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庭にできた異世界で丸儲け。社畜をやめたい俺が、気づいたらスキルで現実でも成り上がっていた  作者: k-ing☆書籍発売中
第一区画

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78.戦いの後

 俺は桃乃とクイーンデスキラーアントを倒した余韻に浸っていた。


 正確に言うとまだ帰れないのだ。


「先輩、入り口が開きそうにないですよ」


 桃乃は異世界の出入り口である穴に手で触れていた。通ろうと思っても透明な壁に押し返されるのだ。


「まだクエストクリアしていないのか」


 クエストの依頼はドリアードが間に入ったためか、元の依頼がなんだったのかもわかっていない。


 どうすることもできず俺達は立ち尽くしている状態だ。


「とりあえず時間が無くなるまで魔物を倒しますか?」


 まだ制限時間は6時間以上残っていた。


「向こうから攻めてきたら倒す程度でいいか」


 前の俺であればすぐに倒しに行っていたが、今の状態では倒す気になれなかった。


 クイーンデスキラーアントの心を覗いた時に感じた記憶がストップをかけている。


 魔物はそもそもどういう存在なのか。そして、魔物1体ずつに何かしらの記憶があるのではないかと思うようになっていた。


 ひょっとしたら倒したゴブリンにも色々な記憶、家族との思い出があるのかもしれない。


 桃乃に話をしてみたが、映像なのか感情移入なのかわからない現象は俺だけが見えていたようだ。


 "何か薬物をやってますか"と本気で心配されたが決して何もやってない。


 それにしても先輩に薬物をやっているか、確認する桃乃も色んな意味で心配になる。俺を薬物やるようなやつに見えているのだろうか。


「じゃあ、せっかくなので散歩しましょうよ!」


 俺の気持ちをわかっているのか、桃乃は気分転換に散歩を勧めてきた。


 散歩にしては命がけだ。


 それでも散歩という言葉に反応して、遠くから勢いよく近づいて来る存在がいた。


「ガウ!」


 この鳴き声はコボルト達だ。若干怪我をしているコボルトもいるが、どうやらみんな元気そうだ。


 そんなコボルト達を桃乃は治療しながら何かを伝えていた。


「ガウ!」


「じゃあ、お願いね」


 どうやら何かを依頼したようだ。狂犬病の治療から桃乃も何か称号をもらったのか、意思疎通ができるようになっていた。


 歩き始めるとコボルト達は一定の距離を保ち、俺達を中心に広がっていた。





「先輩! これ見てくださいよー!」


 桃乃は奥の瓦礫から何かを取り出してきた。


「○EONの看板がありますよ」


 桃乃は鉄筋コンクリートの建物からぼろぼろになった看板を持っていた。そこには○EON(・・・・)と書かれていた。


 ○EONとはみんなが知っている有名なモールショッピングだ。


 ちなみに日本の株だから100株単位で買うことになるが、日本株の中では株主優待がオススメとも言われている。


「でも、異世界にも○EONってあるんですね」


 確かに桃乃に言われたらおかしいと感じた。○EONってそもそも異世界にあるものなんだろうか。


「こういうのってよくある設定だと、異世界のゲートが開いてそこから物が流れてくるって言いますよね?」


 異世界から物が流れてくる。


 ああ、俺達が今その漂流物みたいな存在なんだろう。


「やっぱり異世界って色々見えて面白いですよね」


 桃乃はただの散歩を楽しんでいた。さっきとは違う表情に、よほど俺を心配していたのだろう。


 今回も俺が助けてもらってるな。


「ああ、そういえば異世界ダンジョンがあったところに行ってみるか?」


 あれから森の中に入っていないため、異世界ダンジョンがどうなっているのか知らなかった。


 そもそも、あそこはドリアード達の住処なのだ。ひょっとしたらドリアードが住んでいるのかもしれない。


【あっ、やっと植物の天使様に繋がりました!】


 同じタイミングで直接脳内に語りかける人物がいた。声の主はドリアードだ。


「何かありましたか?」


【私達の住処を取り返してくださりありがとうございます。その報酬を渡したいので直接来てもらってもよろしいですか?】


 どうやらドリアードが報酬を直接くれるらしい。そもそもドリアードから特別クエストを受けていたことも忘れていた。


「なんかドリアードから報酬がもらえるらしいよ?」


 俺は桃乃に伝えるとなぜかしょんぼりとしていた。


 そんなに散歩するのが楽しかったのだろうか。


 コボルトより犬っぽい姿にどこか笑ってしまう。


「ももちゃん!」


 俺は桃乃を呼ぶと○EONの看板を持ったままこっちに来た。


 いや、○EONの看板は置いてきて欲しいのだが……。


「元気になったよ! ありがとう」


 ひとこと伝えると桃乃も嬉しそうに笑っていた。うん、桃乃は今日から犬認定だ。


 大型犬男子は聞いたことあったが、小型犬女子も存在していた。


 俺達はドリアード達が住むあの池に向かうことにした。

 




