ナツキの愛2
忙しくなるので更新できないかも?
「いいよ。確かめてみよう」
ボクは異常を知りたい、体験したいと考えナツキを受け入れた。鉄の手錠はすでに、人肌へと変わってしまっていた。
ナツキの部屋は二階にあるらしく、二人で二階へ向かう。その音はまるで二重演奏のようだった。ボクの心臓はドンドンと鳴り、二人の足を先導しているようだ。
「着いた。俺の部屋」
久しぶりに上がったナツキの部屋は異様なもので溢れていた。ボクの写真が日付入りで貼られており、捨てたはずのボクのゴミがあった。ナツキはニヤニヤと笑っている。そして、唐突に語りだした。
「いつもは無表情の君が不安げになるのが好きなの。だって、さァ、コントラスト?がいいよね」
彼はボクに写真を見せてきた。
「ただの……ボクの写真じゃないか」
「左の写真は俺が男に変わった写真。右は山田君がノーモフィリアってバラされた写真」
あっけにとられてしまった。なぜそう淡々と事実を言えるのか。それともただ、心臓の音が大きすぎて気が散っていたかもしれない。
「そんなにマジマジと見るゥ? まあいいよ、これから一緒に暮らすから! いつでも見れるように貼っておくね」
ボクは久しぶりにワクワクした。異常を体験できるなんて夢にも思ってないし、なにより愛されると言われたからだ。
今まで一人で愛を考えていたものが、二人に変わる。単純に嬉しいものだった。
ただあまり良い収穫ではなかった。そう退屈すぎた。
ナツキとの日々は縛られるもので、ただただボクをジーっと眺めて終わり。そんな生活だけだった。
どうやら愛と呼ぶものは、一方が一方を愛するものでない、等しく同じく愛する行為だったらしい。
しかも、なぜか粗暴な口調とは売って変わり、女性のような口調へ変わり、面白くなかった。
そこで考えた。抵抗をしてみようと。もっと実験的にしようと。
数分考え、浮かんできたものは脱出もどきだ。
ボクが抵抗を見せれば、扱いが変わると考えたからだ。手錠を外されるときは、たまにあった。愛ゆえに外してくれると言われた。
そこを利用しよう。
「山田君は、こういう生活どう? わた……じゃなくて俺的には、好きな人が近くにいるってだけで、生きる活力になるんだけど…‥えェ? 」
早速外してくれたので、逃げてみた。1階へと移動すると、異臭が立ち込んでいた。しかし、特に気にする理由もないので玄関のドアに手をかけた。
ガチャガチャ! ……空いてなかった。いや逃げたい訳でもないから、むしろ都合がよかった。
ぬるりと後ろに悪寒が走る。おそらくナツキだ。
「はァ。あんまり心配かけんなよ」
優しそうなセリフと裏腹に、腹部に激痛。いわゆる腹パンというやつ。
「ほォら。部屋にもどろうね。デザートがあるからさァ」
ナツキの愛は『暴力』らしい。腕を捕まれ移動させられたけど、すごく痛い。
部屋に戻ると、美味しそうなイチゴがあった。
「はい、これ。山田君の好きなイチゴ。バツとして手を使わないで、犬食いでやってみて」
そう言いながら甘ったるそうな練乳をイチゴに乗せていく。赤色は白へと塗り替えられた。
イチゴが全て白に変えられたあたり、ボクは命令のようにムシャムシャとイチゴに貪り着いた。だれからも愛される犬の、ような姿で。
そもそもイチゴも練乳も好きじゃない。それに、手も使えないから口も拭けず、ベタベタで気持ち悪かった。
ただ、ナツキは頬を赤く染めていた。イチゴのように。