配すら無い。
「……もう薬局での用事は終わって帰ったんですかね……?」
「そうだと良いんだけど……」
ステイシーは、不安そうな顔で呟いた。
それから二人はオールストン家に戻ったが、マージョリーは戻ってきていなかった。そして、夜になっても、マージョリーがオールストン家の門を潜ることは無かった。
「おはよう……」
翌朝、ステイシーは食堂に顔を出すと、暗い声で挨拶した。目の下には隈が出来ている。マージョリーの事が心配で仕方ないのだ。
「おはようございます、お嬢様。……眠れなかったんですか?」
「ええ……」
ステイシーはアーロンの言葉に頷くと、椅子に座り、黙々と食事をした。
食事を終えて新聞を読むと、相変わらず『薬屋カヴァナー』の醜聞が目に付く。ステイシーが溜息を吐くと、玄関のドアが叩かれる音がした。しばらくして、食堂に入って来たメイドがステイシーに告げた。
「あの、お嬢様。カヴァナー先生にお会いしたいという方がいらしているのですが……」
「……もしかして、またエイミスファーマシーの方?」
「いえ、違います。テレンス・ヘイワードとおっしゃる方で、カヴァナー先生の助手だったという事なのですが……」
その名を聞いて、ステイシーとアーロンは顔を見合わせた。
「私が行くわ!」
そう言って、ステイシーは玄関に走って行った。
玄関には、一人の中年男性がいた。白髪交じりのウェーブがかった黒髪。品のある佇まい。彼は、ステイシーに気付くと帽子を取って挨拶した。
「もしかして、ステイシー・オールストン様でいらっしゃいますか?私、マージョリー・カヴァナーと共に働いておりました、テレンス・ヘイワードと申します」
よろしければ、ブックマークやいいね等の評価をお願い致します。




