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お薬手帳4

この話に出て来る医療の知識は、あくまで異世界のものです。皆様は、現実の医療の常識に従って行動して下さい。

あと、医師など医療従事者のいう事に従って下さい。

 しばらくして、軍の応援部隊が到着し、魔法によってドラゴンは退治された。避難民も皆無事に他の教会に移っていった。

今、壊れた教会の手前にある庭には、薬局のメンバー、セオドア、セレストの五人がいる。セレストはマージョリーやアーロンとは初対面なので、お互い自己紹介をしていた。


「それにしても、リンドバーグ会長の水魔法、凄かったですね。ドラゴンの噴いた火を完璧に防いでいて……本当に、助かりました」

 ステイシーが、深々と頭を下げる。

「礼には及ばない。私は、ボランティア活動をしてクロウ商会のイメージを上げようとしていただけだからな。それと、私のことは『セレスト』と呼んでいいぞ」

 セレストは、凛々しいながらも優しさを感じさせる笑顔を見せた。


「では、セレストさんと呼ばせて頂きます。……それにしても、私の周りには貴族ではないのに魔法を使える方が多いですね」

 ステイシーが腕組みをしながら言うと、セオドアが苦笑した。

「違うよ、ステイシー。リンドバーグ会長は今でこそ商人だけど、元は貴族なんだ。それも、現王である僕の父上と、はとこの関係」

「……ええええっ!!」

 ステイシーが、驚いてセレストに向き直る。


「昔から、どうも淑女の振る舞いをするのが苦手でな。夜会やお茶会も本当は好きじゃない。周りには変わり者扱いされたが、商人になって良かったよ」

 セレストがそう言うのを、ステイシーはポカンとした顔で見ていた。

「……まあ、平民ながら魔法を使えるカヴァナー先生やアーロンが例外なのは変わりないけど」

 セオドアは、マージョリーとアーロンを交互に見て言った。


「ああ、そうだ。オールストンさんに言っておきたい事があったんだ」

 セレストが、思い出したようにステイシーを見た。

「ステイシーでよろしいですよ、セレストさん。……それで、言っておきたい事というのは?」

 セレストは、急に真剣な顔になった。

「その前に確認したいんだが、オールス……ステイシーは、ロードリック・エイミスと知り合いなのか?」

 ステイシーは、先程見た黒い口髭の男の顔を思い浮かべた。

「はい、先程知り合ったばかりですが、それが何か……?」

「実は、私は以前からあの男と付き合いがあってな。クロウ商会で入手した薬品をエイミスファーマシーに卸したりしているんだが……あの男は信用できない」


 セレストの話によると、エイミスには悪い噂があるらしい。自分の薬局の売り上げを上げる為に、他の薬局に嫌がらせをしているとの事だ。

 それだけではなく、エイミスはクロウ商会から購入した医療器具が破損していたと難癖をつけ、賠償金をせしめようともしていたらしい。

「その時は、運搬の過程をしっかり記録した証明書を作成していたから事なきを得たが……一歩間違えれば大損害を被るところだった」

 セレストが、忌々しげに言う。

「そうだったんですか……」

「『薬屋カヴァナー』も他人事じゃないぞ」

「え?」


 ドラゴンの騒動が起きる少し前、セレストがボランティア活動をする為に教会に入ると、庭に見知った姿を見かけた。エイミスだ。

 エイミスは、側にいる二十代くらいの男性に真剣な顔で何かを話していた。セレストが気付かれないようそっと近付くと、どうやら『薬屋カヴァナー』について話しているらしい。

「あのステイシーとかいう薬剤師が持っていたお薬手帳、絶対に売れる!今の内に彼女を丸め込んで、販売を独占する権利を手に入れたい。お前、顔は良いんだから、彼女に色目を使って何とか契約書にサインさせろ!」


 話しかけられた赤い髪の青年は、ヘラヘラしながらも困った様子で言った。

「そんなの無理ですよー。先程彼女の姿を遠くから拝見しましたけど、セオドア殿下と一緒にいるじゃないですか。彼女、絶対あの方に惚れてますよ」

「情けない事言うな。お前、私の部下だろう。何とかしろ!」

 青年は、溜め息を吐くと、投げやりに言った。

「……今度、王城で商人も交えた夜会がありますよね。俺は一応男爵家の血筋なので、参加させてもらいます。ステイシー様も参加すると思いますので、声を掛けてみますよ。でも、期待しないで下さいね」

「うん、頼んだぞ」

 そう言うと、エイミスは背を向けてその場を後にした。


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