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夜会2

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 一曲目が終わり、ステイシーとセオドアが食事をするスペースに戻ろうとすると、一人の青年が声を掛けてきた。

「あの……ステイシー・オールストン様でいらっしゃいますよね。少しお時間よろしいでしょうか?」

 振り向くと、肩くらいまで伸ばした赤毛を後ろで縛った青年が笑顔で微笑んでいた。青年は、続けて自己紹介する。

「私、エイミスファーマシーで薬剤師として働いております、ハーマン・ヤングと申します。以後お見知りおきを」

 そういえば、ドラゴン騒ぎの日、エイミス氏と赤毛の青年が話していたとセレストが言っていた。


「ああ、エイミスファーマシーの……。ステイシー・オールストンです。よろしくお願い致します」

 ステイシーが頭を下げると、ハーマンは遠慮がちに言った。

「あの……突然で申し訳ないのですが、二曲目を私と踊って頂けないでしょうか」

「え、私とですか?」

 ステイシーが目を丸くすると、ハーマンは言葉を続けた。

「ええ、あなたのような美しい女性と踊りたいと思って……というのは建前で、本当は社長のエイミスに、あなたと親交を深めるよう言われたんですけどね」

 ハーマンは苦笑して言った。正直に事情を言うところに誠実さを感じる。

「……私で良ければ、お願い致します」

 ステイシーがそう言うと、ハーマンはホッとした顔でステイシーに手を差し出して言った。

「こちらこそ、よろしくお願い致します」


 ハーマンは、男爵家の出身なだけあり、ダンスが上手かった。ステイシーは、ふと疑問に思い尋ねた。

「あの…ヤング様は、男爵家の方なのに何故市井で薬剤師をなさっていらっしゃるのですか?」

 ハーマンは、苦笑して答えた。

「俺は、男爵家の三男で家を継ぐ必要は無いですし、貴族同士の腹の探り合いとかが苦手で……それで、父親に頼んで薬剤師の仕事をさせてもらっているんです」

「そうだったんですか……」

 ステイシーとは事情が違うが、貴族社会に染まっていないところは親近感が湧く。エイミス氏は信用できない人物という話だったが、ハーマンとは今後も仲良くしたいと思った。


 ダンスが終わって食事をするスペースに戻ると、セオドアが少し不機嫌そうな顔をしていた。

「おかえり、ステイシー。……ヤング氏と踊っていた時、楽しそうだったね」

「え、ええ……薬剤師同士ですから、話が合うのかもしれませんね」

「……ヤング氏の事、好きになった?」

 突然の問いに、ステイシーは目を丸くした。

「い、いえ、少なくとも、恋愛感情ではありません」

「そう……」

 しばらく黙った後、セオドアは再び口を開いた。

「ねえ、ステイシー……もし僕が君と結婚したいって言ったら、結婚してくれる?」

「え……」


 ステイシーは、セオドアの言葉を心の中で反芻した。セオドアと結婚出来たら、どんなに幸せだろう。でも……。

「私は、殿下と結婚出来ません……。殿下は第一王子ですし、私は平民です。身分差があり過ぎます。それに、私は、薬剤師として仕事をするのが好きです。貴族籍に戻るつもりはありません」

「……わかった」

 セオドアは、少し寂しそうな笑顔で頷いた。そして、続けて言った。

「でも、もう少し時間が欲しい。僕と結婚しても君が薬剤師として働ける道を探したいんだ。だから……せめてあと半年、僕以外の男の元に行かないでくれないか」

 ステイシーは、笑顔で応えた。

「はい……お待ちしております」


 夜会が終わり、ステイシーは馬車で薬局に戻った。セオドアが一緒に乗って送ってくれたが、道中一言も彼と話す事はなかった。店内に入ると、ステイシーは足音を立てないように自室に入った。今はもう夜中。マージョリーやアーロンは寝ている。


 自室に入るなり、ステイシーはベッドに身体を預けた。そして、今日の事をまた思い出す。はっきり告白されたわけでは無いが、あんな事を言うという事は、セオドアは自分の事を好いていてくれているのだろう。うぬぼれでは無いと思う。

 ……いつか、セオドアと結ばれる日が来るのだろうか。


 そんな事を考えながら、いつの間にはステイシーは眠りに就いていた。


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