73.異世界の異変
俺達は異世界へ繋がる穴の中に入ると、普段より厚着をしているからか、少し動きにくい気がした。
【投資信託"全世界株式インデックス・ファンド"を所持しているため、ステータスが一部上昇します】
積み立てをしているものが、ちょうど反映されて少しだけステータスが上昇した。
初めて異世界に来た時は100万円しかなかったが、今は利益も含めたら500万円程度購入している。
【ETF内訳セクター通信サービス50%保持。カテゴリーパッシブスキル自動鑑定と自動翻訳が最大レベルに達しました】
この前安くなったから買ったETFがついに50%に達成した。
どれぐらい買って50%になるかわからないが、神光智慧大天使の時よりは多めに所持している。
【スキルが統合され進化します】
50%になるとスキルは統合されるのはこれで確定した。新たなスキルに胸の鼓動が早くなる。
【パッシブスキル自動鑑定と自動翻訳を統合し、新たなスキル神癒慈悲大天使を手に入れました】
どうやらまた天使に関係するスキルに変化した。"植物の天使様"とドリアードに呼ばれていたのも、このスキル達が関係しているのだろうか。
【個別株公共事業を40%保持。カテゴリー木属性魔法アクティブスキル植物詳細獲得しました】
新しい木属性魔法を覚えた。少し自動鑑定と名前からして被るが、それでも魔法を覚えたのは嬉しい。
だって、唯一使える俺専用の魔法だ。神光智慧大天使にも情報が載っていない。
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《ステータス》
[名前]服部慧
[能力値] 投資信託4,900,000口
HP 119 (+1)
MP 5
STR 113 (+1)
INT 4
DEF 115 (+1)
RES 10
DEX 11
AGI 14
LUK 0
[固有スキル] 新人投資家
[パッシブスキル] 神光智慧大天使 、神癒慈悲大天使 、HP自動回復、疲労軽減
[魔法スキル] 木属性魔法
[称号] 犬に好かれる者
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そんなことを思っていると今回の討伐対象が発表された。
【今回の討伐対象は2:<5%7=5――】
急に声にノイズが入り聞こえなくなった。どうやら桃乃も同じようで、俺の顔を見て何か話している。
【しょく#&/##&/_天使&b、どおっ……か彼女を\→%♪☆ください】
ノイズが収まり聞こえてきた声は違う女性の声だった。それでもノイズが多すぎて聞こえにくい。
「えっ、どうしたんだ?」
ノイズがうるさくて桃乃の声が聞こえない。
次第にノイズが無くなると、やっと桃乃の声も聞こえてくる。
「あれって誰の声ですか? たぶん女性なのはわかりましたが……」
「あの声が俺にキラーアントの巣の場所を教えてくれたドリアードだと思う」
この世界で俺に話しかけてくる女性はわかる範囲だとドリアードだけだ。異世界に来た時やダンジョンの音声もデジタル音で性別がわからない。
「あの話って作り話じゃないんですね」
そんな俺を桃乃は可哀想な人のように見つめていた。
「異世界に来てまで作り話してたらおかしな人じゃん」
「……」
「おいおい、なんか言ってくれよ!」
桃乃の静かな沈黙は俺の心をガリガリと削っていく。意図的に黙っていた桃乃は、にやっと笑っている。
「先輩はあの時寝ていただけだから冗談かと思いましたよ?」
あの時は桃乃の話だと急に寝落ちしたと聞いている。実際にその時目撃していれば作り話か夢の話かと思うのだろう。
そんな話をしていると視界が明るくなり異世界へと繋がった。
「どういうことだ」
「先輩これって……」
目を開けるとその光景に驚いた。辺りの木は薙ぎ倒され、トレントやゴブリン、そしてコボルトまでが倒れている。
俺はコボルトに抱きかかえるとぐったりとしている。
「ダメか……」
体は冷たくなっており、だらんと垂れた舌からは涎が垂れている。息をしている呼吸音さえも聞こえない。
「時間が止まってないのか?」
今までは時間軸が止まり、異世界に来たときは前の続きのように感じていた。それが今回は全く違う状況に戸惑うばかり。
他の魔物に触れるとまだ死んで間もないのか、少し温かい魔物もいた。どうやら時間軸自体はあまり進んでいないようだ。
その時、すぐに気づくべきだった。死んで間もない魔物ということは、殺したやつがすぐ近くにいることを……。
「キィエエエエエー!」
遠くから何者かの発狂するような声に俺達は耳を塞いだ。
声は耳の鼓膜を直接揺らすように、強い衝撃で頭を突き抜ける。
「胸騒ぎがします。早く遠くに逃げましょう」
どうやら桃乃は何か感じているようだ。何も感じない俺でもどこか身の危険を感じている。
「キィエエエエエー!」
さっきよりはより明確に聞こえてる声と足音が近づいてくる。
次の瞬間、地面から何かが飛び出してきた。
飛び出した魔物の姿はキラーアントより大きく、体の光沢が増していた。体には棘のようなものが生えている。
目の前に現れた瞬間、その場で足がすくんでしまう。威圧されているのか冷や汗が止まらない。
それでも俺は目の前の恐怖から目を逸らさない。魔物の隣には名前が記載されていた。
――クイーンデスキラーアント
俺達が探していた魔物と似た名前の存在が目の前に現れた。
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