45.新スキル
俺達は今異世界のゲートである穴の中にいる。今日もいつも通りのアナウンスだが、なぜか心が落ち着いている。隣に桃乃がいるからだろうか。
そんな桃乃はあたふたとしている。
【投資信託"全世界株式インデックス・ファンド"を所持しているため、一部ステータスが上昇します】
【ETF内訳セクター情報技術50%保持。カテゴリーパッシブスキル思考加速と並列思考が最大レベルに達しました】
どうやら情報技術セクターが50%になり、パッシブスキルが最大スキルとなったらしい。そもそもこのパーセンテージは何を基準にしているのだろうか。
【スキルが統合され進化します】
「えっ? なんだ?」
俺は聞いたことない単語に驚いていたが、隣で桃乃も驚いている。何かスキルをもらったのだろう。
【パッシブスキル思考加速と並列思考を統合し、新たなスキル神光智慧大天使を習得しました】
名前からして凄そうなスキルを手に入れた。きっと今まで聞いていたパーセンテージは、スキルを手に入れるまでの表記のことを言っているのだろうか。50%も保持していたら今頃大金持ちだ。
きっと100%になった頃には強いスキルを手に入れるのだろう。
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《ステータス》
[名前]服部慧
[能力値] 投資信託1,850,000口
HP 58 (+15)
MP 5
STR 52 (+15)
INT 4
DEF 54 (+15)
RES 10
DEX 11
AGI 14
LUK 0
[固有スキル] 新人投資家
[パッシブスキル] 神光智慧大天使 、HP自動回復、疲労軽減、自動鑑定、自動翻訳
[称号] 犬に好かれる者
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【今回の討伐対象はスライムです。制限時間は10時間です。それでは本日も頑張って家畜のように働きましょう】
今回はRPGゲーム序盤で出てくる最弱の敵スライムらしい。これなら楽勝だなって思っている合間にアナウンスが終わり、同時に強い光に目を閉じる。
「ガウ!」
まだ明るさに目が慣れていないが、声からしてコボルトが待機しているのだろう。
「お前達、元気……多っ!?」
目を開けるとそこにはコボルト達が尻尾を振って10匹以上待っている。俺達が来ることに気づき待っていたのだろうか。
お利口過ぎるコボルトの頭をひとまず撫でまくる。
コボルトも嬉しいのか、どんどん俺の上に乗ってきて気づいた頃には揉みくちゃにされていた。
「お前達いつから待ってたんだ?」
時間軸が違うことを考慮すると長いこと待っていたのだろう。異世界に来ていなかった時間があまりにも長かった。
寂しくてこんなに戯れあっているのかと思っていたが、どこかコボルトの反応は違った。
コボルト達は俺の言葉を理解しているのか頭を横に傾けている。
その姿もどこか愛くるしい。
「ひょっとして異世界って先輩がいないと時間停止しているんじゃないですか?」
桃乃に言われたことを考えると、確かにそれも一理ある。ただ、今は荒れ果てた街中にいる。
前回のままクエストが始まるのなら、田舎で自然豊かなところに立っていなければおかしいはずだ。
「とりあえず手に入れたスキルだけ確認しようか」
桃乃も含め現状のスキルを把握しておかないとスライムの討伐も難易度が高くなるだろう。最弱の敵だけど油断は禁物だ。
弱いと言われているゴブリンでもあれだけ強かったのだ。それに今回は桃乃もいるため、さらに気を引き締める必要がある。
「あっ、私はETF"公共事業"セクターでMP回復速度増加と精神耐性を得ました。あとは個別株で火属性魔法を手に入れましたよ。ステータスも同じ投資信託のインデックスファンドを購入しましたが、全体的に魔法能力が上がっていました」
初めて聞く単語に俺は興奮した。やっと異世界らしい存在を知ったのだ。
"魔法"
俺がずっと探し求めていたもの。
そして、ステータスの上がり方は法則性でもあるのだろう。ひょっとしたら俺は一生魔法が使えないのかもしれない。
「本当に異世界なんだな」
「私もまさか魔法が手に入るとは思いませんでした」
「でも魔法の使い方は知っているのか?」
俺の問いに桃乃は固まってしまった。どうやら反応からして知らないのだろう。俺も使ったことはないため、流石に教えることもできない。
「お前達……は知るはずもないよな」
一応コボルト達にも聞いてみるが、やはり知らないようだ。
「俺も魔法は……あれ? なぜかわかるぞ?」
知らないはずの魔法についての情報がたくさん記憶内に存在していた。簡単に言えば、脳内に図書館ができたようなイメージだ。
前との変化といえば、新たに手に入れたスキル神光智慧大天使と何かしらの関係があるのだろう。
「なら魔法の練習をしてからスライム討伐に行ってもいいですか?」
俺もそのつもりだったが桃乃はリスクをなるべく減らしたいのであろう。俺も桃乃の意見に賛成だ。
以前のように何かしら桃乃が狙われる可能性を考えると防衛手段は大事だ。
「とりあえず魔法の使い方から始めようか」
さっきまで何故か魔法の存在も知らず、使ったこともない俺が魔法について教えることになった。
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