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庭にできた異世界で丸儲け。社畜をやめたい俺が、気づいたらスキルで現実でも成り上がっていた  作者: k-ing☆書籍発売中
第一区画

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72.出陣じゃー! ※一部第三者視点

 あれから数日が経ち、今日庭の異世界に行くために俺の家で準備をしていた。


「先輩本当に乗るんですか?」


「ああ、ガバッといってくれ」


「わ……わかりました」


「うっ……」









 って言っても長い戦いになるのを予想して俺はストレッチをして体を解している。


 硬すぎて自分ではどうしようもない体を桃乃の重みで筋肉を伸ばしていた。


 痛いところまでやれない人は一流の選手になれないと体操の選手が昔言っていたのを思い出す。


 こういう無理やりな強要はパワハラになるのだろうか。


 頼んだ桃乃は戸惑っていたが、嫌では無さそうだから気にしなくても問題ないはずだ。


 むしろ乗り出すとどこか上機嫌で、桃乃の性格が心配だ。


「ちょ、ももちゃんいきなり体重かけ過ぎ!」


「へへへ、先輩また何か考えてましたね?」


 俺の心の声が読まれたのか急に体重をかけてきた。


 それにしても異世界に行ってから桃乃の性格がだいぶ変わった気がする。何か変なスキルを手に入れていないか心配だ。


 スキルの内容は魔法ぐらいしか聞いていないが、他に有用なパッシブスキルを持っているのだろうか。


「痛たたた……」


 全身硬い俺には死にそうなぐらい痛い。


 これも唯一聞いている精神耐性のスキルによる効果か、最近色んな場面で容赦がなくなっている気がする。


「これで伸びましたね」


 俺はため息をついて床に伸びていると、インターホンが鳴った。


「先輩出てきた方がいいですか?」


「ああ、頼む」


 桃乃はインターホンに接続して話し始めた。


お姉さん(・・・・)おはようございます」


 桃乃がお姉さん(・・・・)と呼ぶのはあの人しかいない。


 そう、隣に住むおばさんだ。


 毎回異世界に行くときに訪ねてくるが、いつもおかずを持ってきてくれるから何にも言えない。


 休みの日に仕事に行くことが減り、持って来てくれる回数が増えただけのことだ。


「今取りに行きますね」


 桃乃はインターホンを切ると玄関に向かった。


「ああ、俺もついていくよ」


 せっかくお隣さんが来てくれたのなら、家主が出ないわけにはいかない。


 俺が玄関を開けるとおばさんはなぜか驚いていた。


「あれ、桃乃さんじゃなくて慧くんが出たのね」


「一応ここの家主なんでね。おはようございます」


「慧くんおはよう」


 玄関を開けて俺が出ると、なぜか少し悲しそうな顔になるおばさんをみて、俺の方が悲しくなってくる。


「おはようございます!」


「あっ、かおちゃんおはよう! 今日はかおちゃんが好きな豆腐の揚げ出しと里芋の煮っ転がしを持ってきたわよ」


 おいおい、俺と桃乃の時とは明らかに態度が違う。それにかおちゃんとは誰のことだ。


 いつのまにか桃乃の好きな食べ物まで把握しているおばさんに驚きだ。


「本当ですか!? お姉さんのご飯美味しいので嬉しいです」


 ああ、桃乃もいつのまにか世渡り上手になっているよ。


 俺には一切褒めてくれないのにな。


「そういえば、今日もどこかに出掛けてくるの?」


「そのつもりですが、なにかありました?」


「今日寒くなるらしいから厚めの服を着て行った方がいいわよ! じゃあ、かおちゃんまたね! あっ、慧くん()またね!」


「あっ、はーい」

「いつもありがとうございます」


 最後が若干気になるが、このまま気にしていたら負けのような気がした。


「じゃあ、これを冷蔵庫に入れたら行きますか」


「かおちゃんって……」


「あっ、私香織(かおり)って名前なんです」


「桃の香りってことか……」


「昔よくそれでいじめられましたよ」


 桃乃はどこか冷たい表情をしていた。


 おかずを冷蔵庫に入れると、桃乃はなぜか考えごとをしていた。


「さっき今日は厚めの服装が良いって言ってましたよね?」


「そうだよな。まだ、冬でもないのになんでだろう」


 今は夏が終わり秋に差し掛かろうとしている。


 急に寒くなると言っても分厚い服を着るまでもないが、おばさんが言うのなら本当に寒くなるのだろうか。


 俺も桃乃も天気予報も見てないため、今日の気温がわからない。


「向こうの気温ってここと同じぐらいなんですか?」


 確かにそこは気にしていなかった。いつも普段通りの服装で行っているが、気温は大体同じぐらいだったような気がする。


「多分同じじゃないか?」


「なら、少し分厚めの服を着ていって、暑ければ脱いでもいいですしね」


 前回はダンジョンの穴に入るつもりが、現実世界に戻る穴に入っていた。服が目印になれば間違えることも減るだろう。


 また、別の穴に入っても戻ることがあるため要注意だ。


「あっ、服って持ってきてないよね?」


 俺は部屋に上着を取りに行き、桃乃に渡すとなぜか複雑そうな顔をしていた。


 なんだその顔は……。


 一応クリーニングに出した後に、片付けたやつだから臭くはないはずだ。


「ひょっとして臭いか?」


 桃乃は匂いを嗅ぐと止まっていた。嫌なら嗅がなければいいだけの話だが……。


「よっし!」


 おいおい、そんなに気合いを入れるぐらいなら、無理して着なくてもいい。


 それでも本人は寒いから仕方ないと、俺の服を着ていた。


 異世界に行く前に心を折られた気がしたまま、俺達は出発した。





 彼女は自分の子供を殺したあいつらを待っていた。


 途中コボルト達が邪魔をしてきたが、自分より下位の魔物をものともせずに薙ぎ倒す。


 その荒れ狂う姿に緑色の髪をした女性が必死に落ち着かせようと魔法を掛けていたが、それでも彼女の力じゃ足りないのだろう。


 今日も彼女はずっと泣きながら暴れて何かを探し回っていた。


 自分の子供を殺した誰かなのか、それとも自分を止めてくれる誰かなのか、それは彼女しかわからない。


 今日も彼女は森の中を大きな体で彷徨っている。

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