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庭にできた異世界で丸儲け。社畜をやめたい俺が、気づいたらスキルで現実でも成り上がっていた  作者: k-ing☆書籍発売中
第二区画

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98.微笑みのハイエナ

 俺は急いで追いかけると、桃乃はオークに囲まれていた。桃乃も魔法を唱えたいが、すぐに発動できないのが難点だ。


「グヒヒヒイィィ!」


 オークも桃乃を殺すわけでもなく、ただ興奮しているようだ。


 ここまで来たら魔物というよりは、ただの獣にしか見えない。ゴブリンを初めて見た時も似た様なもので魔物特有の性質なのだろう。


 まだまだ距離もあり、間に合わないと思った俺はアイテムを開いた。


「お前らはこれでもくらっとけー!」


 アイテムからトレントの実を取り出すと、オークに向かって投げつけた。


 さっき適当に投げたトレントの実でオークは死んでいた。きっと殺傷能力はあるはずだ。


 投げたトレントの実は風を切るように、勢いよくオークの頭に当たる。


 しかし、当たった瞬間に頭が弾け飛んだ。


 新しい顔よ。それ!


 と有名なパン工場のおばさんが頭を投げる勢いを十倍ぐらいにした感じだろう。


「えっ……」


 あまりの状況に俺は立ち止まり、桃乃も魔法を唱えるのを忘れている。


 すぐに気を取り直し、もう一度トレントの実をアイテムから取り出した。


「次もいくぜ!」


 もう一度大きく腕を振り上げてトレントの実を投げようとした。だが、このタイミングで足元からサンドワームが出てきたのだ。


 流石にタイミングが悪すぎる。


「あっ、やべっ!?」


 俺はその場で姿勢を崩し、トレントの実は狙ったところとは別のところへ飛んでいく。


 そう、桃乃に向かって飛んでいってしまった。


鉄壁(プロテクション)


 桃乃は咄嗟に自身に魔法を唱えると、そのままトレントの実は桃乃に衝突し跳ね返る。


 その勢いは収まらずオークの腕を貫く。


 桃乃の新しい魔法"鉄壁(プロテクション)"が強すぎる。


「先輩! 殺す気ですか!」


 桃乃は遠くから叫んでいた。さすがに一瞬で頭を飛ばす実がこっちに飛んできたら恐怖しかないだろう。


「あー、すまんな」


 すぐにサンドワームを倒すと、痛みで悶えているオークの首を切り落とす。


「先輩立てないです」


 俺は桃乃の手を持ち、立ち上がらせようとするが全くびくともしなかった。


 新しい魔法は体の耐久性を上げるが、その分体積が重くなり効果が切れるまで、自分では動きにくいらしい。


 まさに"鉄壁"という名前の魔法なんだろう。そのことを知らない俺は必死に桃乃を立たせようと引っ張る。すると桃乃の体は急に軽くなった。


「おおおおっととと」


 勢いよく引き込みすぎて、俺はそのまま後ろに倒れてしまった。


「いった……」


 目を開けると上には桃乃が乗っていた。どこか俺の体は熱くなり全身がゾクゾクとしている。


「桃乃……」


「先輩、顔が赤いですよ。ちょっと服脱がしますね」


 えっ、これってまさかの展開ですか……?


 俺は桃乃に服を脱がされ剥き出しの状態された。


 こんな砂漠の真ん中で行為を致す人は世の中にいないだろう。


 俺の上で桃乃がなにか話していたが、だんだんと意識が薄くなっていく。


「先輩ー! えっ、まさか……」


 ああ、ものすごく開放的で涼しい。体を優しく包む冷たさに俺は少しずつ意識が戻ってきていた。


「大丈夫ですか?」


「ああ」


 体はなぜかべちゃべちゃに濡れていた。ぐったりとした体を起こそうとするが、体が固まったように重たい。


 立てないのは鉄壁の魔法でもかけたのだろうか。


「先輩、ちょっと休みましょうか」


 桃乃が魔法をかけて重たくなったと思っていたが、実はそうではなかったらしい。


 俺はあまりの暑さに"熱中症(・・・)"になっていた。





 意識が朦朧(もうろう)とする中、集落に戻ると、桃乃は俺を置いていきどこかへ向かった。


 徐々に体の熱も収まり、意識がはっきりしてくる。回復ポーションを飲んだことで熱中症はいつのまにか治っていた。


 いつ回復ポーションを飲んだかはあまり覚えていないが、隣に空瓶が置いてあったから桃乃が飲ませたのだろう。


 しばらくすると桃乃の手にはあいつがいた。


 俺は立ち上がり、装備の武器欄から魔刀の鋸を取り出した。


「えっ……先輩!? ちょちょ待って!」


 容赦なく桃乃に向かって魔刀の鋸を振りかぶった。あいつのせいで大変な目にあったんだ。


「なんで逃げるんだ」


「いきなり襲ってきたら逃げますよ」


「いいから早くそいつを渡せ!」


「自分が好かれていないからって殺そうとするのはおかしいでしょ。ねぇ、ベン(・・)?」


 どうやら桃乃はあいつに名前をつけてしまったらしい。名前を愛着が出て殺すわけにはいかなくなる。


 やつは俺の顔を見てにやりと笑っていた。そこが安全だと本能的に分かっているのだろう。


 桃乃は集落に戻ってから腕の中でスカベンナーを抱きかかえ、ずっと優しく撫でていたそうだ。


 またそんなに撫でたらどうなるのか、俺はもう知ったことか。


 当の本人が良ければそれでいいだろう。ただ、そいつの匂いのせいで、オークに襲われたのを知らないのが今の桃乃は救いだった。

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