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162.俺達のできること

 子供の世話で疲れた桃乃と笹寺を呼び出し今後の方針を決めることにした。まずは二人の意見を聞いてからドーリと相談するつもりだ。


「オークジェネラルの居場所がわかった」


「おっ、それはほんとうか?」


 俺が頷くと笹寺は立ち上がりすぐに行こうとしていた。そんな笹寺を俺は引き止める。やはりこいつは脳筋だったのか。


「おい、今から行くんじゃないのか?」


「さすがに今からは無謀ですよ。それに何かあったんですよね?」


 桃乃は俺が帰ってきた時と今呼び出しているところから何かがあると感じ取っているのだろう。できる後輩は脳筋の同期とは全然違う。


 それに笹寺がどれだけ戦えるのかもまだわからない。


「もしかしての話だけど、オーク達が俺達と同じように生活している国があるとしたらどうする?」


 俺の中で懸念していることはこれだけだった。ハイオーク達にしては倒しても問題ないと思っている。ただ、そのオーク達にもちゃんとした生活があって家族もいる。


 ここで親のオークを殺してしまったら、子ども達は生きていけないかもしれない。


 それがきっかけでドワーフに復讐するかもしれない。


 考えれば考えるほど、良い考えが出てこない。


「そういうことですか。難しい質問ですね」


 俺が言いたいことを桃乃と笹寺は感じ取っているようだ。


「んー、俺なら俺の任務を全うするぞ。ただ、相手の国に侵略するっていう形だと戦争を仕掛けるのとやってることは同じだもんな」


「私なら戦わなくてもいい民間人はそのまま逃がしてあげますね。ただ、襲われた人達はずっと忘れられないから、そのことを胸に刻んで生きていかないといけないですよね」


「戦いが終わっても残された人達はずっと心の中で戦わないといけないってことか」


 俺が想定として話したことを二人はしっかりと考えてくれている。


 実際今の状況は人間であるドワーフ達は仲間を捕虜のような形で捕まり酷い目に遭っている。


 それを助けるのは同じ人間として当たり前の行為だと俺は思っている。ただ、敵側にも家族や守りたい人がいるのは確かだ。


 そして今後の未来に繋げるために行なっていることも理解はできなくもない。


 ただ、あの現場を見れば自身の欲求のために動いていたようにしか見えない。


「それで先輩ならどうするつもりですか?」


「俺か……」


 俺は考えているとルイビの顔が思い浮かんできた。俺のことを初めての人間の友達と言っていた謎のオーク。


 あの時の言葉と表情には偽りはなかったと信じたい。


「俺なら両方助ける」


 友達だからといって選択しなきゃいけない時もあるだろう。彼が止めることが出来なければ俺の力で止めるしかない。


 無謀だがそれができるように考えるのが俺だ。


「ははは、さすが慧だな」


「先輩はこうじゃないとね」


 俺の答えを聞く前に二人はわかっていたのだろう。悩んでいた俺の心もどこかいつか軽くなっていた。


 悩みがあったら一人で抱えない方が良いってこういうことなんだろう。


 俺達はオークの国の現状を伝えるために、ドーリの元へ向かった。


 ドーリはまだ何かを作っているのか鍛冶場で鉄を叩いていた。


 そういえば、笹寺はどこまで鍛治ができるようになったのだろうか。


「誠ってどこまで鍛治ができるんだ?」


 誠に話しかけるとにやりと笑っていた。いつのまにか笹寺とベンが似たような笑い方をしていた。、


「おー、やっと聞いてくれた。俺の力作を見てくれ!」


 笹寺が取り出したのはどこかで見たことがある道具だった。ただ、見たことはあっても名前がわからないし異様に大きい。


「これって左官の人が壁にセメントとかつける時に使うやつですよね? 大きさは異常ですけど……」


「おー、さすがももちゃん! これは(こて)って言って、使い方はももちゃんが言った通りだ」


 きっとこの形に何か特徴があるのだろう。


「ちょっと借りてもいいか?」


 俺は笹寺から鏝を借りると、あまりの重さに肩が外れそうになった。すぐに手を離すと、音を立てながらそのまま床に落ちた。


「よくこんなのが持てるよな」


「これが一番しっくりくるんだ」


 どうやら笹寺は盾を作ろうとしたらしいが、形は出来ても耐久性が弱く重さも足りなかったらしい。


 そこで俺が使っているスコップや鋸を思い出し、自分が知っている道具なら使いやすいのかもと思ったら鏝ができていたようだ。


 確かになんとなく鏝は作れそうだが、盾は構造自体がわからない。ただ単に持ち手と平面の板があればいいと思っていたがそうでもないのだろう。


 そんな大きな鏝を笹寺は軽々と持ち上げていた。


 やはりステータスだけでいったら笹寺が一番高いのかもしれない。


 そんなことをしていると、鍛治を終えたドーリが出てきた。


「フライパン?」


 その手にはなぜかフライパンを持っていた。


「ああ、道具が足りないから作ってたんだよ」


 調理器具などは襲われた際に壊れていたり、オーク達が回収していた。フライパンを見ると、オークの国で見た子供達をつい思い出してしまう。


「それでみんな揃ってどうしたんだ?」


「少しドーリさんからも意見をもらおうかと思ってね」


「そうか。ちょっと着替えてくるからこれを頼む」


 ドーリは俺にフライパンを渡すと、着替えをするために違う部屋に行ってしまった。


「なんでフライパンなんだ?」


 言葉が通じない桃乃と笹寺も、ドーリがフライパンを持って出てきたのか気になったらしい。


「ああ、調理器具がないから作ってたらしい。これも今回関係があるんだけどな」


 いつかドーリにオークが持てるフライパンを依頼してみようか。きっと彼らは喜んで使ってくれるだろう。


 そんな気持ちでフライパンを眺めていたら自動鑑定が発動されていた。


「えっ……なんだこれは」


 フライパンの鑑定結果には、今回のオークの国を助ける可能性がある一文が書かれていた。

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