「この辺も荒れてるな……」


「街は壊滅的ですね」


 途中にはスライムを倒した街やコボルトと初めて会ったペットショップなどがあった。


 改めて散歩してわかったことは、エリアが全て繋がっており同じ空間になっていたことだ。


「これもあいつが暴れたからだな」


 どこに行っても周りは荒れ果てていた。


 俺達を探し回ってたということを清香さんの記憶とともに神癒慈悲大天使(ラミエル)の力を通して俺自身に脳内に伝わっている。


 そんな街や田舎道を横切り、森まで来ると周りの変化にさらに驚いた。


 木は伐採され、草も刈られ土が剥き出しになっていた。森と言えるのかどうかもわからないような姿をしている。


「ここも派手にやられてますね」


「ああ、どこも破壊し尽くされてるな」


 それだけ彼女は移動して、全てを薙ぎ倒したのだろう。


 本当に命だけは助かって良かったと思う。ひょっとしたら俺も今頃この辺の木と同じ運命を迎えていたのかもしれない。


「これって先輩の魔法でどうにか戻せないんですか?」


「ああ……ひょっとしたらいけるかもしれないな」


 桃乃に言われるまで気づかなかった。木属性魔法である植物成長(グロウアップ)を使えばある程度の状態に戻すことは可能かもしれない。


 俺は地面や回りの木々に対して木属性魔法を発動させた。


植物成長(グロウアップ)


 種に使う時よりも体から何か吸い取られるような感覚がした。


 目の前に大きく浮かぶ光り輝いた球は空に浮かぶと花火のように綺麗に弾け、細かな光の粒子が降り注ぐ。


「やっぱり綺麗な魔法ですよね」


 その様子を桃乃は眺めていた。


 光は草木に触れると少しずつ動き出し、元通りにはならないものの土が見えなくなるぐらい草が生えてきた。折れた木からは新しい木が出てきている。


「先輩の魔法って攻撃性はないけど、すごく便利で環境に良いですよね。農家に先輩が一人いれば不作にならなさそう」

 

「それはあるかもな」


 俺は何か便利な機械になった気分だ。


 それから異世界ダンジョンがあった湖まで植物成長(グロウアップ)を発動しながら歩くことにした。


 ハゲていた土も今じゃ薄っすら草が生えている。


 決して頭の話ではない。ちなみに糞野郎こと部長は、最近薄らとしてきている。


「先輩、湖は大丈夫そうですよ」


 奥まで歩いていくとやっとドリアードがいると言われている湖に到着した。


 湖は特に変化はなく、ここだけが綺麗にそのまま残っていた。


「やっと来ましたね。神々から選ばれた天使よ」


 ドリアードはまた俺を天使呼ばわりしていた。


 桃乃は初めて見るドリアードの姿に警戒をしている。


 急に人型の魔物が出現したら警戒するのは当たり前か。


「ももちゃん、あれがドリアードだ」


「あいつが先輩をたぶらかしてるやつですね」


 うん、間違いではないが、まだたぶらかされてはいない。きっと彼女の魔法で魅力的に見えるのは仕方ない。


「私達の住処を取り戻して頂きありがとうございます」


「いえいえ、これが依頼ですので……森は守れなくてすみません」


 ドリアード達は以前の森とは少し様子が変わっているが、自身が住んでいたところを取り返すことができて嬉しそうにしていた。


 トレントが楽しそうに横揺れをしている。未だに木が勝手に動くことが不思議で慣れていない。


「それでも私達の住処を取り戻してくれたことに感謝しています。私達にはここの湖が必要なんです」


 どうやら辺りの木々の状況に関係なく、湖が必要らしい。ひょっとしたらあそこから水を吸収しているのかもしれない。


「俺も出来るだけ元の姿に戻しておきますね」


 俺は道中の時より魔力を多く込めて、木属性魔法を発動させた。


植物成長(グロウアップ)


 さっきより大きくなった光の塊は空高く飛び上がると、空に魔法陣が浮かび上がった。


「これが例の魔法ですか!」


 例の魔法とは木属性魔法のことだろうか。ドリアードも実際見たのは初めてなのか、集中して空を見上げていた。


「さっきより凄そうですね」


 それにしても今まで発動していた植物成長と異なり、空に魔法陣が浮かび上がるとは俺も思わなかった。


 湖を中心に一帯を光の粒子が降り注ぐ。それは異世界に早めの冬を知らせるような真冬の雪のようだった。


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