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異常な一般性。愛の証明。  作者: アルガ
3/4

ナツキの愛1

証明がそのキャラクターの素性で、愛がそのキャラの愛。みたいなタイトルです。

 全校集会のあった翌週、月曜日にそれは貼られてあった。図書館で調べ物をして帰る最中、視線が痛かった理由はこれだったらしい。


 

 ホームルームが始まる直前に教室へ来たため、すぐにチャイムが鳴り響いた。鼓膜の真横でチャイムが鳴っている感じがした。

ナツキはケラケラ笑っているグループにいた。スルトの姿は見えなかった。そこへ先生がやってきて、気怠げに貼り紙を見つめた。



「はぁ……面倒くさ」



 中年の男はそう呟き、貼り紙については言及せずゴミ箱へ捨てた。くすくすと笑い声が聞こえた。いつも豪快に笑うナツキも今だけはその笑い方だった。


 

 今はスルトに見られなかったことを安堵するしか出来なかった。



「痛っ」


 貼り紙の件から数日が経った。ボクに残っていたのはイジメだけだった。今のは野球部に軟式ボールをぶつけられた。遠目でも分かる異常性癖で、エキシビショニズム(露出性愛)。裸のまま部活動に勤しみつつ、嫌がらせを繰り出した。



「あの大丈夫ですか?」


 心配の声もするが、すぐに豹変することはわかっている。だって今のボクはうつむいてて『顔がわからない』から。無意味だと思うけど一応顔を声の方へ向ける。



「……」


「あー、あの人か」



 特に心配をすることなく、去って行ってしまった。包帯だったり傷だらけの彼女はマゾヒズム(被虐性愛)と予想できる。



 イジメられながら学校で調べ物をしていたけど、欲しい情報は手に入らなかった。何も知らない学生の教育機関であるから、『異常性癖』についての本は良質だと考え今まで登校してきた。無意味だったけど。




 明日にでも死のうかと考えてる今日、ナツキが話しかけてきた。



「久しぶり! 最近忙しくて話しかけらんなくてごめんな! 今日ウチに来いよ!」



 その話し方はイジメをする側とは、とうてい思えなかった。そして友達だったときの笑顔のままだった。まるで友達のようで嬉しかった。


 イジメをされた夢は塗りつぶして、ボクは答えた。


「うん。いいよ」



 愛を証明するという目標なんて忘れて、友達と遊びたかった。


 自分如きが証明なんて出来ない。そもそも最初から、この世界に反感なんて持たずに『個性』を見つければよかったんだ。


 後悔を覚えつつ、友達との久しぶりの帰り道は嬉しかった



・・・・・・・・・



 けど、すこし自分の考えが甘かったらしい。ナツキの家に入った途端、押し倒された。



「俺は寂しかったなァ。山田とぜんっぜん会話できなくてさァ! でもさ、新しい発見があった。山田を苦しめることが俺の『異常性』だったんだ!」



 ナツキは嬉しそうな、虚ろな目でボクを見下した。明るめな金髪はすこし落ちかかっていて、いつもと違かった。

押しつけられた木の板は、暖かさなんてなく、寂しさで凍えてしまうものだ。



「実はさ、あの教室の貼り紙。俺がやった。あの表情はすごかった! この写真見ろよ!」



 見せられたのは、教室ですこし不安げなボクの顔だった。



「全く表情のないお前が! ピリッとしている顔! ノーモフィリアは徹底的に潰すつもりだったけどよォ、俺の所有物にするしかねェよな!」



 友達の頃の表情のまま、笑い声のままだったナツキを見て、初めて自分の『異常性』に気がついた。世間一般のことを異常と扱うことが異常なのだと。



 ガチャリ



 やけに本格的な手錠がボクを捕らえてしまった。木の板よりも冷たく感じた。



「じゃァ山田。俺の愛を……いや俺らの愛を確かめようかァ」



 遅い時間帯ではなかった。けれど、ナツキの目は妖しく光っていた。

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