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飲めない理由3

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 三人が会場となる王城の庭に足を踏み入れると、早速マデリンが声を掛けてきた。

「ああ、セオドア、来たのね。……ステイシー、久しぶり」

「王妃殿下、お久しぶりです」

 ステイシーは、華麗にカーテシーを披露する。ブレットの婚約者だったステイシーは、当然マデリンと会った事がある。昔から美しい女性だったが、今もその美しさは衰えていない。銀髪に緑色の瞳は、セオドアと親子関係にある事を窺わせる。


「聞いたわよ。あなた、有能な薬剤師なんですって?ティナの事、よろしくね。……まあ、私の息子があなたを平民落ちさせたのにこんな事頼むのも、なんだか気が引けるけど……」

「気にする必要はございません。本日は、参加を許して下さりありがとうございます。お役に立てるよう努力致します」

 マデリンも、本気でステイシーがアニタを虐めたと信じているわけでは無い。だが、アニタの訴えを信じる高位貴族の令息が多く、訴えを無視できなかったのだ。


 ステイシーがマデリンにアーロンを紹介していると、庭に一人の女性が現れた。

「あら、皆様もう集まっていらしたのね」

 そう言ったのは、茶色い髪を結い上げた四十代くらいの女性。彼女がティナ・オリバーなのだろう。少しふくよかな体型ではあるが、不摂生をしているようには見えない。

「初めまして、セオドア殿下の友人のステイシー・オールストンと申します」

 ステイシーが挨拶をすると、ティナは目を見開いて言った。

「オールストンというと、ブレット殿下の婚約者だった……随分セオドア殿下と仲がよろしいんですね」

「ステイシーの悪い噂も耳に入るかとは思いますが、彼女は何も悪い事はしていませんので」

 すかさずセオドアがフォローしてくれる。


「そうでしたか……ティナ・オリバーと申します。よろしくお願い致します」

 ティナは、笑顔でステイシーを見つめた。そして、アーロンにも目を向ける。

「そちらの方もセオドア殿下の御友人でいらっしゃいますか?」

「はい、アーロン・ヒューズと申します。本日はよろしくお願い致します」

 本心では全く友人と思っていないアーロンが、笑顔を引きつらせて言った。


 お茶会が始まり、楽しい時間が流れた。

「まあ、ティナ様は、領地経営のお手伝いをされていらっしゃるのですか?」

 ステイシーが目を丸くして聞くと、ティナは微笑んで言った。

「ええ、帳簿の整理とか、予算の振り分けを考えるのが好きなの」

 珍しい。貴族の女性の仕事は、家の事を取り仕切ったり社交をする事と考えられており、自ら領地経営に関わる事はほとんど無い。ティナが領地経営の仕事を手伝う事が出来ているのなら、彼女が認知症である可能性は低そうだ。


「でしたら、お忙しいでしょう。食事はきちんと取っていらっしゃるのですか?」

 ステイシーが聞いた。食事の時間が不規則だと、薬を飲むのも忘れがちになるかもしれない。

「ええ、食事は毎日ほぼ同じ時間に取れています。御心配ありがとう」

 ティナが笑った。


 飲み忘れの原因は生活スタイルでもなさそうだ。どういう事何だろう?ステイシーが考え込んでいると、お茶のお代わりを注ごうとした若いメイドが声を上げた。

「きゃっ!!」

 見ると、アーロンのカップにお茶を注ごうとして、テーブルに零してしまったらしい。アーロンの白いシャツの袖が汚れる。

「も、申し訳ございません!」

 メイドが慌てて謝る。

「ああ、気にしないで下さい。安物のシャツですし、濡れた範囲が広くないので袖をまくれば目立ちませんよ」


 アーロンが笑って腕まくりをする。アーロンの左腕のほくろを見たティナが、一瞬目を丸くする。そして、アーロンの黒髪と黄色い瞳をじっと見つめた。

「あの……ティナ様、何か?」

 視線に気付いたアーロンが問い掛ける。

「いいえ、何でもないのよ。気にしないで」

 ティナは、ゆるゆると首を振った。


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